経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

動かない 日米の中央銀行

2024-02-06 07:24:49 | 日銀
◇ その政策理念は全く異なる = FRBは1月30-31日に開いたFOMC(公開市場委員会)で、政策金利の現状維持を決めた。パウエル議長は記者会見で「物価が持続的に2%に向かうと自信を持てる証拠がもっと必要だ」「次回3月の会合までに確信できるレベルに達する可能性は低い」と説明している。要するに物価の下がり方がまだ不十分、3月になっても物価は十分に下がらないだろうと予測しているわけだ。逆に言えば「物価が十分に下がれば、利下げする」ということになる。

日銀は1月22-23日に政策決定会合を開き、現在の大規模緩和政策の維持を決めた。植田総裁は記者会見で「政策転換の前提となる2%の物価安定目標についての確度が少しずつ高まっている」「出口についての議論を本格化させて行くことが必要だ」などと説明した。FRBも日銀も現状維持、動かなかった。だが、その姿勢は全く異なっている。日銀の場合は「何がどうなれば、マイナス金利から離脱する」かを明確にしていないからだ。

ニューヨーク株式市場はFRBの決定を受けて、その日のダウ平均は317ドルの下落となった。しかしすぐに反発し、史上最高値を更新している。FRBの説明を聞いて利下げの時期は遠のいたが、経済の軟着陸は期待できると考えたからだろう。これに対して、日銀の説明はよく判らない。たとえば「物価が上がったら利上げ」は、理論的にもあり得ない。では物価が2%まで下がったら利上げするのか。植田総裁の説明からは、そうは読み取れない。

要するにFRBの目指すところは鮮明だが、日銀は何を目標にしているのか判らない。このため日本の銀行はあてずっぽうに先を読み、定期預金の金利を引き上げ始めた。預金が流出しては困るので、この動きは急速に多くの銀行に広がる可能性がある。もし3月にマイナス金利を解除することになると、日銀は民間の動きに追随する形となる。もし解除が4月以降になると、アメリカやヨーロッパが利下げをする最中に、日本だけが利上げする形になりかねない。

        ≪6日の日経平均 = 下げ -193.50円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2024-02-05 07:19:37 | 株価
◇ それでも上げるニューヨーク株式 = ダウ平均は先週545ドルの値上がり。終り値は3万8654ドルで、またまた史上最高値を更新した。4週間の連騰となったが、この間の上げ幅は1200ドル弱。比較的ゆっくりと上げている。水曜日にはFRBが金融政策の現状維持を決定。パウエル議長の「2%の物価目標達成に向け、より強力な自信を得るまで利下げは適切でない」という発言に敬意を表して下げた。しかし金曜日の想像をはるかに上回る雇用者の増加に対しては、むしろ景気の堅調さを評価して上げている。

日経平均は先週407円の値上がり。終り値では3万6000円台を維持している。1月は2800円を超える値上がりとなったため、やや買い疲れの様子が見えなくもない。外国人投資家は年初の4週間で1兆8909億円を買い越した。その後も資金の流入は続いているが、規模は縮小している模様。特に中国関連株は売られているようだ。

アメリカでは巨大IT5社がそろって好決算を発表するなど、景気の堅調さが再確認されている。このため市場ではFRBによる利下げが遠のく心配よりも、経済の軟着陸への期待の方が大きくなりつつあるようだ。ただ一部の地方銀行で不良債権問題が浮上してきた。これが金融不安にまで発展するかどうか、慎重に見守る必要がある。

今週は6日に、12月の毎月勤労統計、家計調査。7日に、12月の景気動向指数。8日に、1月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは7日に、12月の貿易統計。また中国が8日に、1月の消費者物価と生産者物価を発表する。

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫  

大型ビルに 「耐震化マーク」を!

2024-02-03 07:23:52 | 耐震
◇ 災害時の人的被害を減らすために = 能登半島地震から1か月。被害の大きさは、想定以上に大きかった。テレビでは痛ましい映像がたくさん流れたが、なかでもコンクリート製のビルが横倒しになった画面にはびっくり。こうしたなか日経新聞は12月31日付けの朝刊で「ビル倒壊 首都圏もリスク」という記事を載せた。たしかに首都直下型地震が起これば、いくつものビルがあのように横倒しとなりかねない。

ただし、この記事はとても分かりにくい。申し訳ないが、悪い原稿の見本のような記事だった。たとえば見出しからみると「首都圏の耐震不足が1100棟」と受け取れるが、記事を読んでみると1100棟はは全国の数字。それでも大型ビルの耐震化が遅れており、その進捗が急がれることは理解できる。記事では「旧耐震基準で建てられた全国の商業ビルなど約1万1000棟のうち約1100棟が、震度6強以上で倒壊や崩落の危険性がある」という国土交通省の集計を紹介した。

