経済なんでも研究会

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危ない! 金融機関の海外投融資

2021-04-23 07:48:24 | 金融
◇ 日銀がリポートで警告 = 日銀は20日、金融システム・リポートを発表。このなかで「大手銀行などの海外投融資先には、不適格な物件が増えている」と警告した。たとえば海外企業向けの融資は7割弱が適格と分析、つまり3割強は不適格だと指摘している。さらに資源開発などの事業融資は6割が、また航空機ファイナンスなどは7割が不適格だと断定した。有価証券投資についても低格付け債が多いと指摘しているが、その具体的な割合には触れていない。

慢性的なカネ余り状態が続くなかで、たしかにリスクの大きい投資物件が急増している。たとえば格付けがトリプルBに達しない低格付け債の発行は、ことし1-3月だけで2083億ドルに達した。また企業買収のみを目的とする特別目的買収会社、いわゆる“空箱”の上場は、これまでに累計2179億ドル。さらに金融規制が及ばないファミリー・オフィスと呼ばれる個人資産の運用会社は、時価総額が5兆9000億ドルにも及んでいる。

国内では、適切な投融資物件がなかなか見付からない。このため利回りにもつられて、こうしたリスキーな案件に手を出してしまう。つい最近もアメリカのファミリー・オフィスであるアルケゴス・キャピタル・マネジメントが破たん。野村證券や三菱UFJ証券が大きな損害を被った。こんな事件が連鎖的に生じると、金融不安が発生する可能性もないではない。

だから日銀がいま、リポートの形で警鐘を鳴らしたことはうなずける。だが、よくよく考えてみると、問題の発生源は日銀ではないのか。ゼロ金利にしたから、金融機関は本来の預金・貸出業務で儲けられなくなった。市場で国債を買い占めてしまうから、債券売買も出来なくなった。だから海外の危ない物件にも手を出さざるをえなくなった。日銀はリポートで、この問題にはいっさい触れていない。

        ≪22日の日経平均 = 上げ +679.62円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

コロナで染まった 貿易統計 : 20年度

2021-04-22 07:44:07 | 貿易
◇ 中国向け輸出だけが大幅増加 = 財務省が発表した20年度の貿易統計には、コロナの影響がすみずみにまで現われている。輸出額は69兆4873億円で、前年度比8.4%の減少。リーマン・ショック後の09年度に次ぐ大幅な落ち込みで、世界がコロナ不況に陥ったことを如実に反映している。一方、輸入額は68兆1803億円で11.6%の減少。日本国内の需要がコロナで縮小したためだった。この結果、貿易収支は1兆3070億円の黒字となっている。

輸出を相手国別にみると、大きく伸びたのは中国だけ。輸出額は15兆8937億円で、前年度比9.6%の増加だった。アメリカ向けは12兆4416億円で16.5%の減少。EU向けも12.5%減少した。国別でもコロナの被害が大きかったイギリス、スペイン向けが大幅に減少している。いち早くコロナの制圧に成功した中国、その影響が日本の貿易面にも大きく表れた。

商品別では、自動車の減退が著しい。前年度比では19.0%の減少だった。コロナの巣ごもりでパソコンやスマホの需要が増加、そのあおりで半導体が不足し、自動車の生産が抑えられたことも響いている。一方、輸入面では原粗油が49.2%も減少した。これは世界的なコロナ不況で需要が減り価格が下がったうえ、日本国内でも経済活動が抑制されたためである。

日本の貿易動向は、今後も世界のコロナ情勢を反映することになるだろう。たとえば現時点でみる限り、アメリカとイギリスはコロナ制圧にメドが付いた。ブラジルを初めとする南米諸国やインドは、なお最悪の状態から抜け切れない。結局はワクチンの接種率が高い国への輸出が伸びそうだ。そういう視点からみると、日本の輸入はあまり伸びない?

       ≪21日の日経平均 = 下げ -591.83円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

日米で世界の脱炭素をリード : 共同声明 (下)

2021-04-21 08:04:24 | 環境
◇ エネルギー計画がない日本 = 2050年にカーボン・ニュートラル(実質的に温暖化ガスの排出をゼロ)を実現するという理想を掲げた。しかし30年も先のことだから、そこへ至るまでの中間的な目標として、2030年の姿を描き出そう。世界でこの考え方が強まったため、日米首脳会談でも「30年までに確固とした行動をとる」ことが合意された。では、日本は“30年の目標”をどのように作り上げるのだろうか。

そこで最も重要なのが、電気をどんな方法で造るかを決める電源構成だ。いま日本の電源構成は、30年度に「原子力20-22%、再生可能エネルギー22-24%、石炭26%、天然ガス27%、石油3%」という内容。6年も前の15年に作成された。だが現状は原子力が6%、再生エネルギーが18%で、この目標の達成は明かに不可能だ。にもかかわらず、政府は新しい電源構成を作れずにいる。実現できない電源構成のままということは、エネルギー計画がないと言うに等しい。

