WIND AND SOUND

日々雑感 季節の風と音… by TAKAMI

6/ 希望と諦めの狭間

2011-08-04 | 実父
6/

先日の件に関して、弟とTELで長い間話をした。
父は、そんなにも外に出たがったり、家に帰りたがっている。
少し、気分転換に、車椅子で外に出てみてはどうか…と。

結局、ある日地曜日の夕方、日差しが少し翳って落ち着いた頃、家族みんなで父の気分を盛り上げながら、外を散歩してみることになった。
その日、私は、急遽いけなくなって、結局ヒロコさんと、弟と、息子のRinが付き添ったようだ。
Rinが、とても気を使いながらじーちゃんの車椅子を押したそうだけど、痩せた体には、道路のノイズが骨に直接伝わってきて、苦痛で疲れ果てたようだった。

自分の望むことと現実とのギャップに、父もがっかりしたことだろうな…
リハビリも、現場復帰を目指して頑張っていたけれど、あまりにも体力も筋肉も失ってしまって、
元の状態には戻れないことを、心の底で実感し、本人も悩み、不安、いろんな思いが入り混じっているのでは…
「もうダメかもしれない」「でも、希望を捨てたくない」
それは、私たち周囲には決して口にしないことだけれど、、、

父が癌だということは、本人には伝えていない。

私は、父が自分の病気の本当のことを知らないことが、いいのか悪いのか、どう考えたらいいのかわからない。
でも、とにかく、本当のことを伝えないのは、パートナーのヒロコさんの意思なのだ。
ヒロコさんと父の関係で、これでいい…というなら、それがベストなのだと思う。

私は、80代の高齢者の癌は、恐れることはないと思っている。
ゆっくりと年齢相応に進行していく、「老衰」のようなものだと…
がん細胞は、本人の体力、気力で、広がらず留まっていられるものだと信じている。
父には、家に帰って、さらにもう一度レッスンに立てるまでに復帰してほしい。
私は、やっとSYOさんのスタジオができたので、一緒にワルツを習いにいこうと言ってた矢先のことだった。
そのことは、最初に父のお見舞いに行ったときに伝えたけど、覚えてくれてるかな…
父からダンスを習いたい。
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6/23 麻婆丼を食べにいきたい

2011-08-04 | 実父

6/23

今日はたい焼きを買っていったけれど、「食べる?」というと、父はすご~く欲しくなさそうに「いらん」と言った。
このイヤそうな顔、もう慣れっこになったけど、ホントに子供のように「ああ、イヤだ」って顔をする。
じゃっ、お茶飲む? 今日は、めっちゃ暑いけど、熱いお茶のほうがいい?

父は、2月末からずっと同じ病室で過ごしていて、季節の変化を感じられない。
お見舞いの人が持ってくるお花やほんの少しの果物ぐらいしか「季節」とのパイプがない。
…というよりも、あまり四季の移り変わりに興味もなくなるんだろうな。
あまりに長い入院生活では、、、

「お父さんのお茶が美味しくてさ~~
匠がお茶が好きじゃなくて、ウチはお茶っ葉もないし、冷蔵庫にも「お水」を冷やしてるんだよ。
私も、なんだかお茶を淹れて飲む習慣がなくなっちゃった。
でも、病院に来るようになってから、お父さんのお茶が美味しくて、
私もお茶と急須を買ったんだよ…
それも、お茶一杯ぶんの、小さな急須だけど、コレがすごくいいのよね。
茶漉しも、大きな網が、急須にぺったりと付いてて。」

そんな会話から、病院の食事が口に合わない話(これは毎回同じ)、
そして、今日は、サンポートのシンボルタワー(高松駅前の高層ビル)の最上階の、中華レストランの麻婆丼、または、坦々麺が食べたいって話になった。

もうすぐ退院。もう何を食べても飲んでもいいですよ。
ビールでもなんでも。

…と、主治医の先生は仰ったそうなのだ。

「え~~っ!ビールもOKなん? ほな、こんど、こっそりチビ缶買って来てあげようか?
キンキンに冷えたヤツ。
一口きゅ~ん!と飲んだら、美味しいやろね~~!!
眩暈がするかもしれんけど。
でも、ヒロコさん(パートナーさん)に怒られるやろな~~
絶対内緒にしとかないと…バレたら私、出入り禁止になるわ。」

麻婆丼とか、坦々麺って、濃い味付けでピリ辛で…父の気持ちはものすごくわかる。
退院したら、絶対連れていってあげたいと思った。

病院の食事がもう限界的にイヤで、どうやら、昨日も絶食だったらしい…

「シンボルタワー」は、病院から2km弱。
病室の窓から見える…

暫く、食べ物の話で父と盛り上がっているところに、ヒロコさん登場。

父は、ヒロコさんには甘えモード全開で、我侭放題が始まった。

「これからサンポートに中華食べにいく。用意して。3人でいこう。」

行くったって、どうやって? 
「車椅子で、タクシーに乗ればいける。」
この格好ではお店に入れてくれないよ。
「着替え取ってきて。はよ!!」

止めようとするヒロコさんに、「早くしろ」と食ってかかる父。
窓から見える、目と鼻の先のシンボルタワーに行くぐらい、どうってことないと父は思っている。
気持ちはもう外なんだね。

でも、それとは裏腹に、父のリハビリは全然進んでいない。
自力で身体を起こすことも、支えることもできない。立つことも。
「じゃあ、起きてみる?」
ヒロコさんと私で両脇を抱えてベッドから降ろして父を立たせてあげた。
それだけでも大変な作業。父は1人で立てないし、数秒もすると足がガクガクと震え出す。
これが、あの入院直前まで踊っていた父…
悲しくなる。
それでも、意地でも外出しようとしている父。

食事に出かけると言い張る父に面と向かって逆らうと、もっと大変なことになるので、着替えを取りにいくフリをして、病室から出て、ナースステーションへ…
暫くして、男女2人の看護士さんが駆けつけてくださった。

「古川さん…どうしたんですか、だいじょうぶですか?」
「大丈夫です、ちょっとそこまで30分ぐらい、食事に行ってきますから」

膝をガクガクさせながら立っていた父は、とりあえずベッドに座り、女性の看護士さんは、父の膝をさすりながら、今の状態では、怪我をしたら大変なので、外出は認められないことを、子供に言い聞かせるように話してくださった。
それは、主治医の先生の指示であることも伝え、父はおとなしくベッドに横たわった。

父が横たわるとき、私には、父が一瞬なんだかホッとしているように感じた。
あれほど意地を張っていても、身体は辛く、ほんの数分でも、自分の身体がいうことをきかない…
先生の指示で、ベッドに戻ることに、安堵しているんじゃないかと感じた。
数分立っているだけでも、とても辛かったのだ…

それでも、一方では、父はこの不本意をヒロコさんにぶつけまくった。
私は、ヒロコさんにそれとなく促されて、父に「じゃあ、また来るね」といって病室を出たけれど、その後、ヒロコさんは、父に詰られまくり大変だったようだ。
ヒロコさんは、何も悪いことしてない。
彼女は、いつもベストを尽くしていて、全てを引き受けて、良くしてくださる。
…天使のような方なのです。
父はそれに甘えきっている、、、

父の気分を盛り上げてしまったのは私なのだ。
それの後始末は、すべてヒロコさんがしてくれた…

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