20代の頃、会社の担当者会議でよく東京に出張した。1日で会議が終わる時は熊本ー東京間を飛行機で日帰りした。
ある時の出張の帰り、熊本へ向かうJAL最終便の離陸を待つ機内でラジオを聴いていた。少し遅れて搭乗してきたダンディな紳士が隣りに座った。この紳士、他の乗客と様子が違っていた。離陸する時、頭を傾げてじっと聞き耳を立てていた。僕は気にしない素振りをしていた。飛行機が上空に上がって安定飛行に入った時、その紳士が突然話しかけてきた。「いや、私もね、この飛行機を操縦するもんですからね、離陸と着陸は気になるんですよ」。そうですかと答えた僕に「今日の機長は上手いですよ」と続けた。それからしばらく、お互いの身の上などを語り合った。紳士が「どこにお住まいですか」とたずねたので、「京町です」と答えた。すると紳士は「それじゃ森さんはご存じですか」という。僕は「米屋の?もちろん知っていますよ」と答えた。それは僕の家近くの森さんという老舗のお米屋さんだった。ちょっとコワモテのご主人は僕より10歳ばかり歳上の高校の先輩だった。高校卒業後、防衛大に進み、航空自衛隊に入ったらしいとは聞いていた。僕が大学を卒業し、熊本に帰ってきた時、森さんは既に自衛隊は退職し、家業の米屋の主人におさまっていた。実はその紳士の航空自衛隊時代の操縦訓練の教官が森さんだったらしい。紳士は「森さんは私にとって神様のような方です!」と言った。そして「森さんは凄い腕を持ったパイロットでした!」。
飛行機が熊本空港に近づき、着陸態勢に入ると紳士は再び聞き耳を立てた。着陸した時、「ほら、上手いでしょ」と言った。空港での別れ際、紳士は「森さんにくれぐれもよろしく!」と言い残して颯爽と去って行った。実は僕がそのことを森さんに話したのは何年もたってからだった。森さんは「アイツか」と言って何ともいえない笑みを浮かべた。
聞くところによるとその紳士はJALのB777の機長として名を馳せ、パイロット引退後はJALの重役になったらしい。
ある時の出張の帰り、熊本へ向かうJAL最終便の離陸を待つ機内でラジオを聴いていた。少し遅れて搭乗してきたダンディな紳士が隣りに座った。この紳士、他の乗客と様子が違っていた。離陸する時、頭を傾げてじっと聞き耳を立てていた。僕は気にしない素振りをしていた。飛行機が上空に上がって安定飛行に入った時、その紳士が突然話しかけてきた。「いや、私もね、この飛行機を操縦するもんですからね、離陸と着陸は気になるんですよ」。そうですかと答えた僕に「今日の機長は上手いですよ」と続けた。それからしばらく、お互いの身の上などを語り合った。紳士が「どこにお住まいですか」とたずねたので、「京町です」と答えた。すると紳士は「それじゃ森さんはご存じですか」という。僕は「米屋の?もちろん知っていますよ」と答えた。それは僕の家近くの森さんという老舗のお米屋さんだった。ちょっとコワモテのご主人は僕より10歳ばかり歳上の高校の先輩だった。高校卒業後、防衛大に進み、航空自衛隊に入ったらしいとは聞いていた。僕が大学を卒業し、熊本に帰ってきた時、森さんは既に自衛隊は退職し、家業の米屋の主人におさまっていた。実はその紳士の航空自衛隊時代の操縦訓練の教官が森さんだったらしい。紳士は「森さんは私にとって神様のような方です!」と言った。そして「森さんは凄い腕を持ったパイロットでした!」。
飛行機が熊本空港に近づき、着陸態勢に入ると紳士は再び聞き耳を立てた。着陸した時、「ほら、上手いでしょ」と言った。空港での別れ際、紳士は「森さんにくれぐれもよろしく!」と言い残して颯爽と去って行った。実は僕がそのことを森さんに話したのは何年もたってからだった。森さんは「アイツか」と言って何ともいえない笑みを浮かべた。
聞くところによるとその紳士はJALのB777の機長として名を馳せ、パイロット引退後はJALの重役になったらしい。
へ~っ、エンジン音か何かで分かるのですかね?
>「いや、私もね、この飛行機を操縦するもんですからね、・・・
飾らない方ですね。
>「今日の機長は上手いですよ」と続けた。
へ~っ、車の運転だったら分かりますが(笑)、旅客機にもそんな違いがあるんですね。
>「それじゃ森さんはご存じですか」という。僕は「米屋の?もちろん知っていますよ」と答えた。
ほんと気さくな方ですね。
>紳士は「森さんは私にとって神様のような方です!」と言った。
人の運命って人との出逢いによって大きくかわるものですが、素敵な方と隣り合わせに座られたんですね。
>着陸した時、「ほら、上手いでしょ」と言った。
着陸時のドン!という音と響きならば素人でも分かりそうですが・・・(笑)
>森さんは「アイツか」と言って何ともいえない笑みを浮かべた。
いやー、飛行中も森さんと会話された時も素敵な時間でしたね。
ジェット・ストリームは数回しか聞いたことないですかが、懐かしいです。
有難うございました。
飛んでいる間は誰が操縦しても同じだけれど、離陸着陸は機長の腕によって差が出るとおっしゃっていましたね。
多分、エンジン音やタイヤの摩擦音、タイヤを格納する時の音などを聞いておられたと思います。
私は子供の頃から米屋の息子・森さんを知っていて祖母や近所のおばちゃん達から、航空自衛隊に入られたことは聞いていましたが、まさか教官を務めるほどのパイロットだったとは知りませんでした。
ホントに世の中、いつどんな人と出会うかわかりませんね。今でも時々思い出しては「一期一会」の心、誠意を持って接しなければならないなと思います。
「ジェット・ストリーム」は当時機内でも聞いていましたが、今でもYouTubeなどで聞いては当時を懐かしく思い出しています。
ジェット・ストリームは私も出張で上京時によく聴いていました。
飛行機は好きではなかったのですが、あの語りと音楽を聴いていると、ゆったりとした気持ちになったものです。
日航の機内用の音楽だと思っていましたが、後にFMラジオの番組だと知りました。
ラジオでも聞いたことがありましたが、やっぱり機内は気分が違いますね。