新しい電源構成を作成できないのは、責任官庁である経産省がこの10年間、失敗を繰り返したことが大きい。東日本大震災の前には54基あった原発は、災害対策を強化したため、現在は9基しか再稼働できない。太陽光発電は強制買い取り価格を高く設定しすぎて、電気料金の高騰を招く。慌てて引き下げたため、こんどは普及しなくなってしまった。それならと洋上風力発電に力を入れ出したが、これもコスト高で見通しが立たない。

こうした状態での日米共同声明。経産省は本当に実現性のある電源構成計画を作れるのだろうか。ヨーロッパ諸国の半分にも満たない再生エネルギーの比率を高めるため、たとえば‟50%”などという数字を並べることは簡単だ。しかし実効性がなければ、全く意味がない。菅首相が約束した「環境サミットまでに提案する」の内容が、全世界からも注目されているのはこのためだ。

       ≪20日の日経平均 =  下げ -584.99円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 


日米で世界の脱炭素をリード : 共同声明 (上)

2021-04-20 08:03:47 | 環境
◇ 経産省に実効ある計画が作れるのか = ワシントンで行われた日米首脳会談では、温室効果ガスの削減について「30年までに断固たる行動をとる」ことで一致した。共同声明では「日米が世界の脱炭素をリードして行く」とも明記された。驚いたのは、その後の記者会見で、菅首相が「日本としては、22-23日に開く予定の気候変動サミットまでに具体的な計画を提案する」と言明したことである。本当に、そんなことが出来るのだろうか。

アメリカはトランプ前大統領が環境問題には全く消極的で、脱炭素は進まなかった。これに対して、バイデン大統領はきわめて積極的。地球温暖化防止の国際ワク組みであるパリ協定に復帰したほか、4年で2兆ドルの対策費も計上した。だから脱炭素に向けた動きは急速に具体化するだろう。一方、日本の場合はこの10年間、対策はすべて裏目に。首脳会談で決まったからといって、すぐに計画が出来上がるとは思えない。

温暖化防止で日米両国がモタついていた間に、ヨーロッパ諸国は大きな前進を遂げた。たとえば電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は、日本が約18%。これに比べてドイツは42%、イギリスは39%、スペインでも38%となっている。EU全体としても、20年には再生エネルギーの比率が38%に達し、化石燃料の37%を上回った。こうした動きを見て、日米会談では「今後は日米がリード」という姿勢を打ち出したわけである。

温暖化ガスの排出を、実質的にゼロにする。これをカーボン・ニュートラルと言い、国連の専門家グループが「2050年までの達成が必要」と報告した。このため世界で120以上の国が同調、日本も目標とすることを宣言した。しかし、そこへ到達するまでの2030年の目標も作ろうという機運が高まり、日本も「13年比で26%削減」という目標を発表した。ところが国際的にみても数字が低すぎ、各国から非難を浴びた。だが日本は今日に至るまで、この数字を変えていない。

                           (続きは明日)

       ≪19日の日経平均 = 上げ +2.00円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2021-04-19 07:59:12 | 株価
◇ 分厚い3万円のカベ = 一方は利益確定売りをこなして、着実に最高値を更新中。他方は3万円のカベに阻まれて、足踏み中。ニューヨーク市場と東京市場の差が、歴然としてきた。ダウ平均は先週400ドルの値上がり。終り値は3万4200ドル台に乗せている。日経平均は先週85円の値下がり。終り値は2万9700円を割り込んだ。年初と比べると、ダウ平均は3595ドルの上昇。日経平均は2239円の上昇である。

アメリカでは先週、景気の回復を示す経済指標が次々と発表された。3月の小売り売上高は予想を大きく上回って、前月比9.8%の増加。雇用統計も改善するなかで、長期金利の上昇が止まった。コロナ・ワクチンの接種が進み、経済・社会の正常化に向けた人々の期待が膨らんでいる。企業の業績見通しも好転、株式市場には“心配事”がなくなった。

こうしたニューヨーク市場の活況をみて、東京市場では出遅れ感も強まっている。しかしワクチン接種の遅れから、コロナの再拡大が進行し始めた。これから3月期の決算発表が本格化するが、経営者の先行き見通しは慎重にならざるをえない。それに日銀がETFの買い入れを停止したことも、不安材料となっている。ニューヨークに引っ張られて株高になるかもしれないが、やはり足取りは重いだろう。

今週は19日に、3月の貿易統計。20日に、2月の第3次産業活動指数。23日に、3月の消費者物価。アメリカでは22日に、3月の中古住宅販売。23日に、3月の新築住宅販売が発表される。

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫


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