(画像は日経産業新聞より)
あるひ、なんとなく見ていたテレビに釘付けになりました。素晴らしい話を紹介しましょう。
NHK プロフェッショナル仕事の流儀の番組で、緩まないネジ(画像)を発明した、道脇裕さんの話しです。
道脇さんは、履歴には学歴なしと書くそうです。
小学校に入っても、教科書を1週間でやりあげてしまい、学校の授業に意味を感じませんでした。
5年生のころ、「僕は今の教育システムに疑問を感じるので、自分の足で歩むことに決めました」と宣言して、学校を中退してしまったそうです。
その後自力で、自分の中にある疑問を考え続けます。
その中でも、いちばん考えたことが「この世とは何なのか?」という疑問です。自然界とは何か? 宇宙とは何か? 生命とは? 人間とは何か? 社会とは? そして、自分とは一体何なのか。何の説明もなくいきなりこの世に産み出されて、いったい自分は「何のために存在しているのか?」と。
道脇さんは様々な仕事を転々として考え続けました。自分は何のために生きているのか。
定まらない自分に苦悩し、このダメ人間をよくするには何が必要かと考え、リストアップしたら、なんと学習要領と同じだと思ったそうです。
学校のシステムは、人を創るための叡智によってできたものだと、自力で理解したわけです。
さて、それは傍論で、本題は、緩まないネジの発明ですが、
それは不可能と言われていました。
しかし道脇さんは、「不可能と証明されていないのに、不可能というのはおかしい」と言って研究をはじめ、上の図のようなネジを発明しました。
ボルトに左右のネジ山を切るという発想で、右ネジと左ネジの2個のナットを締めるだけで、けっして緩まないネジになるという訳です。
しかしねじ切りが難しい。丁寧に切ろうとゆっくり機械を回す。しかしどうしてもバリが出てきれいにできない。
頭を抱える旋盤業者に道脇さんは言います。
「旋盤を最高速にしてやってください。」
考えたこともないことでした。左右のネジ山を切る作業です。高速なんてとんでもないという訳です。
しかし言われた通りやってみると、うまくいった。業者もびっくりです。
「不可能と思われていることは、その枠の中はやりつくしたということ。だから答えは枠の外にある。」
道脇さんは言います。
新しいものをつくり出そうと、考えるということは、枠の外に答えを求めるということなのでしょう。
道脇さんは、やっと、自分は何のために生まれてきたのか、理解したのでしょう。
なぜ苦しむのか、
「自分のために苦しむのだったら、意味がない。死んだ方がましだ。」
そう思う道脇さんの得た答えは、
「この苦しみは人のためにあるのだ」ということでした。
発明のために頭を使う。人の仕事が便利になるように、どうしたらいいのかと、常に枠の外に答えを求めていく。
道脇さんは言います。
「頭脳は心の道具だ」
心は人の幸せを願う。しあわせに向かって進もうとする。
その時、頭はそのための道具だと言い切る道脇さんを見て、私は思いました。
この人は全身で自分の命を生きようとしている人だと。
人は己のために生きているのではない。
無学歴の道脇さんが自力で導き出した自分の人生に対する答えです。
道脇さんには、小学生の女の子がいます。
自分も発明家になると、お父さんの仕事場にもついて行きます。
手に、紐で釣ったペットボトルをぶら下げています。
ペットボトルには半分水が入っています。女の子の発明なのです。
坂を下りるときなど、これが錘となって転がらないのだそうです。
「今はダメだけど、大きくなったらお父さんを超える発明家になる」
インタビュアに答える女の子を見つめる道脇さんの笑顔と目、
己のために生きているのではないという理解が、
明々と輝き、花咲く瞬間のように見えました。
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