COVID-19が世界全体を暗く覆う2020年ですが、そんな暗闇に光明をもたらすかの如く、栃木県では昨年から希望の新星と称すべき良質な温泉施設が相次いで開業しました。拙ブログでもそうした新星を2つ、具体的には「東山道那須温泉」と「高原火山水街道 自噴 松ヶ峰温泉」をご紹介しております。
今回取り上げるのもそんな栃木の新星。今年(2020年)10月に開業したばかりの期待の新人ならぬ新湯「那須塩原駅前温泉」です。この温泉は「YOOMI'S至福温泉日記」のYOOMIさんがご紹介なさってから、たちまち温泉ファンの間に評判が広まり、まだ開業から数ヶ月だというのに既に他県からのお客様が次々といらっしゃっているそうです。かく言う私もそんな一人。結論から申し上げますと、まさか那須野が原でこんな個性的な良泉に出会えるとは想像だにできず、心から感動してしまいました。まさにYOOMIさんの値千金大金星と言えましょう。
駅前と称しているものの、実際には那須塩原の駅から3km近く離れているため、私は車で現地へ向かうことにしました。もし公共交通機関で現地へ行く場合、那須塩原駅からゆーバス(黒磯線)に乗り、唐杉東バス停から徒歩600メートルほどです。
那須塩原駅の西口から伸びる通り(県道53号線)には上画像のような「白河井戸ボーリング 那須営業所」の大きな看板が立っていますので、これが目印になります。とはいえ、この看板だけですと、果たして当地に温泉浴場があるのかわかりませんが・・・
大きな看板の下には、温泉マークと一緒に施設名が記された小さな看板も立てられていますので、これでようやく温泉の存在を確認することができますね。
敷地内にはいくつかの建物があり、中でも道路に面して建つログハウスが目立っているのですが、温泉浴場があるのはその奥にある平屋のシンプルな建物。屋根の湯気抜きに小さく温泉マークが描かれています。
玄関入ってすぐのところに設置されている券売機で支払い、券をカウンターの人に渡します。なお下駄箱の鍵は退館時まで自分で管理します。お風呂は2室あり、片方にはサウナが併設されていて、もう一方にはありません。この2室を曜日により男女を入れ替えています。私が訪ねた土曜日は、サウナが無い右側の浴室に男湯の暖簾がかかっていました。脱衣室も至ってシンプルながら、100円リターン式ロッカーのほか、1台のユニット型洗面台、そしてエアコンも設置され、使い勝手も十分満足できます。
さすがに開業したばかりですから、浴室内部はとても綺麗でどこもかしこもピカピカ。大きな窓から陽光が降り注ぎ、明るい環境で湯あみを楽しめます。さて脱衣室で着替えてこの浴室に入った瞬間、私は感動してしまいました。と言うのも、室内に硫黄の存在を誇示するかのような鉱物油臭が漂っており、その芳香が私の鼻孔を突いてきたのです。良泉との邂逅を期待させる香りを胸いっぱい吸い込んだ私は、お湯を浴びる前から既に興奮してしまいました。
なお浴室内にはシャワー付きカランが3基並んでおり、カランからはボイラーの沸かし湯が吐出されます。
浴槽の大きさは目測で1.2×3メートルほど。一般的なタイル張りの浴槽ですが、縁には木材が用いられ、見た目のみならず実際の感触でも優しさや柔らかさをもたらしています。一方、浴槽自体は今時珍しい深めの造りで、肩までしっかりお湯に浸かることができます。後述するようにこの温泉は元々オーナーさんの自家用目的だったため、私の勝手な想像ですが、おそらくこの深い湯船はオーナーさんの好みではないかと思われます。近年はバリアフリー等の理由で湯船を浅くつくるのが一般的ですが、私個人としては入り応えのある深い湯船が好きなので、お湯の質だけでなく、この湯船の構造自体も気に入りました。
お湯は上画像に写っている木組みの湯口の他、浴槽内でも投入されており、以て湯温の均衡が図られているようです。まだ開業して間もないのに、湯口まわりには白い湯の華が付着し、お湯の流れに身を任せながらユラユラと揺れていました。
内湯のお湯は緑色を帯びつつ白く濁っており、湯口に付着しているような白い湯の華の他、上画像のような黒い湯の華もチラホラと舞っていました。なお湯使いは完全かけ流し。湯尻から惜しげもなくお湯が排出されています。この日の内湯はちょっと熱めの43℃でした。
