どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

なぞなぞあそびえほん

2019年12月16日 | 長谷川善史

        なぞなぞあそびえほん/角野栄子・作 長谷川善史・絵/のら書店/2009年

 

 子どもがだいすきななぞなぞ。簡単すぎず難しすぎのバランスが微妙。答えがわかっていても楽しめる絵本です。

 なぞなぞが30.

 りょうてで つくる さんかくやま くろいマントきて どかっと すわっている おなかのなかには なにがある? くちのなかで おたのしみ。

 あしもとから のびる くろい ぼく ぼくのは ぼくの かたち きみのは きみの かたち とりかえっこ できない あかるいと でてきて くらいと きえちゃう おばけと 反対のへんな やつ。

 問いかけの文 なかなか味があります。こたえの特徴が よくあらわされています。

 じつは長谷川さんの絵に こたえがあります。

 小型で持ち運びが便利。外出時にも持参できるので、ちょっとした時間に楽しめると評判です。


青い竜と黄色い竜

2019年12月15日 | 絵本(昔話・外国)

    青い竜と黄色い竜/松谷みよ子・文 遠山繁年・絵/太平出版社/2003年

 

 韓国の昔話。

 金武達(キムムダル)という弓の名人が、竜井という池のぬし青竜から助けをもとめられます。

 黄竜という竜が、青竜にかわって、池のぬすになることを、たくらんでいるというのです。

 黄竜が池のぬしになれば、洪水がおきて、村をおしながすので、青竜は、どうしても池をわたすわけにいかないといいます。

 村の一大事と、池にいったキムムダルでしたが、二匹の竜の戦いの前に、からだがこおりついたようになって、どうしても矢をいることができません。

 しかし、その晩、青竜は老人のすがたであらわれ、もういちど矢を射って力をかすようにいいます。

 キムムダルは、まものとたたかうときは つばをつけた矢を射れという父親の教えを思い出し、今度は何本もの矢をはなち、黄竜をたおします。

 青竜は荒れ地に水田をひらくようキムムダル力にいいます。「あそこは 水もなく 作物は、みのらないところだ」とキムムダルはいいますが、その後、七日七夜雨が降り続き、荒れ地を潤します。

 竜井という池の伝説でしょうか。

 作物を育てるには水が不可欠。苦労して水を手に入れた昔の人々の思いが、こうした話を生み出したのかも知れません。


てんぐだいこ

2019年12月14日 | 絵本(昔話・日本)

    てんぐだいこ/神沢利子・文 赤羽末吉・絵/偕成社/1982年

 

 たたくと鼻がのびちぢみするふしぎな太鼓を拾った源五郎さん。

 おかねもちのむすめさんの鼻をのばして、もったいぶって 七日間かけて、もとどおりにすると、金持ちから たくさんの 小判を手にいれ、あそんでくらします。

 どこまで 鼻がのびるか ためしたくなった源五郎さん。鼻はのびてのびて天まで。

 天ではちょうど天の川に橋を架ける工事中。いいところに棒がつきでたわいと、天の男は、鼻を欄干にくくりつけてしまいます。源五郎さんが、鼻を短くしようとすると、体は どんどん上に。

 天につくと、雨を降らすのにてんてこまいの鬼に 手伝いをさせられます。

 雨をふらすのがおもしろくなった源五郎さん。突然の夕立で、お祭りの最中の人々が、あわててにげだすありさまが おかしくて あはは わらって のぞくうち 足をすべらせ 真っ逆さまにおちたところが琵琶湖。

 むちゅうになって およぐうち 手足がひれになり、からだに うろこが 生えて源五郎さんは、とうとう ふなになってしまいます。

 この絵本ではありませんが、同様の語りを聴きました。鼻が低い人を、ちょっとだけ高くしてあげる善行?もありました。語り手の方が工夫されていたようです。

 「ぽんぽこ ぽんぽこ と太鼓をたたく」「にょき にょき と 鼻がのびる」「あれ まあ、手足が ひれになり あれ まあ からだに うろこが はえて・・。」と、神沢さんの文もとてもリズミカルです。

 ところで、琵琶湖における本来の小型ゲンゴロウブナは絶滅危惧類に指定されているようです。 


このいえも むかしは

2019年12月13日 | 絵本(外国)

           このいえも むかしは/ジュリー・フォリアーノ・文 レイン・スミス・絵 青山南・訳/BL出版/2018年

 

 森の奥深くの丘の上の一軒の倒れそうで誰もすんでいない家。
 むかしは青いペンキが塗られていたけれど、今ははがれていて、家までの道は草木にすっかりおおわれ、窓のガラスはなくなっています。

 ふたりの子どもが、丘をのぼり、家に近づきます。
 玄関のドアは、あいているか しまっているか どっちつかず。

 ガラスの割れた窓から、家にあがりこんだふたりの子ども。

 顔がやぶれた写真、テーブルの上の絵の具、レコード、まだどこか暮らしの名残が残っている室内。

 子どもたちが想像します。

 ヒゲをはやし、眼鏡をした男の人が、まどをのぞいて、海にいきたいとおもっていたのかな?

 女の人が、アイステイーを飲みながら 庭でリスの絵をかいていたのかな?

 女の子が レコードに合わせて うたっておどっていたのかな?

 男の子が、飛行機をつくって まいばん空をとぶ夢をみていたのかな?

 飛行機でパリにとんでいって セーヌ川で絵をかいて チーズをいっぱいたべているのかな?

 ・・・・

 ときどきCG風の無機質な絵本がありますが、どうにも好きになりません。この絵本は、手作り感のある味わいのある絵。家のなかに住んでいた人を想像する場面では、それまで様相がガラリと切り替わります。男の子の飛行機がとってもクラシック。

 「森のおくふかくに いえがいっけん。むかしは ひとがすんでいましたが いまは だれもいません」とはじまりますが、ラストにまったく同じフレーズがでてきます。

 はじめの方の数ページにわたって、小鳥が餌をくわえているのが気になっていたのですが、最後のページでは、雛が三匹、家の中の木の枝に とまっています。

 住宅密集地での空き家はいろいろ問題がありますが、森の中の空き家は、たしかに想像をかきたててくれます。


ぴったんこってきもちいいね

2019年12月12日 | 紙芝居

      ぴったんこってきもちいいね/田村忠夫・脚本 土田義晴・絵/童心社/2004年

 

あっちゃんと、ねこちゃんが おててと おててで ぴったんこ。

あっちゃんと、うさぎさんが おでこと おでこで ぴったんこ。

きつねさんと、足の裏と足の裏で ぴったんこ。

くまくんと ほっぺと ほっぺで ぴったんこ。

こんどはみんなで おしりとおしりで ぴったんこ。

親子でふれあいを楽しめそうですが、いくつぐらいまで楽しめるでしょうか。

ほかにも ぴったんこ するものがあると いいですね。


おじいさんとおばけ

2019年12月12日 | 紙芝居

         おじいさんとおばけ/堀尾青史・作 瀬名恵子・絵/童心社/1972年

 

 家賃がタダというわけありの家にすんだおじいさんのところへ、次々におばけがあらわれます。

 最初の晩は一つ目小僧。

 おじいさん、肩たたきをさせると、小僧さんは つかれてどこかへ。

 こ・・ん・・ば・・ん・・わ と次にあらわれたのはろくろっ首。

 おじいさんは動ぜず 針仕事をさせます。ろくろっ首は、首がなすぎて 針先がみえません。

 おじいさん 大入道には、庭の灯篭や大石を移動させます。

 おばけは、たぬきの いたずらでした。たぬきは ひとづかいの荒い人は もう たくさん。”サイナラ サイナラ サイナラ”と、どこかへ、いってしまいます。

 1972年の出版で、”サイナラ サイナラ”は、淀川長治さんのきまり文句。

 いまの若い人には、えんがないかも。

 おばけといえば、瀬名さん。こきつかわれるおばけに同情します。


バーバー・ヤガー・・ロシア

2019年12月11日 | 昔話(ヨーロッパ)

          世界のむかし話 ロシア/田中泰子・訳/ほるぷ出版/1988年


 ロシアの昔話にはかかせないバーバー・ヤガー。

 この話でも、バーバ・ヤガーの小屋はニワトリノ足とヒツジの角の上にたっています。

 ここにでかけていったのは、まま母から針と糸をもらってくるようにいわれた娘。バーバー・ヤガーはまま母の妹です。

 あわや食べられそうになった娘が、バーバー・ヤガーのところで、働いている下働きの女、ネコ、イヌなどから助けられます。

 ネコはテーブルの上にあるタオルと櫛をもって逃げるようにいいます。櫛を投げると深い森が現れ、タオルをなげると深い川があらわれるとおしえてくれます。

 「三枚のお札」と同様、娘がバーバー・ヤガーのところから逃げ出し、追いつ追われつします。バーバー・ヤガーは、臼を杵でたたきながら、もう一方の手に持った箒で後を消しながらとんでいきます。

