ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

グレースと公爵

2008年11月27日 | 映画


この前の記事で、「エリック.ロメール」の映画の九
割方は観ているなどと書いたが、確かめてみると27分
の17、つまり六割ちょいであった。
大分下駄を履かせたようだ。
どうも、ブログだと、何の証拠も要らないし、誰も確
かめようがないのでので大袈裟に書く傾向がある。
要するに、嘘を書いてもばれる恐れがないのだ。
書くほうとしては、快感にもなるところだろうが、見
るほうからすればこの点は気をつけないといけない。
と、他人事のように言っているが、自分がその嘘を書
いた張本人だった。

というわけで十七本目の「グレースと公爵」を観た。
フランス革命時の、グレースという(映画の中ではグラー
スと発音)貴婦人(貴族であるがどういういきさつの
人間かはよく知らないが、知らなくても問題ない)が
主人公の映画だ。
これも前に書いたことだが、エリック.ロメールの映
画は、現代が舞台の、日常のなんでもないことを題材
にした、ロケが殆どのセットを使わない映画であるの
だが、これは完全に例外。
CGを多用し、しかも題材は歴史的出来事。
だから、全体では史劇的雰囲気の映画である。
それで過去の作品を振り返ってみると、「O公爵夫人」
(未見)「聖杯伝説」がこの系譜の映画であるようだ。
監督個人に、この時代を題材に描きたい何かがあるの
だろうと想像する。

王党派であるグレースは、フランス革命によって、立場
が危うくなる。
周りの仲間は次々に処刑されていく。
そこに、革命側に付いた公爵が絡む。
公爵とグレースは、深い友情で結ばれてるようである。
過去に、何があったかということは判らないが、今は信
頼関係があり、何かと公爵はグレースを助けてくれる。
元々イギリス出のグレースなので、イギリスに帰れば
問題ないのだが、帰ることも難しい状況。
結局、最後につかまり裁判にかけられる。
終いには、革命派であるはずの公爵までもつかまって
しまう。
その間に、王党派の追われる人間をかくまったり、い
くつかのエピソードがはさまる。

ざっと内容はこんなものである。
舞台は、グレースのパリの家と郊外にある別宅、そし
て裁判所の三つ。
あとは、そこを移動する道だけと言っても良い。
そこにCGでつくった、如何にも安っぽい背景が置か
れる。
しかし、この作り物然とした背景が良いのだ。
リアルな感じではないのだが、独特の雰囲気をかもし
出す。
殆どが室内の会話で成り立っているのだが、そこにこ
の少々安っぽいような外の風景が挿入されると、ふっ
と映画の瞬間を感じる。
全体としては「一貴婦人から見たフランス革命」とい
う構成ではあるが、歴史的事実を基にした劇的な大河
ドラマでもなく、スペクタクルもない映画で、取りよ
うによっては、退屈な会話しかない面白くない映画と
言えそうだが、そこには、魅力的としか言いようのない
正しくロメールの世界がある。
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