内湯のドアから屋外に出て壁伝いに歩くと露天風呂に行き当たります。プールサイドならぬバスサイドにはデッキチェアが3つあるので、お風呂に逆上せたらここでクールダウンが可能。露天の周囲は工事現場で用いられるような鉄板で目隠しされているため、正直なところ殺風景なのですが、これまたオーナーさんのご趣味なのか、壁には緑鮮やかなゴルフ場の写真が飾られており、お湯の自然な美しい緑色と競うかのように二つの翠が相対峙していました。
浴槽は扇のような形状で、深さは何と1.05メートルもあります。まるでプールのような深さであり、専ら立ち湯専用ですが、それゆえ子供一人での利用を禁じています。なお内湯はちょっと熱めの43℃でしたが、この露天は長湯したくなる41℃前後で、実に入りやすい湯加減でした。内湯同様、湯口のほか、浴槽内からも温泉が投入されています。深く、しかも外気に晒される露天は、なおさら温度均衡の工夫が求められますので、浴槽内部からの投入は必須ですね。
一方、内湯は白く濁っていましたが、露天はエメラルドグリーンでほぼ透明。若干濁りあるものの、底が見える透明度がありました。同じ源泉でありながら、浴槽の環境が異なると見た目がかなり違ってくるのですね。
それにしてもこの露天のお湯は美しい緑色を呈しています。新潟の月岡温泉、青森の新屋温泉、岩手の国見温泉、長野の熊の湯温泉など、全国には美しい緑色の温泉が点在していますが、そうした名湯と比肩できる美しさです。湯口から吐出されるお湯を口に含んでみますと、しょっぱさ、喉の粘膜にひっかかるような苦み、出汁味、たまご味、ゴムみたいな硫黄感、ふんわりとした鉱物油臭、焦げたような臭いなど、実に多種多様な知覚的特徴を確認することができました。一度にこれだけの味や匂いを感じ取ることができる温泉は珍しいのではないでしょうか。しかも山間部ではなく那須野が原で湧出しているところが驚きです。
お風呂上がりに、番台で店番をしていた会長さんにお話を伺いました。曰く、この温泉は故蔵田延男博士の指導のもとで福島県西郷村のボーリング掘削会社が掘り当て、その会社の会長さんが自家用として使おうとしていたようです。東日本大震災の2年前には既に源泉掘削していたものの、震災により水道用井戸掘削工事が増えると温泉どころではなくなり、しばらく手付かずのまま数年が経過。やがて良質な温泉を自家用ではなく一般にも提供しようということで、当初の倍の大きさを擁する施設を建て、ようやく開業に至ったんだそうです。
この温泉は厳冬期ですら源泉温度が70℃以上あり、そのまま湯船へ投入してしまうと熱すぎるため、揚湯量を絞り、50℃を超える程度で貯湯タンクに一旦ストック。そこから内湯や露天へ少しずつ流しているとのこと。なお私の訪問時に露天風呂の透明度が高かったのは、会長さん曰く「掃除したばかりだから」とのことで、やがて露天も内湯のように白く濁ってゆくと仰っていました。
とにもかくにも非常に素晴らしい温泉です。繰り返しますが、山間部ではなく平野部でこのような個性的な温泉に出逢えることに感動してしまいました。那須野が原は温泉天国ですね。私の屁理屈なんてどうでも良いので、まずは温泉ファンの方々にこの良さを実感していただきたい。いまはCOVID-19の感染拡大で思うように外出できませんが、ある程度外出しても差し支えないような状態になりましたら、是非足を運んでみてください。
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 72.1℃ pH7.9 溶存物質5.840g/kg 成分総計5.842g/kg
Na+:1477.3mg(68.10mval%), Ca++:591.3mg(31.27mval%),
Cl-:2743.6mg(82.58mval%), Br-:6.2mg, HS-:0.3mg, SO4--:691.0mg(15.35mval%), HCO3-:99.5mg,
H2SiO3:73.6mg, HBO2:130.2mg,
(2019年1月17日)
加温加水循環消毒なし
栃木県那須塩原市唐杉41−5
0287-65-1126
10:00~21:00(受付20:00終了) 第三火曜定休
