「水で見えにくいが、あの台座も怪しいな。」
「そうだな、落ちる水で隠されてよく見えないが、複雑な彫刻がある。」
「ねえ、私に見せて。」エグマが遠めがねをエミーから奪い取った。
「どうやら、人が色々にからんでいるような彫刻ね。」エグマは注意深く噴水の周りを周回しながら、遠めがねを覗いて言った。
「エグマ、あそこを見てくれないか。」カルパコが一点を指さした。
「あれね、」エグマはその方向に遠めがねを向けた。落ちる水が左右に別れ、カーテンが破れたように開いた場所があった。水のカーテンはゆらゆらと形を変えたが、そこから中が見通せた。
「あそこにパネルのようなものが見えるが、あれは何だろう。」
「そうだわ、これでは読めないけれど、何か文字が刻んであるわ。きっと像を取り付けたときの銘板に違いないわ。」
「ほんとうかい。」
カルパコが遠めがねを見、エミーもダルカンもそれに続いた。
「とにかく、調べて見る価値はありそうだ。」
カルパコの言葉に、皆は無言で同意した。
「でも、どうやってあそこまで行くの?」エミーは噴水の像を見つめた。
「それが問題だな。」
「まず外堀から埋めて行くんだ。」ダルカンが言った。
「外堀って、土か何かで埋めるっていうの。」
「エミー、調べられる所から調べようって意味よ。」
「そういうこと。」ダルカンが相槌を打った。
「いいかい、これを見てくれ。」
そう言って、ダルカンは手帳を広げた。そこには依頼文の文字が書き写してあった。
『王家の』『眠らされた歴史に』『光をあてよ』『それを』『知りたければ』『セブ王の噴水を調べよ』
「つまり、王家の歴史には眠らされている部分が在るということだろう。その眠らされている歴史は噴水に関係しているという意味だと思うんだ。」
「今に伝わる歴史にはない歴史ってことかな。」
「眠らされているっていうことは、つまり誰かに隠されているっていうことかしら。」
「すると、その誰かにとっては都合の悪い歴史だったんだな。」
「でも、そんなことって、出来ることなの。」
「歴史は、その時の権力者が作るものだからね、自分の都合の悪いことは書かないだろう。でもいい伝えの方は民衆が口々に伝えたものだから、不確かな面はあるけれど、本当のことを伝えていることもあるんだよ。」
「ダルカン、すごい、さすがね。」
「つまり、アモイ探偵団のこれからの捜査目標は、歴史を調べること、年寄りにいい伝えを聞くこと、それにあの噴水を調べることの三つということだ。」
「分かったダルカン、それでは君達は歴史を調べてくれ、俺達はいい伝えの方を調べてみる。」カルパコが言った。
「よし、そうしよう。」
四人はそれぞれ二組に別れてセブズーの町に入っていった。
次を読む
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます