地下道の奥からぬめっとした霊気が漂ってくるように思われた。
私は迷わずその恐怖の中に入っていった。それはこれまでにない勇気だったと今も思う。
私は肝をつぶす思いでその中心に進んだ。
一足の靴が薄汚れ、滴る地下水に濡れながら私を出迎えた。
私の背後に得体の知れないものが立っている・・・ぞっとする思いに囚われたが振り返ることも出来ない。
私はあらためて芹里奈の写真とその靴を見比べた。
つま先にある花柄、それに葉っぱの形をした特殊なバックル、写真のものと一分の相違もない。これは芹里奈の靴に違いなかった。
花柄は薔薇を模したもので、カルメンを想起させるのだと芹里奈はあの時、魅せられた理由を話したことがある。
その靴を履いて芹里奈、お前はここにやってきてくれたのか。
私は靴の前に跪いた。
カモメになった写真の芹里奈が恐ろしいほど沈黙して動かない。
私はその写真を両手で持って靴の前に差し出した。
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