有名なカタログ通販会社から、ぬなかわヒスイ工房の石笛を売らないか?と問合せがあったのが春の頃。
一部では評価されていても、宣伝広告費ゼロの零細工房だから名前が世に出る絶好の機会到来?
色めき立ったが、ぬなかわヒスイ工房の作品は、石の個性を引き出す事を旨としているのでひとつとして同じものはない。
石笛仙人こと守山鷲声さんと共同開発したKODAMA石笛の2017年版。最低音や息の吹き終わりの時に音が掠れない工夫をしてあり、レスポンスが格段に向上したとの鷲声さんからの評価。
量産できないし、模様や姿、石笛の特性も全部違うので、たった1枚の写真で詳細データも載せられないカタログ商法では無理だろうと、電話でやんわりとお断りしたら、今月になって直接話しがしたいと、わざわざ糸魚川まで訪ねて来てくれた。
熱心に説明してくれたが、概ね同じ模様と形であればバラつきがあっても同じ値段で売れる、との事。
一般的には石の表面に直角に孔を開けてある石笛が多い中、天然石笛と同じ斜めの孔を開けてあるのがミソ。
石を観て、どこにどんな孔を開けるのかと判断して忠実に開けるのが技術の要です!
同じ原石から造っても、発色の強さ、模様が違ったりするし、密度が違ったりもするので石笛の音色も変わってしまうのに、同じ値段で売っていいのか・・・。
工業製品とは真逆の作風だからこそ、一部だけとはいえ評価されて、なんとか食えているのだけど・・・。
担当者の熱心さに心が動いたが、彼らが帰った後からフツフツとなんか違うと思えてきた。
神事に使う祭器が石笛の本来で、量産しては価値が無くなってしまう。
そして私がモノ造りの師匠として仰ぎ見ているのが、樂茶碗の長次郎、不世出の大工道具鍛冶と謳われた千代鶴是秀。
値段が付けられない一品ものを産み出した偉大な人々。
このカタチになって石が喜んでいるように見えるか?大事な事。
やっぱ無理。
お断りすることにした。
貧乏のままでもいいから、納得のいく仕事を細々と、そして誰に見せても文句が付けられないモノ造りを続けていきますわ。