前回記事(旅館すがわら その2 「美肌の湯」)の続編です。
「旅館すがわら」には4つの貸切風呂があり、空いていれば予約不要でいつでも利用可能ですので、宿泊中に私は調子に乗ってその全てを利用することにしました。
4つの貸切風呂はバラバラにあるのではなく、1階のフロント裏手に完全内湯タイプの個室が2室ずつ、そして2階を山側へ上がった奥にある「摩天の湯」の手前に半露天タイプの個室が2室ずつ、それぞれ隣り合っています。まずは1階の貸切風呂から行ってみましょう。
●1階貸切内湯
1階のフロント裏手にまわって、バックヤードのような細い通路を進むと、厨房や事務室の前を通り抜けた先に、こじんまりとした個室風呂が2室ありました。出入口が左右に並んでいますので、まずは右側から入ってみることにしましょう。
(1)右側
室内に誰もいないことを確認してから、ドアに掛かっている「空」の札を裏返してから入室します。脱衣室は狭いながらも、扇風機やドライヤーなどの備品は揃っており、綺麗に維持されているので、使い勝手に問題ありません。
コンパクトな浴室内はアイボリー色に塗装されたモルタルで、一般家庭のお風呂をひと回り大きくした程度の空間ですが、足元や浴槽などは切り出したと思しき石材が用いられており、こぢんまりとしていながらも、そこはかとない重厚感が温泉風情を醸し出しています。洗い場にはシャワーが1つ取り付けられており、単調になりがちなお風呂にアクセントを加えるべく、シャワーの上には稲妻模様が施されていました。
石の重厚感が伝わる湯船は2人サイズ。竹筒からお湯がチョロチョロと注がれており、かけ流しの湯使いです。このお風呂を含め、4つの個室風呂は大浴場と同じく「摩天の湯B」源泉を使用しており、湯船のお湯は青みを帯びながら貝汁のような淡い濁りを呈していました。
(2)左側
続いて左側の浴室へ。脱衣室は右側浴室の倍近い広さがあり、スペースを活かして、ベビーベッドが設置されていました。小さな子供連れでも安心ですね。
脱衣室同様、浴室も右側の倍近い広さがあり、中小規模のお宿だったら「大浴場」として扱われるような立派なお風呂です。右側は重厚感のある石材が印象的でしたが、こちらの浴室は黒い石板張りが採用されており、壁と床がはっきりとしたコントラストを描くことによって、落ち着きのある空間が生み出されていました。
洗い場にはシャワー付きカランのほか、お湯と水道の単水栓もあり、2人で同時に体を洗えるようになっています。
手前側が曲線を描く浴槽は3~4人入れそうなサイズがあり、やや深めの造りなので入り応えがあります。竹筒の湯口から熱々の温泉がチョロチョロと注がれており、そのお湯の見た目は右側浴室と同様で、浴槽の湯面ライン上には温泉成分の析出が庇状にこびりついていました。もちろん、湯船に浸かるとツルツルスベスベの滑らかな浴感が楽しめます。なお、湯船の表面がかなり熱くなっていることがありますので。入浴する前にはよくかき混ぜておくと良いでしょう。
●半露天貸切風呂
2階の通路を進んだ先にある「摩天の湯」の手前左側に半露天風呂の貸切風呂が2室あり、こちらも左右に分かれていますので、まずは右側から入ってみることにしました。
(1)右側
ドアに掛かっている札を「空いてます」から「入浴中」へ裏返して入室します。
木目で統一されている渋い佇まいの脱衣室には、余裕ある空間を活かしてベビーベッドが置かれていました。1階の貸切風呂でも見られましたが、こちらのお宿では子供連れのお客さんにも湯浴みを楽しんでもらうような配慮がなされているんですね。
浴室へ入ると「なるほど、半露天ね」と思わずその表現に頷いてしまうような造りになっていました。そもそもは内湯として設計されたのかもしれませんが、窓の下半分を取っ払っており、その部分だけ吹き晒しのような感じになっていました。開放感には欠けるかもしれませんが、雨や雪の日でしたら、むしろこうした造りの方が良いかもしれませんね。
壁はモルタル塗りですが下半分は石積みになっており、和の趣きが感じられます。洗い場にはシャワー付きカランが1つ設けられていました。