 娘は、布を織っていたのですが、織るのをネコに任せて逃げ出します。バーバ・ヤガーに「なぜ娘をにがした!」とどなられたネコは、「あんたはかじりかけの骨だってくれたことがないじゃないか! あのむすめは肉をくれたんだよ」とこたえます。

 バーバ・ヤガーに「なぜ娘にかみつかなかったんだ!」とどなられたイヌは、「あんたは こげたパンの皮もくれなかったじゃないか! あのむすめはパンをくれたんだよ」とこたえます。

 さらに、バーバ・ヤガーに「なぜ門をとじなかったんだ!」とどなられた門は、「もうなんねんも あんたの家ではたらいているのに、あんたは水いっぱいだってかけてくれとことがないじゃないか。あの娘は油をかけてくれたんだぜ」とこたえます。

 シラカバも下働きの女も、バーバー・ヤガーのしうちをうらんで、娘をたすけてくれていたのです。

 娘は、櫛で森を、タオルで川を出現させ、なんとか家に戻ります。

 これを聞いた父親は、はらぐろいおかみさんを家から追い出してしまいます。

 バーバー・ヤガーは、森や川だけでなく、いわば自分の身内?からも 見放されていました。


おひめさまとカエルさん

2019年12月10日 | 絵本(外国)

   おひめさまとカエルさん/ハーヴ&ケーテ・ツェマック・文 マーゴット・ツェマック・絵 福本友美子・訳/岩波の子どもの本/2013年

 

 この本はツェマック家の合作といいます。ツェマック夫妻の長女のケーテが14歳のときに末妹に語り聞かせたのがもとになって、父親のハーヴが文にまとめ、母親のマーゴットが絵を描いた家族で作った素敵な絵本です。

 <いけに おちた ボール><なくした おつり><おうさまの あたまに とまった とり>の三つのおはなし。おひめさまとカエルがでてきますが、お姫さまといってもお城やきらびやかな衣装などはなく、純朴な子どもといった感じ。

 話もいたってシンプル。

 <いけに おちた ボール>では、ボールをなくし えーん えーん となく おひめさまのボールを カエルさんが さがしてくれ、おひめさまは カエルさんに あめをあげます。

 <なくした おつり>では、リンゴを買って もらったおつりを なくしてしまった おひめさまが えーん えーん とないていると カエルさんが さがしてくれ、おつりで カエルさんにも あめをかいます。 

 <おうさまの あたまに とまった とり>では、おうさまの あたまにとまった とりを なんども おっぱらっても とまってしまいますが カエルがおっぱらってくれます。こんどは、おうさまが おひめさまとカエルに あめをひとつづつくれます。

 ひめさまが えーん えーん と泣くのが、とっても子どもらしい発想です。

 大人が読むよりも、子どもが子どもに読んであげると雰囲気が出そうです。


とらばあちゃんのうめしごと

2019年12月09日 | 絵本(日本)

   とらばあちゃんのうめしごと/文・いちかわけいこ 垂石眞子・絵/アリス館/2010年

 

 とらばあちゃん、しり込みする孫に、木登りを伝授。

 まずはあたりをみわたすようにいい、あじさい、おとなりのねこ、モチノキの鳥の巣、郵便屋さんをみつけ落ち着いた孫に、梅の実をもぐようにいいます。

 そう うめぼしを作るのです。

 実を洗い、竹ぐしでヘタを取り、天日干し、大きなかめで うめ、塩、うめ、塩の順に何回か塩漬けしてなかぶたをして、しっかり重しをのせます。

 それから二月後、三日三晩 お日さまと夜風にあてて、うめぼしのできあがり。

 おばあちゃんのうめしごとには、昔からの言い伝えがあります。

 ・ほそいえだのさきの梅の実は、かみさまの取り分。

 ・青うめぐいの はらくだし

 ・まっているあいだも ごちそうのうち

 「ねえまだ?」「ねえまだ?」と何度もいう孫に「まっているのも ごちそうのうち」というおばあちゃんと孫の距離がなんともいえない近さ。

 家族のありかたが、かわって おばあちゃんの知恵も 子どもにつたわりにくくなりました。


みんなのくまくまパン

2019年12月08日 | 絵本(日本)

    みんなのくまくまパン/西村敏雄/あかね書房/2015年

 

