「芹里奈、お前なんだな」
言葉に出して叫んだのか、心の中だけの叫びなのか私には分からなかった。
私は手に持った写真を取り落として目の前の靴を凝視し、そしてそこから虚空に目を移した。
靴を履いた見えない芹里奈が私を見つめていた。
<シャ!ラーン・・・>
私の全身の恐怖が、芹里奈への思いに切り替わる音を心の中で聞いたような気がした。
「ありがとう来てくれて」
心の底のそこから搾り出すような声がうめき声のように喉をついて出た。
歌舞伎役者のように引きつらせた口元に、涙とよだれが合流してあごをつたった。
まさにそのときだった。自分にも信じられない言葉が私の口をついて出てきたのだ。
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