半年前の冬の某日、野湯系を好む温泉ファンの間では名の知られた存在である、和歌山県串本町の湯の谷温泉へ行ってみました。国道42号から県道227号線へ入り、道なりに進んで串本町佐部集落を東から西へ抜けると、画像右(下)のような分岐点があるので、ここで県道から橋をわたって路地へと進みます。
橋を渡った先には養魚場跡と思しき施設の廃墟が寂しい姿を晒しているのですが、その奥へ進んでゆくと、左手に駐車場のような空き地が広がりはじめます。
道路と空き地の間には側溝が流れているのですが、それを跨ぐようにボロボロなポリバスが一つ置かれており、太いホースからポリバスめがけて、大量のお湯がドッバドバ放出されていました。これこそ、一部の温泉マニアの方にはお馴染みの、湯の谷温泉ポリバスの湯であります。
ポリバスは昔の公団住宅に設置されていたような小さな容量のものであり、ホースから注がれるお湯の量が圧倒的に多いため、槽内のお湯は1分もしないうちに全て入れ替わってしまっているのではないでしょうか。圧巻の湯量に興奮しながら温度計を突っ込んでみますと、28.0℃と表示されました。間違いなく湧出地ではこれより高い温度でしょうから、温泉法で規定されている条件をクリアしている立派な温泉ですね。無色澄明のお湯からはタマゴ臭とタマゴ味がはっきりと感じられ、ほろ苦さも含まれていました。
野湯マニアの皆さんはここで入浴なさっているようですが、この日の気温は10℃前後でして、そんな寒い屋外で30℃以下のぬる湯に入ったら風邪をひいちゃうこと必至です。そして、このポリバスは水路の上を跨ぐように敷かれた薄い鉄板の上に据え置かれており、ただでさえバスタブに満杯のお湯で結構な荷重がその鉄板にかかっているのに、そこへ更に私が入ったら、鉄板が負荷に耐え切れるかという不安も覚え、はじめのうちは見学だけにとどめておくつもりでした。綺麗なお湯が大量投入されているとはいえ、雨曝しの状態ですからバスタブの底は決して綺麗とは言えない状態ですし。
でも、ここまで来たのに入らないのは勿体無い。周囲には人目も無いので、絶好の入浴チャンスでもあります。試しにバスタブに体重をかけてみたら、落ちることは無さそうでしたので、意を決して…
ぬるさと寒さをグッと怺えて入浴しちゃいました。タマゴ臭を漂わせるお湯に浸かると、全身に気泡が付着し、ツルッツルスベスベの滑らかな浴感に包まれたのですが、一度入ると寒さのために出られなくなり、湯船から上がると全身に鳥肌が立って、ブルブル震えながら慌てて全身を拭って服を着込んだのでした。私のように冬に入浴することはおすすめできませんが、夏に入るとさぞかし爽快でしょうね。
続いて、ポリバスへお湯を注いでいるホースが伸びる方へ歩き、源泉を辿ってみることにしました。立て札によればこの辺りにはホタルが棲息しているみたいですね。
やがて木造の掘っ立て小屋が目に入ってきました。これって倉庫? いやいや、ホースはここつながっており、小屋の右側から白いものが流れ出ているではありませんか。これが湯の谷温泉のポリバスへお湯を供給している源泉なのでしょう。
小屋へ近づいてみると、小屋の内側から溢れ出たお湯によって夥しい湯の華が発生し、辺りを乳白色に覆い尽くしていたのでした。源泉における湧出量は非常に多く、あのホースの先から吐出されていたのはその一部に過ぎなかったようです。
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ですよね。私も自分の奇行には呆れます(笑)。「旅は恥のかき捨て」という言葉そのものですね。反省です。
ポリバスの湯、転じてステンレスバスの湯。
今年7月に念願の入浴を果たしてまいりました。
すこぶる気持ちの良い湯浴みでした。
間違いなく国内トップレベルの硫黄泉だと確信いたしたした。
ところが、グーグルマップにも掲載されていたこちらの湯。
本日改めて検索したところ、なんと「閉業」の赤字が付されており、「もうない」(4週間前)と誰かのコメントが一件だけ寄せられてました。
念の為、検索せずに現地地図だけ拡大してみたのですが、先日まであった「ステンレスの湯」の表示が消えてなくなってました。
詳しい状況は分かりませんが、貴重な極上湯がまた一つ逝ってしまわれたようです。
至極残念。近くに行くことがあれば確認してきます。
それにしても、最後に入れて良かったです。
遂に入浴を果たされたとのことで、紀州の果てへの遠征、お疲れ様でした。現在では撤去されてしまったのですか。残念です。ギリギリのところで入浴できたのですね。
私のような者がブログに取り上げることによって、訪問者が増えてしまい、結果的に撤去など残念な方向へ向かってしまうことがあるので、当地に関しても、紹介した一人として複雑な心境です。
浴槽は健在でした。というか、浴槽増えてました。
昨年入浴したステンレス浴槽の隣に家庭用バスタブが新設されてました。昔あったポリバスとは異なる形状です。2つの浴槽が並んで用水路の上に置かれた状態です。
ホースからステンレス側に給湯され、浴槽縁からバスタブ側に流れ込んでました。
バスタブに入浴しました。玉子味玉子臭、泡付き体感、夏場のぬるい湯、すべてが最高でした。
グーグルマップ上からは完全に消去されてしまったこちらのお湯。宿泊施設「あらふね」がある限りしばらくは大丈夫でしょう。今後も野辺の湯としてあり続けてほしい浴槽です。
2年連続の訪問とはすごいですね。今みたいに暑い時期にこの鉱泉に入ると、最高に気持ち良いでしょうね。しかもバスタブが増えているとは! 嬉しい情報をありがとうございます。