前回記事の続編です。
●18時以降の応援集会
決戦前日だというのに、どの陣営も盛り上がりに欠けており、お祭り騒ぎを期待していた私はすっかり拍子抜け。
ちょっぴりガッカリしながらネットを見ていたところ、夕方18時から各党が最後の応援集会を開くとの情報を得ましたので、早速行ってみることにしました。これまでの選挙ですと、最終夜の応援集会で数十万という支援者が一堂に会してフェスのような盛り上がりを見せていましたが、果たして今回はそのような盛り上がりが起きるのでしょうか。
(1)民衆党 応援集会 (台湾総統府前・凱達格蘭大道)
台湾総統府の東側に伸びる凱達格蘭大道では、総統選の前夜になると必ず応援集会が開催されます。総統府前という土地柄なのか、前回は与党民進党がこの場所で開催しましたので、今回も民進党の支持者が集まっているのかと思いきや・・・
最寄りの「台大醫院」駅を降りる人々はみな民衆党の支援者でした。駅に到着する電車から次々に支援者が降り、群集となって会場へ向かってゆきます。特徴的なのが、若者が多いということ。比較的多いというような曖昧な表現ではなく、おそらく半数近くは30歳代までの若者ではないかと思われるほど、圧倒的なのです。
実際に私も会場へ行ってみました。あまりの人混みでステージには近づけず、ステージを見ることすらできず、かなり手前の位置で足止めを食らってしまったのですが、それでも支援者の熱狂を間近で実感できました。民衆党の支援者は、その目印として芽吹いたばかりの双葉をイメージしたカチューシャのような飾りを頭に着けています。発芽したばかりのふたば、つまりこれから成長する新しい政党ということですね。
梨泰院の事故を思い起こさせるほど危機感を覚える群集に飲み込まれてしまい、すっかり身動きが取れなくなってしました。しばらくこの場所で支援者のシュプレヒコールを聞き、また遠くから聞こえるステージの歌声や掛け声にも耳を傾けつつ、群集の中に隙間を見つけて辛うじて脱出することができました。
それにしても民衆党の応援集会は驚くほどの支持者を集めており、新しい政党だとは思えないほどの盛り上がりでした。この日は金曜日。上述で私が訪ねた選対本部にひと気が少なかったのは、単純に平日の日中だったからかもしれず、皆さん夕方になって仕事が捌けてからは積極的な選挙モードになったものと想像します。それにしても30歳代かそれより若い世代が、これほど選挙に関心をもって集会に集まり、支持政党を応援して政策の実現を訴えるとは。友達連れ、学生同士、家族連れ、乳飲み子を抱きながら、あるいはベビーカーを押しながら、みんなで柯文哲に声援を送っているのです。立錐の地が無いほどの大群衆の中、まるでバケツリレーの如く、小旗などの応援グッズを前方から後方へ送ったり、お年寄りや身体が不自由な方がいたらサッと道を開けたりと、指示系統が無いにもかかわらず自然と秩序が出来上がっていたのも不思議です。主催者発表20万人とのことですが、決して大げさな数字ではないでしょう。あまりの熱気に押された私は、もしかしたら柯文哲が総統に選ばれるのかもという想像すらしてしまいました。
日本のマスコミは台湾海峡危機という自国の防衛に関わる大きな問題に関心を寄せるため、どうして中国大陸(共産党)との距離感を総統選の最大かつ唯一の争点として捉えたがる傾向にあったかと思います。たしかに対中関係(台湾海峡問題)が大きな争点であることは間違いないのですが、少なくとも台北の有権者は、物価高、住宅問題、所得格差、雇用問題(特に若年層)、賃金問題、既存政党の汚職など、日本でも問題になりそうな極めてドメスティックな課題の解決を政治に求めており、とりわけ既存政党に落胆した都市部の若年層は民衆党という新しい政党に希望を見出したのですね。これが農村部、特に大陸への輸出で生計を立てている台湾南部の農家ですと、大陸といかに友好な関係を気づいて輸出しやすい条件を整えるかという点が重要になってきますから、都市部とは問題意識が全く異なり、民衆党ではなく民進党や国民党など従来の政党を支持する方向性になるんだろうと思われます。
