彼女の目は私の目を見つめていた。今度は確かに私を捉えていた。客間で棺桶に眠っているはずの私の姿に、彼女は総毛立った。細目が見開き、顎が震えた。
短い悲鳴が上がった。
驚いたのは私も同様である。見られないはずの私を見られた。生と死を隔てるマジックミラーが突如音もなく瓦解したのだ。その瞬間、私はいわゆる幽霊だったのか。いや幽霊にしては私自身が不意であった。幽霊を見るのは恐怖であろうが、なるのも恐怖である。生ける美咲は死人のように青ざめ、死せる私は生者のように動揺した。我々は向き合い、まったく同等に怯えた。
しかし混乱は長くは続かなかった。私と目が合ったのは一瞬に過ぎず、美咲の視線は急速に焦点を失っていった。彼女はよろめき、当惑する大仁田に支えられた。
「奥様」
「今、今、あなたには見えなかった?」
「何がでございますか」
「亡霊?」
「奥様、奥様」
「あの人が立っていたじゃない」
「は」
「そこに。もう見えない」
「奥様」
「亡霊なの?」
(つづく)
短い悲鳴が上がった。
驚いたのは私も同様である。見られないはずの私を見られた。生と死を隔てるマジックミラーが突如音もなく瓦解したのだ。その瞬間、私はいわゆる幽霊だったのか。いや幽霊にしては私自身が不意であった。幽霊を見るのは恐怖であろうが、なるのも恐怖である。生ける美咲は死人のように青ざめ、死せる私は生者のように動揺した。我々は向き合い、まったく同等に怯えた。
しかし混乱は長くは続かなかった。私と目が合ったのは一瞬に過ぎず、美咲の視線は急速に焦点を失っていった。彼女はよろめき、当惑する大仁田に支えられた。
「奥様」
「今、今、あなたには見えなかった?」
「何がでございますか」
「亡霊?」
「奥様、奥様」
「あの人が立っていたじゃない」
「は」
「そこに。もう見えない」
「奥様」
「亡霊なの?」
(つづく)
疑問符が十も二十も出てきますが、学生時代の先生をお探しなのでしょうか。大学の先生でしょうか。久しぶりにお会いなされたいのでしょうか。
私もそういう先生はたくさんいます。ひょっとすると小学一年生いや、保育園の時から順番にすべての先生に再会したいと思うこともあります。それで私の生い立ちについて何かわかる気がするのでしょう。でも本当はわかりっこないんでしょうね。わからないことは、いつまでたってもわからないままですかね。今の私には、それもわかりません。
良かったのでせうか?
一年、楽しませて頂きました。
来年も引き続き宜しくお願いします。
決して、せかしたりしませんから(笑)
更新楽しみにしています。
変わらぬご愛顧をいただいていることに新年早々感激いたしております。
本年も何卒。何卒。