松本人志の「大日本人」のレヴューを見ていると、評
価は真っ二つ。
元々ネット上のレヴューは、個人的にはあまり参考に
ならないのだが、一般的にどう受け止められているの
かを知るには有効だ。
今回の映画に関しては、高評価するのは松本ファンと
いうはっきりした傾向が見られる。
彼の笑いのセンスを、過大評価と感じるほど認めてい
るファンが多いことに改めて驚いた。
「天才松ちゃん」と言われてるらしい。
確かに笑いのセンスは独特なものがあるとは思うが、
天才か?という疑問はある。
どうもなんでも「カリスマ」化という、最近の安直な
流行がここでも見られる。
「カリスマ」というより「教祖」的かもしれない。
何しろ今のテレビは、「教祖」乱造装置だから。
で、映画に関して一つ言えるのは、笑いのセンスと監
督のセンスは別物だということだ。
北野武の映画だって、他のは良いが喜劇仕立てのやつ
は全然面白くない。
つまり、映画での笑いは、普段の笑いとは違った、映
画的な手法が必要ということだ。
他の例では三谷幸喜の作品。
映画は全く面白くない。
尤もテレビのほうも全く面白くないから、面白いと思
う人がいるところをみると、笑いのつぼというものが
根本的に違っていると見たほうが良いかもしれない。
「時効警察」は結構笑えるのだが。
兎に角、三谷幸喜のシチュエーションコメディは、全く
笑えないのだ。
「サラリーマンNEO」は笑える(笑えないのもある
が)。
この違いはなんだろう。
例えば「時効警察」と比較すると、じっくり作られて
いるという点では変わらないと思う、三谷作品も。
テンポも同じように速い。
くだらなさは「時効警察」の方がむしろくだらないか
もしれない。
そのナンセンスさの突き抜け方が「時効警察」の魅力
で、心地よさにつながってるのかもしれない。
それが例えば志村けん辺りになると、今度はナンセン
スというより単なる幼稚と感じる。
そして三谷作品では、そのナンセンス加減が、しつこ
いと感じる。
それにややウェットでもある。
結局、ナンセンスに情緒的な要素が増すと面白くなく
なるのではないか、というか面白いと思えなくなると
いうのが自分の傾向である気がする。
基本的にブラックなテイストもほしいし。
そんな個人の感じ方など関係なく映画「大日本人」は
すでに公開されているわけだが、人間のしょぼさを観
察する目は確かにあると思う松本人志であるが、多分
映画そのものを見るのは、当分先のテレビでやる時か、
ビデオで旧作となる時だろう。
ひょっとしたら、一生見ないという可能性もある。