1000円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
今回取り上げるのもそんな栃木の新星。今年(2020年)10月に開業したばかりの期待の新人ならぬ新湯「那須塩原駅前温泉」です。この温泉は「YOOMI'S至福温泉日記」のYOOMIさんがご紹介なさってから、たちまち温泉ファンの間に評判が広まり、まだ開業から数ヶ月だというのに既に他県からのお客様が次々といらっしゃっているそうです。かく言う私もそんな一人。結論から申し上げますと、まさか那須野が原でこんな個性的な良泉に出会えるとは想像だにできず、心から感動してしまいました。まさにYOOMIさんの値千金大金星と言えましょう。
駅前と称しているものの、実際には那須塩原の駅から3km近く離れているため、私は車で現地へ向かうことにしました。もし公共交通機関で現地へ行く場合、那須塩原駅からゆーバス(黒磯線)に乗り、唐杉東バス停から徒歩600メートルほどです。
那須塩原駅の西口から伸びる通り(県道53号線)には上画像のような「白河井戸ボーリング 那須営業所」の大きな看板が立っていますので、これが目印になります。とはいえ、この看板だけですと、果たして当地に温泉浴場があるのかわかりませんが・・・
大きな看板の下には、温泉マークと一緒に施設名が記された小さな看板も立てられていますので、これでようやく温泉の存在を確認することができますね。
敷地内にはいくつかの建物があり、中でも道路に面して建つログハウスが目立っているのですが、温泉浴場があるのはその奥にある平屋のシンプルな建物。屋根の湯気抜きに小さく温泉マークが描かれています。
玄関入ってすぐのところに設置されている券売機で支払い、券をカウンターの人に渡します。なお下駄箱の鍵は退館時まで自分で管理します。お風呂は2室あり、片方にはサウナが併設されていて、もう一方にはありません。この2室を曜日により男女を入れ替えています。私が訪ねた土曜日は、サウナが無い右側の浴室に男湯の暖簾がかかっていました。脱衣室も至ってシンプルながら、100円リターン式ロッカーのほか、1台のユニット型洗面台、そしてエアコンも設置され、使い勝手も十分満足できます。
さすがに開業したばかりですから、浴室内部はとても綺麗でどこもかしこもピカピカ。大きな窓から陽光が降り注ぎ、明るい環境で湯あみを楽しめます。さて脱衣室で着替えてこの浴室に入った瞬間、私は感動してしまいました。と言うのも、室内に硫黄の存在を誇示するかのような鉱物油臭が漂っており、その芳香が私の鼻孔を突いてきたのです。良泉との邂逅を期待させる香りを胸いっぱい吸い込んだ私は、お湯を浴びる前から既に興奮してしまいました。
なお浴室内にはシャワー付きカランが3基並んでおり、カランからはボイラーの沸かし湯が吐出されます。
浴槽の大きさは目測で1.2×3メートルほど。一般的なタイル張りの浴槽ですが、縁には木材が用いられ、見た目のみならず実際の感触でも優しさや柔らかさをもたらしています。一方、浴槽自体は今時珍しい深めの造りで、肩までしっかりお湯に浸かることができます。後述するようにこの温泉は元々オーナーさんの自家用目的だったため、私の勝手な想像ですが、おそらくこの深い湯船はオーナーさんの好みではないかと思われます。近年はバリアフリー等の理由で湯船を浅くつくるのが一般的ですが、私個人としては入り応えのある深い湯船が好きなので、お湯の質だけでなく、この湯船の構造自体も気に入りました。
お湯は上画像に写っている木組みの湯口の他、浴槽内でも投入されており、以て湯温の均衡が図られているようです。まだ開業して間もないのに、湯口まわりには白い湯の華が付着し、お湯の流れに身を任せながらユラユラと揺れていました。
内湯のお湯は緑色を帯びつつ白く濁っており、湯口に付着しているような白い湯の華の他、上画像のような黒い湯の華もチラホラと舞っていました。なお湯使いは完全かけ流し。湯尻から惜しげもなくお湯が排出されています。この日の内湯はちょっと熱めの43℃でした。
