うなされて、バックルパーは目を覚ました。全身に汗をかいていた。甘酸っぱい悲痛な気分が今も続いている。夢だったのか。汗で濡れた首筋を手で拭きながら、バックルパーは生々しい夢の感触に浸っていた。
夢にしてははっきりし過ぎていると思った。細かいところまではっきり覚えている。こんな経験は今までなかったことだ。ヅウワンが死んで、相当まいっているのだろう。それに可哀想なエミー、自分がヅウワンを殺したのだと思い込んでしまって、自分を責め続けているのだ。それをどうすることもしてやれない自分に胸が痛む。そんな思いが、夢になったのだろう。
それにしても、現実感の強い夢だった。槍で胸を突き刺された。その痛みの記憶が今も生々しく背中から胸にかけて残っている。死んだと思った瞬間目覚めていた。一体あれは何だったのだろう。今、こうしている自分を見れば夢には違いないのだけれど。
昨夜、しこたま酒を飲んだ。それがいけなかったのかもしれない。
つい一ヶ月前にユングが死んだ。突然死だった。何が原因か分からなかったが、突然多量の血を吐いて、心臓が止まったのだ。それから半月後にヅウワンが事故で死んだ。最愛の親友と妻を失ったバックルパーの心は、耐え難い痛みで満ちあふれていた。二人の葬儀の酒が残っていたのだ。
バックルパーは頭を大きく振って、ベッドから下りた。朝食の用意をしてエミーを起こさなければならない。
台所に立ってフライパンを火にかけた。やがてバックルパーは底に煮立った湯の中にヤクの干し肉を引きちぎって投げ込み、卵を落とした。
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