のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

ジイジと北斗(新スケール号の冒険)23

2022-09-11 | ジイジと北斗(新スケール号の冒険)

(14)-2

 

 「太陽族の使いの者達、よくぞこのバリオンに参られた。」

太い声が頭の上から聞こえました。王様の声だとすぐにわかりました。

人々の心が一瞬で変わるのをスケール号の面々でさえ感じることが出来たのですから。

台座から王様が姿を現したのです。

「まずはゆるりと、身を休ませるが良い。国を挙げて歓迎いたす。我ら、太陽族の意にかけて。」

再び大喝采が起こり、ラッパが鳴り響きました。

王様は従者を連れて台座から降りると、自らスケール号の面々を出迎え、

白いテーブルに一同を導いて行きました。

台座を背にして皆がテーブルに着くと王様が手を挙げました。

音楽が止むと、左右の食卓から何かが崩れるような音が響きました。

全員が一斉に腰を下ろしたのです。

すると左右の門が開き何台ものワゴン車を先頭に、楽団とコーラス隊が

現われたのです。ワゴン車には山盛りの料理が乗っていました。

瞬く間に白いテーブルが豪華な食卓に変ったのです。

ぐうすか達に胃袋がなかったら、永遠に食べ続けていたでしょう。

それほどおいしいものばかりでした。そのおかげで、物見の塔に案内された

ときにも、お腹をくの字に曲げることが出来なかったのです。

 

「王様、聴いていいでヤすか?」

もこりんが胸を張ったまま王様に尋ねました。

「何だね。」

怖そうな王様が気さくに答えました。食事を終える頃には、スケール号の乗組員たちはすっかり王様を好きになっていたのです。

「原子の王様って、星のことだと思ってヤしたが、どうして目にも見えない小さな星に人がいるのでヤすか。」

「そうそう、わたスも思っていたダすよ。」

ここはのぞみ赤ちゃんの身体の中なのです。その身体が原子でできている

ということは博士の授業で知っていましたが、その上に人がいるなんて

聞いたことがありませんでした。それはぐうすかもぴょんたも同じでした。

太陽は燃える火の玉で人など住んでいません。ですから原子の王様と

言えば、そういうものだと皆は思っていたのです。

「星には人が棲んでいるものだよ。もころんとやら。」

「もこんでヤすよ、王様。」

王様はもこりんの訂正には答えず、威儀を正して博士に向き直りました。

「私はこのバリオンを統べる太陽族の王である。」

「そなたたちは私に何を伝えに来たのだ。なにゆえに太陽の紋章を持って私に近づいた。」

「王様、長い話になりますが、お聞きくださいますか。」

博士は改めて王様の前で膝を折り、胸に右手を添えて頭を下げました。

「聴こう。楽になさるがよい。」

「ありがとうございます。我々を太陽族の使者と呼んでいただき光栄です王様。」

そう言って博士は、スケール号のいわれをかいつまんで話し、

太陽の紋章を頂いたいきさつを説明しました。

バリオン王は博士の話しに目を見開いて聴き入っていました。

博士は子供の頃、艦長としてスケール号にのっていたのです。

神ひと様に会いに行く旅の経験から、太陽が神ひと様の身体をつくっている

一番小さな単位で、神ひと様の光と命を宿していると知ったのです。

のぞみ赤ちゃん、つまり我ら人間が原子系宇宙に浮かんでいる素粒子星の

一つ一つを命の単位として、まるで素粒子星が組体操をするように

人の身体を創り上げています。まったく同じように太陽が神ひと様の身体を

支えているのでした。違うのは素粒子星と太陽ということだけです。

スケールが違うだけで、どちらもヒトをつくる一番小さな単位としてこの宇宙に

存在していることになるのです。つまりこの世はスケールを変えながら

同じ世界が繰り返されているのです。

「信じられぬ。」

バリオン王は博士の途方もない話に、自分がどうかかわっていいのか

分からないという表情で博士を見ました。

「王様、私達の身のまわりには目に見えぬ空間が在りますね。この空間こそがその証拠なのです。失礼ながらこのバリオン星は、まだ一つひとつのお名前も存じ上げませんが、いくつもの惑星を従えて原子系をつくっておられます。どうしてそんなことが出来るのかご存知ですか。」

「それは太陽族の、我らの力じゃ。」

「はい。まさにその通りです。しかしもっと根本に空間が在るのです王様、私達は空間の力を見落としていたのです。」

「空間の力だと?」

「バリオンの原子系宇宙はこの空間が在ってはじめて成り立っています。」

博士は自分の両手を広げて空間を包んで見せました。

「空間がなかったら・・・」

「そうです王様、そう考えたらいいのです。空間がなかったら、この原子系宇宙に浮かぶ星達はどうなります?皆一つにくっついてしまいますね。そうなったらこのバリオン星すらなくなります。」

「そんなふうに考えたことはなかったが、・・確かに空間が在るからバリオンもストレンジも浮かんでいると言えるが・・・。」

「王様、このスケール号はこの空間を通って、太陽系の宇宙から王様のいる原子系宇宙にやってこられるのです。」

「ゴロニャーン」

スケール号は自分のことを言われて嬉しくなったのでしょう。宙返りして

そのまま王様の足元にすり寄って行きました。バリオン星の

包み込まれるような光の中で金色の毛並みが繊細に揺れているのです。

王様は思わずスケール号をすくい上げ両の腕に抱きかかえました。

「この猫がの?」

四半の空いっぱいに拡がった猫の姿が王様の頭に焼き付いています。

そのスケール号が無警戒に喉を鳴らしてバリオン王の腕をぺろぺろ舐めました。

「スケール号は自在にその大きさを変えることが出来るのです。」

「だからあのような大きな姿で現れたのか。あれはお前だったのか。しかしあの時反乱軍に攻撃されて死んだのではないのか。」

「反乱軍ですと?王様、スケール号を射抜いたのは王様の光の槍ではなかったと言われるのですか?」

「あの時そなたたちの背後に反乱軍の大部隊が控えていた。そなたたちはその先鋒だと疑ったのだが、攻撃を受けたのを見て助けようとしたのだ。しかしその直後に突然消えたのだ。てっきり死んだと思ったのだが、生きていてよかったの。」

王様はスケール号の毛並みを梳くように撫ぜてやりました。

スケール号は気持ちよさそうに目を閉じています。

「その反乱軍はどうなったのですか・・・王様?」

「撃退した。」


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