(2)民進党 応援集会 (新北市・板橋第二運動場)
続いて、民進党が最後の応援集会を開いている新北市の板橋第二運動場へ向かいました。与党なのに総統府前の広場を確保できず、近郊の板橋へ移ったのはちょっとした都落ちではないのかと穿った見方をしつつ、MRT板橋駅から歩いて会場へ向かったところ、こちらも物凄い人だかり。
若年層が多かった民衆党の集会と違って、与党民進党の集会に集まる支持者は老若男女いろいろな世代がおり、なかにはヨボヨボの爺さん婆さんが群衆の中で頼清徳への声援をあげていました。みなさん大変熱心です。
私が現地に到着した時、競技場のトラック内に設けられた特設ステージでは蔡英文が何やら演説しているらしく、スピーカーから声は聞こえてくるのですが、多くの人垣に行く手を遮られ、中の様子はさっぱりわかりません。にもかかわらず後ろから前へ前へと押そうとする力が絶え間なく続くので、群衆に押しつぶされそうに危機感を覚え・・・
何とかその場を抜け、競技場をぐるっと回っていたら、フェンスをちょっとよじ登れば内部の様子が見られる場所を発見。ステージから最も遠い位置でしたが、向かいにステージを肉眼で見ることができ、また大型スクリーンの映像もはっきり見られたので、しばらくここで候補者たちの演説を見続けていました。上画像に写っているのは頼清徳ですね。彼がひとしきり演説をした後は、副総統候補の蕭美琴が舞台に立ち、そして立法院の候補者たちが次々に紹介されていました。
さすが民進党は選挙慣れしており、会場に入りきれない多くの支持者が集まることは百も承知なので、会場周辺の道路にはいくつもの大型モニターが設置されて、わざわざ会場の中へ入らなくてもステージ上の様子を見られるようになっていました。自発的に集まる人のほか、おそらく動員されている方々も多かったのではないかと思われます。
なお、国民党の支援集会も同じく板橋で開催されたのですが、民進党の集会でお腹いっぱいになってしまった私は、これでギブアップ。国民党の集会には行けませんでした。
選挙当日やその後については後編にて。
次回記事へ続く
●18時以降の応援集会
決戦前日だというのに、どの陣営も盛り上がりに欠けており、お祭り騒ぎを期待していた私はすっかり拍子抜け。
ちょっぴりガッカリしながらネットを見ていたところ、夕方18時から各党が最後の応援集会を開くとの情報を得ましたので、早速行ってみることにしました。これまでの選挙ですと、最終夜の応援集会で数十万という支援者が一堂に会してフェスのような盛り上がりを見せていましたが、果たして今回はそのような盛り上がりが起きるのでしょうか。
(1)民衆党 応援集会 (台湾総統府前・凱達格蘭大道)
台湾総統府の東側に伸びる凱達格蘭大道では、総統選の前夜になると必ず応援集会が開催されます。総統府前という土地柄なのか、前回は与党民進党がこの場所で開催しましたので、今回も民進党の支持者が集まっているのかと思いきや・・・
最寄りの「台大醫院」駅を降りる人々はみな民衆党の支援者でした。駅に到着する電車から次々に支援者が降り、群集となって会場へ向かってゆきます。特徴的なのが、若者が多いということ。比較的多いというような曖昧な表現ではなく、おそらく半数近くは30歳代までの若者ではないかと思われるほど、圧倒的なのです。
実際に私も会場へ行ってみました。あまりの人混みでステージには近づけず、ステージを見ることすらできず、かなり手前の位置で足止めを食らってしまったのですが、それでも支援者の熱狂を間近で実感できました。民衆党の支援者は、その目印として芽吹いたばかりの双葉をイメージしたカチューシャのような飾りを頭に着けています。発芽したばかりのふたば、つまりこれから成長する新しい政党ということですね。
梨泰院の事故を思い起こさせるほど危機感を覚える群集に飲み込まれてしまい、すっかり身動きが取れなくなってしました。しばらくこの場所で支援者のシュプレヒコールを聞き、また遠くから聞こえるステージの歌声や掛け声にも耳を傾けつつ、群集の中に隙間を見つけて辛うじて脱出することができました。