 くまさんとしろくまさんの「くまくまパン」屋さんに、動物の国の王さまのかばがやってきて、とつぜん今度の日曜日にお城でパンをつくってくれないかというお願い。

 くまさんたちがお城にいってみると、「きげんがわるい王子を とくべつなパンをつくってよろこばせたい」と王さまは いいます。

 ぺったん ぺったん ころっ ころっ

 ぺったん ぺったん きゅっ きゅっ

 作ったのは、おおきなおおきなクリームのパンと ながーい ながーいソーセージのパン。

 ところが、おうじは 「たべたくないよ!」と よろこびません。

 いいにおいをかぎつけて、動物たちが まどから のぞいています。

 くまさんとしろくまさんが、みんなを なかにいれてくれるよう 王さまにいうと、王子によろこんでもらえなかった王さまは みんなを なかに いれてあげます。

 ここからみんなのパンづくり。

 めがねのドーナツ、はなはなパン、じゃんけんパン、カレーが入ったパンのいえ、ハートサンドイッチ、ロケットロール。

 王子の注文はロボットのチョコパン

 王子が「じぶんだけ とくべつなのは いやなんだ。パンもみんなと たべると おいしいでしょ」というと、王さまもにっこり。

 おいしそうなパンがどっさり。思わずよだれが出そう。


ムカッ やきもちやいた

2019年12月07日 | 絵本(日本)

    ムカッ やきもちやいた/かさいまり・さく 小泉るみ子・絵/くもん出版2018年

 

 るいちゃんは、自分の一番仲良しのふうこちゃんが 転校生のあんりちゃんを なにかと世話するのを見てなんだか「ムカッ」。

 放課後、ふうこちゃんが、一緒に帰ろうと誘ってくれても、うしろにあんりちゃんがいたから「ムカッ」として断ってしまいます。うしろをふりかえるとふうこちゃんとあんりちゃんがたのしそうにして、また「ムカッ」。 

 家に帰ると弟のけんたが「ゆうたが おかあさんを とっちゃうんだ」と泣いています。

 「あかちゃんに やきもちやいて どうすんのよ!」と るいちゃんが おこると けんか。

 わたしも けんたと おんなじ。やきもち やいていたんだ と るいちゃんは 気づきます。
 いつもあそばないのに けんたと外で遊ぶと、けんたの気持もかわりました。

 でも、次の日、ふうこちゃんと あんりちゃんが くっついているのをみると また「「ムカッ」。

 それでも、体育のマラソンのとき、るいちゃんが どんどん 前の子をぬいていくと ふうこちゃんの応援の声がきこえてきて・・・。

 ほんとは、るいちゃんも やきもちの原因がわかっていて、どうしたら いいのか わからなかったのでしょう。

 ほかのひとに相談出来たらよかったのですが、一番仲良しの子をとられたというのがあったので困ったのかな?

 あるあると思いながら、読みました。


かまた先生のアリとキリギリス

2019年12月06日 | 紙芝居

 

    かまた先生のアリとキリギリス/鎌田實・脚本 スズキコージ・絵/童心社/2018年

 

 「夏の間、アリたちは冬の食料を蓄えるために働き続け、キリギリスはヴァイオリンを弾き、歌を歌って過ごします。やがて冬が来て、キリギリスは食べ物を探すが見つからず、最後にアリたちに、食べ物を分けてもらおうとしますが、アリは食べ物を分けることを拒否し、キリギリスは飢え死んでしまう。」というのが、イソップ寓話の「アリとキリギリス」。

 一方、キリギリスが飢え死ぬのでは残酷だというので、アリは食べ物を恵みむという改変もされる場合があるといいます。

 この紙芝居では、キリギリスが飢え死ぬことなく、キリギリスのヴァイオリンを一番たのしそうにきいていたアリが、食べ物を提供します。そして、キリギリスは「もっとひろい世界で ぼくのヴァイオリンを きいてもらいた。それが ぼくのゆめ。ときどき かえってきて、きみの 家にあそびにくるよ」と、みなみの国に飛び立ちます。

 自業自得と冷たく切り捨てるのではなく、キリギリスにも夢や希望があり、遊んでいるだけのだらしない存在と決めつけないようにしたとありました。鎌田先生は、まじめに働くことの大切さのほかに、子どもたちが希望を持てるものがあってもいいといいます。

 キリギリスはヴァイオリンを弾くことで、アリたちに元気を与えてくれる存在。芸術の存在意義も考えさせてくれます。


あなのなかには・・・

2019年12月06日 | 絵本(外国)

           あなのなかには・・/レベッカ・コッブ:作・絵 長友恵子・訳/フレーベル館/2016年

 

庭の穴の中に赤いボールがはいちゃって

のぞいても なにもみつからない

ずーっと みても・・・

おかあさんは ネズミの家につながっているかも お父さんはカエルがいっぱいからしれないと。

かいぶつのトロール?リス、ヘビ、ハリネズミ、キツネ?

