経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

チグハグだった 日銀の説明

2024-02-14 07:28:55 | 日銀
◇ なぜ利上げの可能性まで否定したのか = 日銀副総裁の異常な発言が、市場を驚かせた。内田副総裁は先週8日、奈良県での講演で「 マイナス金利政策を解除したあと、どんどん利上げしてゆくような道筋は考えにくい」と言明。市場はこの発言を好感、その日の日経平均は700円以上も上昇した。しかし副総裁がこんな重要な発表をするのは、きわめて珍しい。しかも翌9日には、植田総裁が国会で全く同じ趣旨の発言をしている。なんだか、おかしい。

市場では「日銀は3月か4月にマイナス金利政策を解除する。その後も短期の政策金利を0.25%まで引き上げる」という見方が大勢を占めていた。もし4月までに解除しないと、アメリカが利下げを始めるかもしれない。そうなると、日本が逆行して利上げはしにくくなるからだ。内田副総裁の発言も、この点は是認した形となっている。

ところが副総裁の発言は、その後の利上げについては否定的だった。副総裁はマイナス金利からの離脱に伴い「短期の政策金利は0.1%に上昇するが、利上げはそこで終わり」と述べている。市場が「夏ごろまでに0.25%、さらに年末に向けて金利は上がる」と読んでいるのとは大違いだ。しかし、なぜ日銀は慌てた格好で利上げの可能性を、否定しなければならなかったのだろう。その理由が、どうもよく判らない。永田町あたりから、何か聞こえてきたのだろうか。

市場の反応も、よく判らない。マイナス金利の解除は、短期金利の上昇を意味する。円高になるかもしれない。金融株などを除けば、株式全般にとってはマイナス材料だろう。だが内田副総裁の発言はこの点を飛び越して、その後の緩和政策持続を強調した。だから株式市場は大歓迎したのだが、早とちりのようにも思われる。チグハグ感の強い日銀と市場の対話だった。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +1066.55円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2024-02-12 07:26:47 | 株価
◇ 潮目が変わってきたNY市場 = ダウ平均は先週17ドルの小幅な値上がり。それでも5週連続の上昇で、木曜日には3万8726ドルの史上最高値を付けた。SP500も5000の大台に乗せている。巨大IT5社が10-12月期の決算でそろって増益に。また1月の雇用統計で非農雇用者の増加数が35万3000人と、事前予測の2倍に達した。こうした景気の予想外な堅調ぶりに、市場は‟軟着陸”への期待を高めている。ただ最高値を更新し続けているために、利益確定売りも目立って多くなった。

日経平均は先週739円の値上がり。終り値は3万6897円だったが、一時は3万7000円台に乗せた。ただ値を上げた最大の要因は、内田日銀副総裁の木曜日の講演。マイナス金利を解除したあとも「金融緩和を継続する」という発言で、日経平均は743円も上げ、円相場は149円台に下落した。市場は3-4月のマイナス金利離脱と年末0.25%の金利水準を予想していたが、これを打ち消した形。ただ、なぜ急いで打ち消す必要があったかはよく判らない。

ニューヨーク市場では、景気にとってのマイナス要因も現れ始めた。たとえば雇用情勢が強すぎて、3-4月の利下げが困難になったこと。またIT業界を中心に人員削減が始まったこと、さらにNYCB(ニューヨーク・コミュニテイー・バンコープ)など地銀の経営不振が表面化したことなど。どうも潮目が変わってきたように思われる。

今週は13日に、1月の企業物価。15日に、10-12月期のGDP速報。16日に、12月の第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、1月の消費者物価。15日に、1月の小売り売上高、工業生産、2月のNAHB住宅市場指数。16日に、1月の生産者物価、住宅着工戸数、2月のミシガン大学・消費者信頼感指数が発表される。

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
 

トランプ再登板の 恐怖

2024-02-10 07:20:59 | アメリカ
◇ 世界的に異次元の大変化が = ≪すべての輸入品に10%の関税を上乗せする≫ ≪中国製品には60%以上の関税をかける≫ ≪NATO(北大西洋条約機構)からの脱退を目指す≫ ≪ヨーロッパの安全保障には責任を持たない≫ ≪温暖化防止のためのパリ協定から離脱する≫ ≪油田開発に対する規制を撤廃する≫ ≪ドル安を推進、パウエルFRB議長は再指名しない≫ ≪移民の流入を厳しく規制する≫ ≪日本製鉄のUSスチール買収は絶対にさせない≫・・・。

