温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

泥湯温泉 奥山旅館 2017年

2018年04月07日 | 秋田県
秋田県湯沢市の泥湯温泉は、山奥の地熱地帯に湧く濁り湯が人気を集める有名な温泉地ですが、硫化水素中毒による被害の発生、旅館の火災、閉鎖、そして雪崩など、災難が相次いでおり、一介の温泉ファンとして、そうした報を知るたびに心を痛めてまいりました。そこで秋田県南部へ足を運んだ某日、久しぶりに泥湯温泉へ立ち寄り、奥山旅館でひとっ風呂浴びることにしました。


 
泥湯温泉の狭いエリア内に櫛比していた木造の建物は、旅館の焼失や廃業によって、数年前の半数近くに減ってしまったようです。久しぶりに現地へ行ってみると、視界が妙に広いことに驚き、この数年で当地が経てきた苦難を想うと、胸が痛くなりました。解体撤去された建物の跡地は更地になり、砂利が敷かれて駐車場として使われていました。


 
泥湯旅館には数年前まで3軒の旅館がありました。「小椋旅館」はそのうちの一軒であり、昨年私が訪れた時にも通常営業を続けているようでした。一方、その手前にあった「豊明館」は廃業し、建物は完全に解体されて更地となり、治山工事の詰所として使われていました。


 
さて、今回の訪問先は泥湯で最も有名な「奥山旅館」です。既にご存知の方も多いかと思いますが、こちらのお宿は2016年に火災のため烏有に帰してしまいました。その後、焼け残った浴舎と露天風呂で日帰り入浴のみの営業を暫定的に再開しています。今年は宿泊棟の着工を目指しているんだそうですが、その完成までは日帰り入浴のみの営業が続くものと思われます。以前私が訪れた時には、昭和の風情を色濃く残す昔ながらの食堂で昼食をいただいたのですが、先日伺った時にはその食堂は無く、その代わりに小洒落たカフェがお店を開いていました。



【チケット】
路地に面した仮設の受付小屋で湯銭を支払うと、黄色く細長いチケットが手渡されました。入浴の想い出になりますね。湯銭は500円。これで「天狗の湯」と「露天風呂」の2つのお風呂を利用できます。まずは「天狗の湯」へ行ってみましょう。

※お風呂は撮影不可なので、以下外観のみ画像で取り上げ、内部に関しては文章でお伝えします。悪しからずご了承ください。館内の様子をご覧になりたい場合は、公式サイトをご覧ください。



宿名を記した立派な看板の前に不老不死の銘水が落ちる「天狗の湯」。山間の秘湯にふさわしい、総木造の風情ある佇まいです。浴舎の中は薄暗いのですが、却ってそれが落ち着いた雰囲気を生み出しているようでした。
棚だけしかないシンプルな脱衣室を抜けると男女別の内湯です。室内には浴槽がひとつ、そしてL字型にシャワー付きカランが5基設置されています。泥湯という名前の通り、温泉には湯泥が多く含まれており、内湯の湯船も湯泥でグレーに濁っていました。濁り湯というものは、日本人が持つ温泉情緒と見事に合いますね。

内湯からドアを開けると露天風呂です。屋外で女湯側と合流するので混浴です。露天風呂には屋根掛けされた浴槽が段違いに2つ設けられており、下段は適温、上段はかなり熱めのお湯が張られていました。熱いとはいえ、山の水がホースから常時出ているので、もし入れなければ水で適宜薄めれば良いでしょう。露天風呂のお湯は、はじめは透明度が高かったものの、私が湯船に入ると沈殿していた湯泥が舞い上がり、一気に濃いグレーへと濁りました。お湯からは酸っぱい味と匂いが感じられるほか、硫化水素臭もはっきりと嗅ぎ取ることができました。なお、味覚は酸っぱいのですが、口が収斂するほどではなく、マイルドな酸っぱさであったように記憶しています。



つづいて「露天風呂」へ。上述の「天狗の湯」の露天風呂は内湯に付帯しているものでしたが、こちらの離れの露天風呂は、まさに露天風呂だけでお客さんを感動させてくれる、大きくて開放的なお風呂です。また「天狗の湯」の露天は混浴でしたが、こちらは男女別ですから、混浴が苦手な方でもこちらなら気兼ねなく露天を楽しめます。
脱衣小屋を経てお風呂へ出ると、俄然視界が開け、あたかもプールのように広い浴槽が白濁したお湯を湛えていました。男女の仕切り塀に庇がついているものの、一部にとどまっているため、非常に開放的です。浴槽の底面は砂利敷きですが、底には湯泥が沈殿しているため、私が湯船に入るとしっかり灰白色に濁ってくれましたが、さすがに広いだけあり、濁ったのは私が入った周辺だけ。そこから離れると透明度を保ったままの状態でした。
この「露天風呂」は「天狗の湯」と別源泉のお湯が引かれており、濁りの程度が幾分淡い他、酸味などの味や匂いも若干薄いように感じられました。源泉温度が90℃近いため、温度調整のための加水が多く、その影響で薄まってしまっているのかもしれませんが、成分そのものも103mgしかないので、そもそもが薄いお湯なのでしょうね。とはいえ、湯加減は実に素晴らしく、いつまでも浸かっていたくなるような極上湯でした。

たとえ宿が焼けてしまっても、泥湯の名前は天下に轟く。甍は灰燼と化しても記憶は旅人の心に残り続ける。私が訪れたのは平日の日中でしたが、それでも遠方地のナンバープレートをつけた車が複数台やってきて、皆さん湯あみを楽しんでいらっしゃいました。再建には並々ならぬご苦労があるかと存じますが、是非ともまた宿泊できる日がやってくることを願ってやみません。


(天狗の湯)
天狗の湯源泉
酸性-鉄(2)-硫酸塩温泉
67.5℃ pH2.48 蒸発残留物1170mg,
H+:3.33mg(42.31mval%), Al+++:7.1mg(10.13mval%), Fe++:50.1mg(22.95mval%),
Cl-:5.0mg, SO4--:351.3mg(92.77mval%), HS-:39.1mg(5.08mval%),
(平成16年5月18日)
加水あり(源泉温度が高いため)、加温循環消毒なし

(露天風呂)
新湯
単純温泉 88.3℃ pH3.8 溶存物質86.4mg/kg 成分総計103.3mg/kg
H+:0.15mg, Na+:4.5mg, Ca++:6.4mg, Al+++:0.3mg, Fe++&Fe+++:0.4mg,
Cl-:2.3mg, HS-:0.2mg, SO4--:35.9mg,
H2SiO3:33.9mg, CO2:16.2mg, H2S:0.7mg,
(平成20年1月9日)
加水あり(源泉温度が高いため)、加温循環消毒なし

秋田県湯沢市高松泥湯沢25  地図
0183-79-3021
ホームページ

11月中旬から翌年4月下旬まで冬季休業
10:00~17:00(受付16:30終了)、休業日あり
暫くは日帰り入浴のみ
500円
「天狗の湯」のみシャンプー類あり、ドライヤー・ロッカー見当たらず

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする