のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
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二、セブ王の噴水(アモイ探偵団)

2014-10-15 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)

 

 「エミーが休んでいる間に、俺達すごい発見をしたんだぜ。」カルパコが言った。

 「えっ、何なの。どんな発見?」

 「それは学校に行ってのお楽しみさ。」ダルカンがおどけて言った。

 「意地悪ね。ねえ、エグマ、あなたなら教えてくれるでしょう?」

 「学校に行ったらね。」

 「エグマ、あなたまで意地悪言うのね。いいわ、私もすごい話があるんだけど、お預けね。」

 「おいおい、なんだい、すごい話って。」カルパコがエミーの顔を見た。

 「ひ、み、つ、」

 みんなといるとエミーはいやなことを忘れることが出来た。三人はわざとエミーの不幸には触れないでいつものように接してくる。そんな思いやりの心をエミーは嬉しく思った。

 四人は自分達のことをアモイ探偵団と呼んでいた。

 学校で、グループを組んで調べたことを発表するという生活科の授業があった。そのとき四人がグループになったのだ。話し合って、アモイの歴史を調べることになり、学校の図書館や、王立図書館に通い、調べ上げて絵入りの年表を作った。それがスマイリー先生の評価を受けて教室に張り出された。

 それ以来、四人は大の仲良しになってアモイ探偵団を結成したのだ。

 アモイ探偵団はそれから、学校の中の不思議なことや、ちょっとした事件を調査して、解決した。いつの間にかそれが学校中に知れ渡って、色々な問題や捜し物の調査を頼まれるようになった。

 たとえば机に置いていた革表紙の手帳がなくなったので調べて欲しいとか、トイレの奥の扉はいつもしまっているがどうしてかとか、中には次の試験の問題は何かというものまで、依頼はいくつもあった。

 内容によって断る場合もあったが、大かたの依頼はアモイ探偵団の調査で解決した。

 アモイ探偵団の強さの秘密は四人がそれぞれ違った能力をもっていることだった。

 カルパコは理科に強く、行動的だった。ダルカンは歴史や法律が得意で、エグマは言葉についての知識が豊富だった。どちらかといえばダルカンとエグマは慎重なタイプで、二人はいいカップルだったのだ。

 エミーには特にこれという能力はなかったが、ヅウワンの影響から音楽や詩が好きだった。それに色々な楽器を弾くことが出来た。そしてバックルパーのように行動的だった。身が軽く、女の子というのに高いところだって平気で上ることが出来た。そんなところがカルパコと波長が合うのだろう、エミーとカルパコも互いに引き合っていた。

 二組のカップルが一つになったというのが、アモイ探偵団の最も強い力だったのかもしれない。

 エミーにとってアモイ探偵団は自分の悲しみや苦悩を忘れさせてくれるただ一つの仲間だった。時には自分の親よりも、心を開き合う事が出来るのもまた友との絆なのだ。

  「俺達すごい発見をしたんだぜ。」というカルパコの一言が、打ち沈んだエミーの心をあっという間にアモイ探偵団に引き入れてしまったのだ。

  結局話し出したら長くなるからと、お互いの大発見は放課後図書館に集まって報告し会うことになった。久しぶりにエミーは自分の心が晴れて行くのを感じていた。

 

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