経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-06-03 08:14:27 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪35≫ ダーストニウム = 東京ドームに似た巨大工場の天井から見下ろした光景は、圧巻だったがグロテスクでもあった。直径が3メートルもありそうな太い金属パイプが、大蛇のようにとぐろを巻いている。そのパイプには数百本の細いパイプが突き刺さり、電線が蜘蛛の糸のように張り巡らされていた。音はほとんどしない。歩き回ったり、計器を見ているロボットたちが、小人のように見えた。ロボットのリースト所長が説明し始める。

「これが精錬所の第1工場です。この太いパイプは沖合30キロ、水深5000メートルの深海に繋がっています。そこでは定期的に海底が爆破され、砕かれた岩石や砂が、このパイプを通じて吸い上げられてくるのです。海には何百億年もかけて、あらゆる元素が溶け込み沈殿していますから、それを原料にして必要な金属類を精製します。

この第1工場では、いろいろな技術を使って金属類の種分けをしています。鉄や銅、金やプラチナという具合に。それをあそこに見える第2工場に送って、溶解して延べ棒にするわけです。ですから昔は貴重品だった金やプラチナなんかも、いくらでも生産できるのです」

いやー、びっくりした。最新鋭の錬金術だなあ。でも、これで金の家が造れることも理解できた。気を取り直して、質問をぶつける。
――ところで、いちばん向こうの第3工場では、何を造っているんでしょう。  

「本当は国家機密なんです。でも賢人会の許可がありましたから、お話ししましょう。100種類に近い金属を造っていますが、なかには使いようのないものもありました。ところが40年ほど前のこと、ある若い化学者が大発見をしたんです。それまでは捨ててしまっていた役に立たない金属の一つが、思いもよらない性質を持っていました。

ごく少量のその金属を、一定の温度と圧力の下で鉄に混ぜる。さらに銅やコバルト、レアメタルなどを混合すると、金属同士が完全に融合して新しい金属が誕生したのです。こうして出来上がった新しい合金は、不思議な力を持っていました。強度が鉄の10倍以上になり、しかも強力な磁性を帯びたのです」

――その新しい合金を、あの第3工場では造っている?  でも何に使うんですか?

「人間たちは、この新金属をダーストニウムと名付けました。実はこの金属が誕生したおかげで、この国のエネルギー供給と交通手段が革命的に変化したんですよ」

                               (続きは来週日曜日)


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