セブズーの町の中心街から少し離れたところに四丁目の街角がある。狭いが堅牢な石畳の街路が網の目のように通っている。その街路の両脇には様々な店舗が店を構えている。町中の商店が一か所に集まったような賑やかな一角になっている。子供だけで歩くのがはばかられるような雰囲気がいつも漂っていた。実際、子供だけで四丁目に行くことは学校からも親からも固く禁じられているのだった。
子供が一人で四丁目に入ると、人買いに捕まって帰って来れなくなるという噂もまことしやかに囁かれていた。そんな街の中を子供四人が固まって歩いていた。
ジルの店はなかなか見つからなかった。華やかな店舗に目が奪われて、つい見逃してしまうような片隅にジルの雑貨屋を見つけたのは、優に一時間は過ぎた後だった。
店の中は色々な雑貨が並べられ、天井からは荒縄やランプが吊り下げられていた。奥にカウンターがあって、でっぷりと太った男が座っていた。
「何がいるんだね。」
四人がおずおず店に入って辺りを探っていると、男の太い声が飛んで来た。
「あ、あの、ここにジルというおばあさんがいると聞いたものですから。」
「そんなばあさんはいねえ、よ。」
「でも、図書館のユングさんに聞いたのですが。」
「ジルというのは俺のことだ。」
「ではおばあさんは、」
「ばあさんに何の用なんだ。」
「おばあさんに昔話を聞かせてもらいたくてやって来ました。」
「物好きな事だな。」
「あの、会わせていただけます?おばあさんに。」
「奥の部屋で辛うじて生きているだろうよ。」
「行っていいですか。」
「好きにすりゃあいいさ。」
「ありがとうございます。」
「パルマって名がある。そう呼んでやってくれ。」
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