窓ガラスがない吹き抜けの先には坪庭のようになっており、石灯籠の上から風がそよそよと入り込んできます。
四角い浴槽は1~2人サイズ。配管からチョロチョロと熱々のお湯が注がれており、他のお風呂と同じく「摩天の湯B」源泉を引いているにもかかわらず、湯船のお湯は透明度が高く、しかもほんのり赤みを帯びているように見えました。湯使いやロケーションなどによって、色合いや見え方がかなり変わってくる源泉なんですね。
(2)左側
続いて左側の浴室へ。こちらでもドアの札を「入浴中」に裏返してから入室します。
こちらの脱衣室にベビーベッドはないものの、洗面台・扇風機・ドライヤーなどが揃っており、使い勝手良好です。
浴室の大きさは右側浴室より若干小さいのですが、こちらには右側浴室のようなガラス窓の仕切りが一切ありませんので、室内空間を小ささを補うに十分な爽やかさと明るさが確保されていました。屋外側には江合川の対岸に広がる山々の緑を借景にした坪庭が設えられており、露天風呂らしい開放感が得られます。
洗い場にはシャワー付きカランが1つ取り付けられています。右側浴室の壁はモルタル塗りと石積みが併用されていましたが、こちらの壁は昭和のモダニズムを連想させるような全面タイル張りの誂えになっており、その一部には白砂青松の海岸と富士山を描いたと思しきタイル絵が埋め込まれていました。
他のお風呂と同じく源泉温度が熱いためにお湯の投入はチョロチョロ程度に絞られていますが、こちらでお湯を注ぐ水栓やその周りには、まるで白化したサンゴのように温泉成分の析出がビッシリとこびりついており、お湯が溢れ出る洗い場の床も部分的に白く覆われていました。このお風呂では外気が直に触れるため、酸化や冷却が進みやすいのかもしれませんね。他浴室の湯船では表面が熱くなっていることが多く、必ず入浴前に一旦お湯をかき混ぜてから湯浴みしたのですが、こちらでは逆に若干ぬるくなっていたので、かき混ぜ不要で入浴することができました。
多種多様なお風呂に入れるこちらのお宿では、私のように全部制覇するのもよし、自分の好みにマッチしたお風呂を見つけそこで集中的に楽しむのもよし、いろんな方法でお風呂巡りを楽しむことができるかと思います。お風呂のみならず、アットホームで且つさりげない心配りが嬉しい応対、より取り見取りの美味しい料理など、すべてにおいて泊まって良かったと実感しました。
摩天の湯B
ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 98.4℃ pH8.7 蒸気泉のため湧出量測定不可(掘削自噴) 溶存物質2803.3mg/kg 成分総計2803.2mg/kg
Na+:733.0mg(95.31mval%), Ca++:15.4mg,
Cl-:355.3mg(30.56mval%), SO4--:952.5mg(60.48mval%), HCO3-:66.4mg, CO3--:50.3mg,
H2SiO3:498.6mg, HBO2:99.1mg,
(平成20年7月18日)
JR陸羽東線・鳴子温泉駅より徒歩10分弱(800m)、もしくは仙台から鳴子行き高速バス(ミヤコーバス)で終点(車湯)下車。
宮城県大崎市鳴子温泉新屋敷5 地図
0229-83-2022
ホームページ
日帰り入浴10:30~14:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
「旅館すがわら」には4つの貸切風呂があり、空いていれば予約不要でいつでも利用可能ですので、宿泊中に私は調子に乗ってその全てを利用することにしました。
4つの貸切風呂はバラバラにあるのではなく、1階のフロント裏手に完全内湯タイプの個室が2室ずつ、そして2階を山側へ上がった奥にある「摩天の湯」の手前に半露天タイプの個室が2室ずつ、それぞれ隣り合っています。まずは1階の貸切風呂から行ってみましょう。
●1階貸切内湯