首都直下型地震は、今後30年以内に70%程度のの確率で起こると予測されている。南海トラフ地震も、40年以内に約70%の確率だ。だから首都圏や関西圏も、ビルの耐震化は急がなければならない。しかし実際問題として、古いビルの耐震化には巨額のカネがかかるから、ここ数年のうちに完了するというわけにはいかないだろう。そこで・・・。

大地震が発生したとき、街を歩いている人はどのビルに逃げ込んだらいいのか。その選択を間違えると、大変なことになる。そこで、たとえば5階建て以上で安心なビルには「耐震マーク」を付けたらどうだろう。目立つ場所に目立つマークを付けるようにすれば、人々はどのビルが安全かを自然に覚えてしまう。費用も掛からないし、耐震化の促進にも役立つのではないか。

        ≪2日の日経平均 = 上げ +146.56円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

問題は 非正規雇用者の賃上げ率

2024-02-02 07:03:10 | 賃金
◇ 人手不足で上がりそうだが・・・ = 総務省は30日、昨年12月の労働力調査を発表した。それによると、就業者数は6754万人で前年比38万人の増加。これで増加は17か月間も続いている。コロナ規制の解除で仕事が増え、人手不足で賃金が上昇した結果だろう。失業者は156万人で、前年比2万人の減少。完全失業率は2.4%で、前月より0.1ポイント低下した。雇用面からみた経済の状態は、まずまず順調だと言っていい。

雇用の変化を業種別にみると、最も雇用が増えたのは製造業で前年比28万人の増加。次いで宿泊・飲食サービス業が21万人、情報・通信業が19万人など。製造業は半導体など部品不足が解消、また宿泊・飲食サービス業はコロナ規制の解除で経済が正常化したことが大きい。一方、雇用が減少したのは金融・保険の24万人減、卸・小売り業が3万人の減少だった。                     

雇用の状態をみると、正規の職員・従業員は3592万人。前年より21万人増えた。ところが女性が24万人増加したのに対し、男性は3万人減少した。これはどうしてだろう。一方。非正規職員・従業員は2173万人で、前年比39万人の増加。非正規雇用者の増大傾向は、いぜんとして続いている。なかでもバイトが23万人も増加した。

大企業のことしの賃上げ率は、昨年を上回りそうである。そこで全体として賃上げ率が物価上昇率を上回るためには、中小企業やサービス業の賃上げ率が重要になってくる。その賃上げが十分でないと、経済の好循環は生じない。ところが、その賃上げが大きすぎると、中小企業やサービス業は値上げをしなければやって行かれない。すると物価が上がり、好循環は現われにくくなってしまう。そこのところが難しい。

        ≪1日の日経平均 = 下げ -275.25円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

「物価高を上回る所得増」は イバラの道

2024-02-01 07:19:30 | 政治
◇ 岸田首相の公約は達成できるのか = 岸田首相は30日の施政方針演説で「ことし、物価高を上回る所得を実現して行きます」と公約した。春闘での賃上げ、6月に予定する所得税・住民税の減税、それに物価の沈静に賭けた約束だと言える。また岸田首相は「賃金の上がることが当たり前だという前向きな意識を、社会全体に定着させてまいります」とも力説した。たいへん結構な政治目標である。だが、その実現はかなり難しいことも確かなようだ。

昨年の春闘では、平均3.6%の賃上げが実現した。岸田首相は「ことしはそれ以上の賃上げ」を強く期待しており、民間の予測も3.85%という高い数字を出している。また政府は6月に、1世帯当たり4万円の所得税・住民税の減税を実施する方針。さらに物価も最近は沈静化の動きをみせている。したがって、首相の公約は達成されそうにみえないこともない。

だが、その道は険しい。まず春闘の数字は、主として大企業の結果しか表していない。中小企業や零細企業で働く約7割の雇用者が、もっと低い賃上げ率になることは避けられない。また非正規雇用者を多く抱えるサービス業は、賃上げ分を価格に転嫁しないとやって行かれない。すると物価が押し上げられてしまう。

さらに岸田首相は、医療や福祉の分野で働く人の公的賃上げについても触れたが、これらの雇用者に対する賃上げ率は明らかに物価上昇率を下回っている。それに4000万人も受給している年金は、実質減少となった。岸田首相の任期は9月で切れるが、そのときには「年内に物価高を上回る所得」が実現できそうかどうか、見通しが付くだろう。

        ≪31日の日経平均 = 上げ +220.85円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
 

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