ゲロゲロ少年Yが、血相を変えて(本当にそうだった)
やってきた。
何事かと思ったが、例のご贔屓の店の閉店に関しての
ことだろうことは想像がついたが、果たしてその通り
であった。
今さっきいつものようにその店にいったら、閉店の告
知があり、びっくりしてその報告でこちらに来たわけ
である。
思った通りの落胆ぶりで、どうしてですかと盛んに聞
いてくるが、こちらとしては詳しい事情を知っている
わけではないから、例によって適当に推測しながらY
に尤もらしい解説をした。
その店はパン屋なのだが、個人的にはチーズを食べる
時にはここの「バゲット」が欠かせない。
レトロタイプの「バゲット」で、間違いなくこの辺で
は一番の「バゲット」である。
元々が地元の人間ではないので、開業に当ってはそれ
なりの資金が必要だったろうし、いろんな面で大変だっ
たのは間違いない。
家族も出来、この先のことを考えての決断だと思うが、
あの「バゲット」が食べられなくなるのは、非常に残
念なことである。
Yのご贔屓の店が駄目になる法則は、以前書いたが、
実はそれは自分にも当てはまることでもある。
私のお気に入りで、流行ってるといったら、最近の「更
科」くらいなものである。
他は、消えていくばかりだ。
Yに魅入られると駄目になる、というのは、自分の残
念な気持ちをYのせいにして、何とかその気持ちを解
消しようとしての、かなり屈折した心理のなせる業だっ
たのである。
取り敢えずYのせいにしとけ、ということだ。
単に面白がって、とも言えるが。
そう言えば、唯一の本格チーズを売っているスーパー
だが、Yに教えたら、早速ご贔屓にしているらしい。
ということは、早晩、棚からそれらの「シェーブル」
は消えて、「カマンベール」や「ゴルゴンゾーラ」し
かない棚に変わることだろう。
厭な予感がする。
結局Yは、そういう役回りなのか。
これはもう、宿命だね。