内湯のドアから屋外に出て壁伝いに歩くと露天風呂に行き当たります。プールサイドならぬバスサイドにはデッキチェアが3つあるので、お風呂に逆上せたらここでクールダウンが可能。露天の周囲は工事現場で用いられるような鉄板で目隠しされているため、正直なところ殺風景なのですが、これまたオーナーさんのご趣味なのか、壁には緑鮮やかなゴルフ場の写真が飾られており、お湯の自然な美しい緑色と競うかのように二つの翠が相対峙していました。
浴槽は扇のような形状で、深さは何と1.05メートルもあります。まるでプールのような深さであり、専ら立ち湯専用ですが、それゆえ子供一人での利用を禁じています。なお内湯はちょっと熱めの43℃でしたが、この露天は長湯したくなる41℃前後で、実に入りやすい湯加減でした。内湯同様、湯口のほか、浴槽内からも温泉が投入されています。深く、しかも外気に晒される露天は、なおさら温度均衡の工夫が求められますので、浴槽内部からの投入は必須ですね。
一方、内湯は白く濁っていましたが、露天はエメラルドグリーンでほぼ透明。若干濁りあるものの、底が見える透明度がありました。同じ源泉でありながら、浴槽の環境が異なると見た目がかなり違ってくるのですね。
それにしてもこの露天のお湯は美しい緑色を呈しています。新潟の月岡温泉、青森の新屋温泉、岩手の国見温泉、長野の熊の湯温泉など、全国には美しい緑色の温泉が点在していますが、そうした名湯と比肩できる美しさです。湯口から吐出されるお湯を口に含んでみますと、しょっぱさ、喉の粘膜にひっかかるような苦み、出汁味、たまご味、ゴムみたいな硫黄感、ふんわりとした鉱物油臭、焦げたような臭いなど、実に多種多様な知覚的特徴を確認することができました。一度にこれだけの味や匂いを感じ取ることができる温泉は珍しいのではないでしょうか。しかも山間部ではなく那須野が原で湧出しているところが驚きです。
お風呂上がりに、番台で店番をしていた会長さんにお話を伺いました。曰く、この温泉は故蔵田延男博士の指導のもとで福島県西郷村のボーリング掘削会社が掘り当て、その会社の会長さんが自家用として使おうとしていたようです。東日本大震災の2年前には既に源泉掘削していたものの、震災により水道用井戸掘削工事が増えると温泉どころではなくなり、しばらく手付かずのまま数年が経過。やがて良質な温泉を自家用ではなく一般にも提供しようということで、当初の倍の大きさを擁する施設を建て、ようやく開業に至ったんだそうです。
この温泉は厳冬期ですら源泉温度が70℃以上あり、そのまま湯船へ投入してしまうと熱すぎるため、揚湯量を絞り、50℃を超える程度で貯湯タンクに一旦ストック。そこから内湯や露天へ少しずつ流しているとのこと。なお私の訪問時に露天風呂の透明度が高かったのは、会長さん曰く「掃除したばかりだから」とのことで、やがて露天も内湯のように白く濁ってゆくと仰っていました。
とにもかくにも非常に素晴らしい温泉です。繰り返しますが、山間部ではなく平野部でこのような個性的な温泉に出逢えることに感動してしまいました。那須野が原は温泉天国ですね。私の屁理屈なんてどうでも良いので、まずは温泉ファンの方々にこの良さを実感していただきたい。いまはCOVID-19の感染拡大で思うように外出できませんが、ある程度外出しても差し支えないような状態になりましたら、是非足を運んでみてください。
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 72.1℃ pH7.9 溶存物質5.840g/kg 成分総計5.842g/kg
Na+:1477.3mg(68.10mval%), Ca++:591.3mg(31.27mval%),
Cl-:2743.6mg(82.58mval%), Br-:6.2mg, HS-:0.3mg, SO4--:691.0mg(15.35mval%), HCO3-:99.5mg,
H2SiO3:73.6mg, HBO2:130.2mg,
(2019年1月17日)
加温加水循環消毒なし
栃木県那須塩原市唐杉41−5
0287-65-1126
10:00~21:00(受付20:00終了) 第三火曜定休
1000円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★