1階のフロント裏手にまわって、バックヤードのような細い通路を進むと、厨房や事務室の前を通り抜けた先に、こじんまりとした個室風呂が2室ありました。出入口が左右に並んでいますので、まずは右側から入ってみることにしましょう。
(1)右側
室内に誰もいないことを確認してから、ドアに掛かっている「空」の札を裏返してから入室します。脱衣室は狭いながらも、扇風機やドライヤーなどの備品は揃っており、綺麗に維持されているので、使い勝手に問題ありません。
コンパクトな浴室内はアイボリー色に塗装されたモルタルで、一般家庭のお風呂をひと回り大きくした程度の空間ですが、足元や浴槽などは切り出したと思しき石材が用いられており、こぢんまりとしていながらも、そこはかとない重厚感が温泉風情を醸し出しています。洗い場にはシャワーが1つ取り付けられており、単調になりがちなお風呂にアクセントを加えるべく、シャワーの上には稲妻模様が施されていました。
石の重厚感が伝わる湯船は2人サイズ。竹筒からお湯がチョロチョロと注がれており、かけ流しの湯使いです。このお風呂を含め、4つの個室風呂は大浴場と同じく「摩天の湯B」源泉を使用しており、湯船のお湯は青みを帯びながら貝汁のような淡い濁りを呈していました。
(2)左側
続いて左側の浴室へ。脱衣室は右側浴室の倍近い広さがあり、スペースを活かして、ベビーベッドが設置されていました。小さな子供連れでも安心ですね。
脱衣室同様、浴室も右側の倍近い広さがあり、中小規模のお宿だったら「大浴場」として扱われるような立派なお風呂です。右側は重厚感のある石材が印象的でしたが、こちらの浴室は黒い石板張りが採用されており、壁と床がはっきりとしたコントラストを描くことによって、落ち着きのある空間が生み出されていました。
洗い場にはシャワー付きカランのほか、お湯と水道の単水栓もあり、2人で同時に体を洗えるようになっています。
手前側が曲線を描く浴槽は3~4人入れそうなサイズがあり、やや深めの造りなので入り応えがあります。竹筒の湯口から熱々の温泉がチョロチョロと注がれており、そのお湯の見た目は右側浴室と同様で、浴槽の湯面ライン上には温泉成分の析出が庇状にこびりついていました。もちろん、湯船に浸かるとツルツルスベスベの滑らかな浴感が楽しめます。なお、湯船の表面がかなり熱くなっていることがありますので。入浴する前にはよくかき混ぜておくと良いでしょう。
●半露天貸切風呂
2階の通路を進んだ先にある「摩天の湯」の手前左側に半露天風呂の貸切風呂が2室あり、こちらも左右に分かれていますので、まずは右側から入ってみることにしました。
(1)右側
ドアに掛かっている札を「空いてます」から「入浴中」へ裏返して入室します。
木目で統一されている渋い佇まいの脱衣室には、余裕ある空間を活かしてベビーベッドが置かれていました。1階の貸切風呂でも見られましたが、こちらのお宿では子供連れのお客さんにも湯浴みを楽しんでもらうような配慮がなされているんですね。
浴室へ入ると「なるほど、半露天ね」と思わずその表現に頷いてしまうような造りになっていました。そもそもは内湯として設計されたのかもしれませんが、窓の下半分を取っ払っており、その部分だけ吹き晒しのような感じになっていました。開放感には欠けるかもしれませんが、雨や雪の日でしたら、むしろこうした造りの方が良いかもしれませんね。
壁はモルタル塗りですが下半分は石積みになっており、和の趣きが感じられます。洗い場にはシャワー付きカランが1つ設けられていました。
窓ガラスがない吹き抜けの先には坪庭のようになっており、石灯籠の上から風がそよそよと入り込んできます。
四角い浴槽は1~2人サイズ。配管からチョロチョロと熱々のお湯が注がれており、他のお風呂と同じく「摩天の湯B」源泉を引いているにもかかわらず、湯船のお湯は透明度が高く、しかもほんのり赤みを帯びているように見えました。湯使いやロケーションなどによって、色合いや見え方がかなり変わってくる源泉なんですね。
(2)左側
続いて左側の浴室へ。こちらでもドアの札を「入浴中」に裏返してから入室します。
こちらの脱衣室にベビーベッドはないものの、洗面台・扇風機・ドライヤーなどが揃っており、使い勝手良好です。
