
トラウマというのは他でもない交差点の信号を渡る恐怖感だった。
地下道を避けて信号に向おうとすると、赤いスポーツカーの姿が浮かんでくるのだ。
私は結局、自転車で突っ切る数秒間の怖さの方を選んでいた。その後も私は通勤の道程に地下道を利用し続けたのである。
今から思えばあの赤い車の事件は、私を地下道から逃がさないようにする神の計らいであったような気がする。
無気力に陥っていた私の心を救うために差し伸べられた神の手。
それとは知らず私は楠の葉を食む蝶の幼虫のように、その手を自然に受け入れていたのだろう。
神との出会いはある日突然やってくる。
ただ無垢なるものの上に。
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