CNNニュースサイトの「映画に出てくる猟奇殺人者」
ベストテンという記事を発見。
それがこれ。
1 ベン・キングスレー・・・『Sexy Beast』
2 ハビエル・バルデム・・・『ノーカントリー』
3 デニス・ホッパー・・・・『ブルーベルベット』
4 ジャック・ニコルソン・・・『シャイニング』
5 ゲイリー・オールドマン・・・『レオン』
6 ジョー・ペシ・・・『グッドフェローズ』
7 ロバート・デ・ニーロ・・・『キング・オブ・コメディ』
8 ロバート・ミッチャム・・・『狩人の夜』
9 浅野忠信・・・『殺し屋1』
10 クリスチャン・ベイル・・・『アメリカン・サイコ』
見てないのもあるので(例えば1)、はっきりは言え
ないが、個人的には2がダントツである(因みに、映
画としては、8の「狩人の夜」がダントツに良い)。
最近見たから印象が強いというのは勿論あるが、彼だ
けは他の殺人者とは異質に感じるのである。
異常者の枠を越えた、突き抜けたものがある。
異常者は飽くまでも人間だが、彼の場合は例えば「ジェ
イソン」のような人間ではない不気味さを持っている。
コーエン兄弟の「ノーカントリー」という映画に出て
くる殺し屋なのだが、その容貌といい(おかっぱ頭で
目がくりっとしている)、今までのどの映画の殺し屋
とも違う。
有無を言わせぬ暴力性。
人間としての感情は一切持ち合わせない。
つまり、理解不能の殺し屋として登場するのだ。
映画は、彼から逃げる男、そしてその殺し屋を追う保
安官、そして殺し屋、この三人の姿を描いている。
普通だと、一応主人公と言われる保安官が殺し屋を捕
まえて(殺して)メデタシメデタシとなるところだが、
そうはならない。
そこがまた「ジェイソン」的なのだ。
面白いのは、この映画がアカデミー賞を受賞したとい
うこと。
すっきりした話ではないにも関わらず。
考えるに、これは今のアメリカの気分を反映している
のではないか。
社会を覆う、不安。
不気味な暴力性を、社会の中に感じているからではな
いだろうか。
銃乱射事件、テロ、あとは市場の暴力的力、それらの
暗喩として殺人者を捉えているのではないかと思える
のだ。
同じような、遥かに判りやすい暴力を扱った「クラッ
シュ」も受賞しているし、最近のアカデミー賞は、ア
メリカの病巣を描いたものに与えられている。
この流れからは、救いを提示した「クラッシュ」から一
切救いのない「ノーカントリー」と、どんどん悪くなっ
ているという今のアメリカの実体を読み取ることもで
きる(これは日本も無縁ではないが)。
コーエン兄弟の映画は、どの作品もよく出来ている。
隙のない映画という感じだ。
これも、「クラッシュ」よりは面白いと思う。
すっきりした話ではないが、例えば、理解不能の殺人
者に呆然とする、それだけでも一つの楽しみ方として
はありなのではないだろうか。