徒然なか話

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旅の衣は篠懸の… ~長唄 勧進帳~

2024-01-30 21:59:46 | 古典芸能
 「勧進帳」というのは、能「安宅」を元にした歌舞伎の演目。僕が「勧進帳」の物語に接したのは、黒澤明監督の映画「虎の尾を踏む男達」が最初だった。テレビで能の「安宅」や歌舞伎の「勧進帳」を観たのは、それよりずっと後のことで、「勧進帳」と聞くとまず思い出すのは映画「虎の尾を踏む男達」のこと。「旅の衣は篠懸の、旅の衣は篠懸の・・・」という有名な謡が、ミュージカル風の男性コーラスで始まるオープニングや「虎の尾を踏み、毒蛇の口を遁れたる心地して・・・」と安宅の関を後にして、強力のエノケンが「飛び六法」で消えて行くエンディングなどが忘れられない。
 あらすじは、源義経一行が源頼朝の追及を逃れ、山伏姿に身をやつして奥州への逃避行の途中、加賀国の「安宅」の関を通過しようとして関守の富樫との間で繰り広げる攻防を描いたもの。中でも武蔵坊弁慶が富樫に迫られて白紙の勧進帳を読み上げる場面が有名だ。
 弁慶役の大河内傳次郎、森雅之、志村喬らの山伏、富樫の藤田進、そして映画版で創造されたキャラクターである強力の榎本健一など、名優たちが織りなすサスペンス劇は今でも忘れられない。終戦の昭和20年(1945)にこんな映画が製作されたというのも驚きだ。またこの映画の撮影中には進駐軍関係者の見学が多かったらしく、ある時、そんな米軍関係者の中に黒澤監督が敬愛してやまないジョン・フォード監督が含まれていたらしいが、肝心の黒澤監督は俯瞰撮影のためクレーンの上にいて気づかなかったというエピソードも残されている。


映画「虎の尾を踏む男達」の一場面

 さて、下の写真は一昨日行われた「第57回熊本県邦楽協会演奏会」での「長唄 勧進帳」の様子。毎年、見事な演奏を見せていただく蓑里会の杵屋五司郎さん。卓越した唄と立三味線の技が最も引き立つのがこの「勧進帳」だろうと思う。もう一度映像でゆっくり楽しみたい。



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