もしかするとドラゴン

背景の木の葉が 咲いて 散ってと季節がかわっています。

穴の断面図がとっても楽しい。

キツネはサングラス?をかけ、ドラゴンの可愛いこと!

モグラはパズルをといて 片方では編み物をしています。

あれこれ想像する楽しみ。

雨が降ったらどうなるか、余計な心配をしました。


ウエズレーの国

2019年12月05日 | 絵本(外国)

   ウエズレーの国/ポール・フライシュマン・作 ケビン・ホークス・絵 千葉茂樹・訳/あすなろ書房/1999年

 

 お母さんは「あの子ったら、かわいそう。いつもひとりだけ、はみ出してるわ」、お父さんは「たしかに、あの子はういているな」とウエズレーを心配しています。
 この町では 家の形も男の子の髪型も格好もみんな同じ。ピザもコーラもサッカーも、みんなは大好きなのに、ウエズレーは大嫌い。でもウエズレーは人と違うこと、いじめにもくよくよせず、逃げるのが得意。

 両親はウエズレーに今日は何を習ったのと聞いて、お父さんは「今にきっと役に立つさ」とつぶやいて、息子を見守ります。

 夏休みの自由研究に、ウエズレーにひらめいたのは 「自分だけの、作物をそだてる。自分だけの文明を作る!」こと。お父さんの言うとおり! 学校の勉強が役立つときがきました。

 次の日、ウエズレーは庭を耕し、夜になると、強い西風が吹いてきました。「ほら、ぼくのはたけに、たねがとんできた!」と、ウエズレーは耳をすまし、風の音をきいていました。

 五日後最初の芽がでると、となりのおじさんは「その雑草を、さっさとひっこぬいちまいな」といいますが、自分の庭で、だれもみたことのない、あたらしい作物をそだてているんだからとウエズレーは成長を見守ります

 ウエズレーの作物は、いつのまにか、ひざよりも、こしよりも大きくなり、黄色の実がなりました。実は、ももとイチゴとリンゴがまざったようなあまいあじ。

 ウエズレーは毎朝、果物を食べ、自分で発明した「きかい」で、実を絞って一日中ジュースの飲み放題。

 太く育った根っこの先は、大きなイモのようで、はっぱは素敵なかおり。

 茎からとった繊維で帽子をあみ、自分で作った「きかい」で、機を織り、服もつくりました。

 服はかるくてやわらかく、ポケットもたくさんつけて、とても便利。

 よ種からとった油は、さわやかないいにおいがして、はだにぬると日焼けを防いで、いやな虫もよせつけません。

 日時計もつくり、一日を八つに分けて自分だけの時間をきめます。

 ウエズレーは、自分の庭に「ウエンズランデイア」と名づけます。ウエズレーの国「ウエンズランデイア」は自給自足の生活。無駄なものは何一つありません。何から何まで自分でつくるまさに理想の国。

 新しい遊びを考え、高いところに屋根も壁もないへやをつくって、夜空をみあげ、あたらしい星座も作りながら、毎晩、毎晩涼しく過ごします。

 さらに「ウエズレー語」までつくり、じぶんでつくった80個の文字で歴史も書きました。

 9月になって登校するウエズレーのうしろにつづくみんなの恰好がウエンズランデイア風になっているのが気になるおわりです。

 満天の星空のもと、ハンモックで笛を吹いているウエズレーのそばには、たぬき、とかげ、ふくろうなどがさりげなく描かれ、ウエズレーをみているお父さん。お母さんも「あんなしあわそうな顔、はじめてみたわ」と安心したようです。 

 最初の出発点になった作物は、ウエズレーにサルーシュとよばれていますが、これがなければ、「ウエンズランデイア」はできませんでした。

 子どもの創造力と想像力を刺激してくれる絵本でしょうか。


おさじさん

2019年12月04日 | 紙芝居

        おさじさん/松谷みよ子・作 瀬名恵子・絵/童心社/1973年

 

 「おさじさん」はスプーンのこと。

 おさじさんが、いいにおいにさそわれてきました。ウサギさんがおかゆを食べようとしていたので、手伝いをしようとしますが、ウサギさんは自分でする!と突っぱね、おかゆに鼻をつっこんで、やけどしてしまいます。

 おさじさんは「おいしいものをはこぶきしゃぽっぽ」と自己紹介して、うさぎのぼうやのお手伝い。

 おくちのとんねるあーんとあいて、おさじさんは たまごのおかゆを はこびます。

 松谷さんと瀬名さんのコラボの小さい子むけの紙芝居。

 「さじ」という表現もあまり見られなくなりました。

 熱いものを食べるときは、やっぱり「ふうふう」です。