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静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

第 三 部 一、 黄泉の国 (黄泉の光)

2014-12-12 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)

黄泉の光

 

 ランプの灯りがオレンジ色に輝き、地下道を照らし出していた。その光がどれ程ありがたいか、そのことは漆黒の闇を通って来た者にとっては共通の思いだった。

  「おお、ここは、もとに戻ってしまったのか。」ウイズビー王子が叫んだ。

 王宮の地下に降りて左側の洞窟から入ったはずなのに、その右側から出て同じ場所にたどり着いたのだ。左手には王宮に続く階段が見えていた。

 「違うわ、ここは黄泉の国よ。ここは左右が反対になっているのよ。だからここは黄泉の国に違いないわ。」エミーが王子に言った。

 「そうなのか。」王子はあらためて三つの入り口が見えている地下室を見回した。

 「では予定通り、作戦開始だ。」パルマが静かに言った。

 「王子とジル、それにカルパコとエミーはこの城に止まって、セブ王が持ち去った青い玉を探すのだ。青い玉の隠し場所は王子の心のどこかに思い当たるところがあるやも知れぬ。」

 「分かった。やってみよう。」

 「ゲッペルとバックルパー、それにダルカンとエグマは市街に出てセブ王の噴水にある赤い玉をとってくるのだ。市街にはゲッペル将軍率いる警備隊が待ち構えておるだろう。将軍は策謀家だ。十分気をつけねばならぬ。お前の祖先なのは知っておろう、ゲッペル。お前なら将軍に対抗出来るはずだ。首尾よく赤い玉を手に入れたなら、この王宮に返ってくるのだ。」

 「分かった、最善を尽くそう。しかし私には、将軍を憎む心はない。」

 「それでいいのだ、ゲッペル。そして皆も聞くがよい。この戦いは憎しみの戦いではない。分かっておろうな、バックルパー。これは戦いではない、愛する事なのだ。」パルマはバックルパーの心を見越して言った。バックルパーはちょうどヅウワンの事を考えていたのだ。悪魔に殺され、この国に捕らえられた可哀想なヅウワンの事を思えば、自然と心に怒りが沸き上がってくる。パルマはそんなバックルパーのはやる心を押さえたのだ。

 「気をつけるよ、パルマ。」

 「そうすることだ、許すことを忘れてはならぬぞ。」

 「しかしパルマ、皆がバラバラになったら、互いに連絡が取れないのではないのか。」王子が訊いた。

 「その点なら心配要らぬ。パルガとわしが皆の心に直接呼びかけるだろう。我らはたとえ離れていても心は一つなのだ。」

 「そんなことが出来るのか。」

 「大丈夫じゃ。」パルガが無言で、皆の心に呼びかけた。

 「聞こえるわ。今、大丈夫ってパルガが私に言った。」エグマが言った。

 「私も聞こえたわ。」エミーもうなずいた。

 「分かったかな。では、皆の健闘を祈ろう。わしとパルガはヴォウヅンクロウゾと対決してその力を封じよう。くれぐれも用心してな。」

 パルマはそう言うと、手を挙げてパルガの方にかざした。パルガもそれに応じて自分の手のひらをパルマの手のひらに合わせた。すると、合わされた両の手のひらから、まばゆい光が発せられた。白い光線が地下室に満たされた。そして光が消えた時、パルマとパルガの姿は地下室にはなかった。光と共に二人の姿は消えてしまったのだ。

 驚いてうろたえる皆の心にはっきりとパルガの言葉が響いて来た。

 「世界を救うために頼んだぞ。」

 皆はしばらく無言だった。やがてそれぞれにやらねばならない事を思い浮かべて動き出した。

 「王子様、我らはまず先に出て、城の外に出ましょう。」ゲッペルが申し出た。

 「そうだな、頼むぞ。私は今しばらくこの地下を調べてみたい。夜ごとの不気味な声の秘密が分かるやも知れぬ。青い玉も案外この地下に隠されているかもしれない。」

 「分かりました。どうかご無事で。」

 「そなたもな。」

 ゲッペルとバックルパー、エグマとダルカンの四人が階段を上って行った。

 「エミー、気をつけるんだよ。」バックルパーが別れ際に言った。

 「バックも。」エミーは笑ってこたえた。

 こうして、地下に残ったのは、ウイズビー王子とジル、それにエミーとカルパコの四人だった。

 『地下牢に行け。』

 『地下牢に行け。』

 『地下牢に行け。』

 カルパコの頭にそんな言葉が響いていた。

 

 

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