縄文人はどんな世界観を持っていたんだろう?
現代人がそれを知るには、遺跡の在り様や出土品、民俗例から彼らの世界観をうかがいみることしかできない。
そんな縄文人の世界観を知る手段として、生活必需品とは別の何に使ったのか分らない出土品を観察すると面白い。
新潟県立博物館館長の小林達雄先生が「第二の道具」と表現した出土品である。
例えば土偶や男根型の石棒などなど・・・。
「第二の道具」の中でも俺が注目しているのは石笛だ。
石笛とは、泥岩や砂岩などに穿孔貝が巣穴にするために開けた孔のある石、火成岩にガスの噴出で孔が開いたりした石、あるいは母岩から結晶の粗い部分が抜け落ちて孔が開いた石のことだ。
孔に斜めに息を吹込めば笛のような音がするから石笛と呼ぶ。
縄文遺跡からも全国で三十例ほどの石笛が出土している。
熊本県宇土市の轟貝塚から出土した縄文石笛のレプリカ。泥岩で作った。
縄文人が何の目的で石笛を拾ってきたのかは不明だが、一部の神道教団では今でも神事に招魂や昇魂などを目的として吹かれているので、縄文人も神事の祭器として使っていたと推測されている。
縄文遺跡からは自然の孔あき石の他、石に人工的に孔を開けた石笛も若干出土しており、それぞれ吹き易い形に加工され、泥岩等の他、ヒスイ製も出土している。
そこで縄文人がどんな音を聴いていたのか知りたくて、熊本県宇土市の轟貝塚から出土した石笛・・・と推測されている・・・のレプリカを作ってみた。
轟貝塚は縄文前期(六千~五千年前)の遺跡だ。
出土した人工石笛は、黒色石灰岩製でΦ8㎜の貫通孔の他、貫通孔に直交したΦ4㎜の小孔が開けられていて、貫通孔と小孔を指で押さえれば音階の変化ができる工夫がされている。
つまり元祖オカリナだ。
縄文石笛のレプリカ中央に開けられた小孔と貫通孔を指で押さえれば音階が変えられる。
出土品の実測図を取り寄せて忠実に再現したが、下手糞な俺が吹いても縄文の音が再現できんでしょうと、盟友である和歌山市在住の石笛仙人こと守山鷲声さんに演奏して貰った。
鷲声さんの本業は竹笛職人だが、木霊研究家として著名であり、「石笛倶楽部」というサイトを運営する石笛演奏家でもあるので、俺は尊敬の念を込めて石笛仙人と呼ばせてもらっている。
石笛仙人は獣医の資格も持ち、若い頃は漫画家だったという不思議な経歴の人。
鈴を転がすような倍音、寂びた幽玄な音色・・・おっと、ここでは四の五のと言うまい。
五千年前の縄文の響きをお愉しみに!