浴室の大きさは右側浴室より若干小さいのですが、こちらには右側浴室のようなガラス窓の仕切りが一切ありませんので、室内空間を小ささを補うに十分な爽やかさと明るさが確保されていました。屋外側には江合川の対岸に広がる山々の緑を借景にした坪庭が設えられており、露天風呂らしい開放感が得られます。
洗い場にはシャワー付きカランが1つ取り付けられています。右側浴室の壁はモルタル塗りと石積みが併用されていましたが、こちらの壁は昭和のモダニズムを連想させるような全面タイル張りの誂えになっており、その一部には白砂青松の海岸と富士山を描いたと思しきタイル絵が埋め込まれていました。
他のお風呂と同じく源泉温度が熱いためにお湯の投入はチョロチョロ程度に絞られていますが、こちらでお湯を注ぐ水栓やその周りには、まるで白化したサンゴのように温泉成分の析出がビッシリとこびりついており、お湯が溢れ出る洗い場の床も部分的に白く覆われていました。このお風呂では外気が直に触れるため、酸化や冷却が進みやすいのかもしれませんね。他浴室の湯船では表面が熱くなっていることが多く、必ず入浴前に一旦お湯をかき混ぜてから湯浴みしたのですが、こちらでは逆に若干ぬるくなっていたので、かき混ぜ不要で入浴することができました。
多種多様なお風呂に入れるこちらのお宿では、私のように全部制覇するのもよし、自分の好みにマッチしたお風呂を見つけそこで集中的に楽しむのもよし、いろんな方法でお風呂巡りを楽しむことができるかと思います。お風呂のみならず、アットホームで且つさりげない心配りが嬉しい応対、より取り見取りの美味しい料理など、すべてにおいて泊まって良かったと実感しました。
摩天の湯B
ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 98.4℃ pH8.7 蒸気泉のため湧出量測定不可(掘削自噴) 溶存物質2803.3mg/kg 成分総計2803.2mg/kg
Na+:733.0mg(95.31mval%), Ca++:15.4mg,
Cl-:355.3mg(30.56mval%), SO4--:952.5mg(60.48mval%), HCO3-:66.4mg, CO3--:50.3mg,
H2SiO3:498.6mg, HBO2:99.1mg,
(平成20年7月18日)
JR陸羽東線・鳴子温泉駅より徒歩10分弱(800m)、もしくは仙台から鳴子行き高速バス(ミヤコーバス)で終点(車湯)下車。
宮城県大崎市鳴子温泉新屋敷5 地図
0229-83-2022
ホームページ
日帰り入浴10:30~14:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
やすらぎ荘は同じ鳴子温泉郷でも、西寄りの中山平温泉ですね。コールタールの匂いがしましたか。人によって感じ方はそれぞれなんですね。このエリアはいろんなタイプのお湯が楽しめるので何度行っても飽きません。
おっしゃるようにこちらのお湯も周辺の名湯に負けず劣らずの良泉ですよね。ご指摘の通り〆にするにはもちろん、泊まって何度も湯浴みするなら、クセの強いお湯より、寧ろすがわらさんみたいなお湯の方が良いかもしれません。
あの立地にもかかわらず、外食のためだけに車を出してくれるとは、実にハートフルな対応ですね。家庭的な温かさもお宿の魅力なのでしょうね。心温まる話をありがとうございます。
周囲にインパクトの強い名湯が揃っているせいか、ここは宿の評判は良いのですがお湯がクローズアップされることが少ない気がします。でも負けてないと思うんですよね。むしろ鳴子みたいな泉質のバリエーション豊富なところの湯巡りの〆は、こういう湯に浸かりたいです。
ちなみに自分は公共交通機関利用で素泊まりでここに宿泊しましたが、チェックイン後に外食に行こうとしたら何と車で送迎してくれた記憶があります。そんな不便な場所でも無いですし高級宿でも無いのに…。こんなサービスは今のところ、後にも先にもここだけです。