それにしても民衆党の応援集会は驚くほどの支持者を集めており、新しい政党だとは思えないほどの盛り上がりでした。この日は金曜日。上述で私が訪ねた選対本部にひと気が少なかったのは、単純に平日の日中だったからかもしれず、皆さん夕方になって仕事が捌けてからは積極的な選挙モードになったものと想像します。それにしても30歳代かそれより若い世代が、これほど選挙に関心をもって集会に集まり、支持政党を応援して政策の実現を訴えるとは。友達連れ、学生同士、家族連れ、乳飲み子を抱きながら、あるいはベビーカーを押しながら、みんなで柯文哲に声援を送っているのです。立錐の地が無いほどの大群衆の中、まるでバケツリレーの如く、小旗などの応援グッズを前方から後方へ送ったり、お年寄りや身体が不自由な方がいたらサッと道を開けたりと、指示系統が無いにもかかわらず自然と秩序が出来上がっていたのも不思議です。主催者発表20万人とのことですが、決して大げさな数字ではないでしょう。あまりの熱気に押された私は、もしかしたら柯文哲が総統に選ばれるのかもという想像すらしてしまいました。
日本のマスコミは台湾海峡危機という自国の防衛に関わる大きな問題に関心を寄せるため、どうして中国大陸(共産党)との距離感を総統選の最大かつ唯一の争点として捉えたがる傾向にあったかと思います。たしかに対中関係(台湾海峡問題)が大きな争点であることは間違いないのですが、少なくとも台北の有権者は、物価高、住宅問題、所得格差、雇用問題(特に若年層)、賃金問題、既存政党の汚職など、日本でも問題になりそうな極めてドメスティックな課題の解決を政治に求めており、とりわけ既存政党に落胆した都市部の若年層は民衆党という新しい政党に希望を見出したのですね。これが農村部、特に大陸への輸出で生計を立てている台湾南部の農家ですと、大陸といかに友好な関係を気づいて輸出しやすい条件を整えるかという点が重要になってきますから、都市部とは問題意識が全く異なり、民衆党ではなく民進党や国民党など従来の政党を支持する方向性になるんだろうと思われます。
(2)民進党 応援集会 (新北市・板橋第二運動場)
続いて、民進党が最後の応援集会を開いている新北市の板橋第二運動場へ向かいました。与党なのに総統府前の広場を確保できず、近郊の板橋へ移ったのはちょっとした都落ちではないのかと穿った見方をしつつ、MRT板橋駅から歩いて会場へ向かったところ、こちらも物凄い人だかり。
若年層が多かった民衆党の集会と違って、与党民進党の集会に集まる支持者は老若男女いろいろな世代がおり、なかにはヨボヨボの爺さん婆さんが群衆の中で頼清徳への声援をあげていました。みなさん大変熱心です。
私が現地に到着した時、競技場のトラック内に設けられた特設ステージでは蔡英文が何やら演説しているらしく、スピーカーから声は聞こえてくるのですが、多くの人垣に行く手を遮られ、中の様子はさっぱりわかりません。にもかかわらず後ろから前へ前へと押そうとする力が絶え間なく続くので、群衆に押しつぶされそうに危機感を覚え・・・
何とかその場を抜け、競技場をぐるっと回っていたら、フェンスをちょっとよじ登れば内部の様子が見られる場所を発見。ステージから最も遠い位置でしたが、向かいにステージを肉眼で見ることができ、また大型スクリーンの映像もはっきり見られたので、しばらくここで候補者たちの演説を見続けていました。上画像に写っているのは頼清徳ですね。彼がひとしきり演説をした後は、副総統候補の蕭美琴が舞台に立ち、そして立法院の候補者たちが次々に紹介されていました。
さすが民進党は選挙慣れしており、会場に入りきれない多くの支持者が集まることは百も承知なので、会場周辺の道路にはいくつもの大型モニターが設置されて、わざわざ会場の中へ入らなくてもステージ上の様子を見られるようになっていました。自発的に集まる人のほか、おそらく動員されている方々も多かったのではないかと思われます。
なお、国民党の支援集会も同じく板橋で開催されたのですが、民進党の集会でお腹いっぱいになってしまった私は、これでギブアップ。国民党の集会には行けませんでした。
選挙当日やその後については後編にて。
次回記事へ続く