アメリカの大統領選挙戦は、まだ始まったばかり。それでもトランプ前大統領は、これだけのことを記者会見やテレビ番組で明らかにした。11月の投票日までには、まだまだ驚くべき公約が飛び出してくるに違いない。もちろんトランプ氏が返り咲いたとしても、こうした口約束がすべて実行されるとは限らない。しかし話が半分になったとしても、アメリカだけではなく世界を大きく変える力がありそうだ。

トランプ氏が共和党の大統領候補になることは、まず間違いない。一方の民主党もバイデン大統領に絞られているから、結局はバイデン対トランプの一騎打ちになる。そして現状では、トランプ氏の方が優勢だ。だからと言って、まだ勝敗の予測ができる状態ではない。しかしトランプ氏の勝利、再登板も十分にありうると考えておいた方がいい。

一例を挙げてみよう。トランプ氏は「ヨーロッパの安全保障に責任を持たない」と言っている。いまも共和党議員に「ウクライナ支援の予算を通過させない」よう指令を出していると推測されている。では台湾や朝鮮半島の有事の場合は、どうなるのだろう。またドル安を指向しているから、いまのドル高・円安にどう対応するのか。とにかく世界の政治・外交・経済の面で、驚くべき変化を生じる可能性がある。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +34.14円≫
     
        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】    

“経済の好循環”には ほど遠い (下)

2024-02-09 07:09:51 | 所得
◇ 可能性はゼロではないが = ことし“経済の好循環”が実現する可能性はあるのだろうか。そのためには所得が大幅に増加し、物価が安定しなければならない。まず賃上げはどうなるのか。岸田首相は「昨年を上回る賃上げを」と経済界にハッパをかけている。そこで、ことしの春闘では昨年の3.6%を上回る4%の賃上げが達成されたと仮定しよう。すると、パート労働者や年金生活者までを含めた全体の所得増加率は2%程度になるだろう。

一方、物価の見通しはどうか。24年度の物価について、政府は2.5%の上昇、日銀は2.8%の上昇と予測している。これだと全体の実質所得はプラスにならない。しかも物価は、もっと上がる可能性の方が大きい。中東情勢の緊迫でスエズ運河を通る船舶が急減、海上運賃の上昇がこれから物価に跳ね返る。原油などのエネルギー価格も上がるかもしれない。

大企業の賃上げ率が4%になり、中堅・中小企業の賃上げ率も2%を超えれば、全体の賃上げ率は2.5%程度に引き上げられる。だが多くの中堅・中小企業は、賃上げ分をそっくり価格に転嫁させなければやって行けない。すると物価はこの面からも、上昇圧力を受けることになる。こうみてくると、‟経済の好循環”と口で言うのは簡単だが、その実現は容易ではない。

‟好循環”を達成するための一つの方法は、物価を徹底的に抑え込むこと。たとえばガソリンや電気・ガスに対する補助金は増やして継続する。また2%以上の賃上げを実施した中堅・中小企業に対しては、かなり減税する。そして輸入物価を上昇させている円安を修正、1ドル=110円程度の相場を目指す。しかし政府・日銀に、そこまでやる勇気はない。したがって‟好循環”の可能性はゼロではないが、きわめて難しいということになる。

        ≪8日の日経平均 = 上げ +743.36円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

“経済の好循環”には ほど遠い (上)

2024-02-08 07:54:30 | 所得
◇ 昨年の実質給与はマイナス2.5% = 厚生労働省は6日、昨年12月と23年の毎月勤労統計を発表した。まず12月の1人当たり現金給与総額は57万3313円で、前年同月比1.0%の増加だった。しかし物価が上昇したため、実質値では前年比1.9%の減少。これで実質給与のマイナスは、実に21か月連続となった。なお正社員の現金給与総額は79万3207円で、前年比1.4%の増加。パートは11万7784円で、2.5%の増加だった。

この結果、23年の1人当たり現金給与総額は月平均32万9859円、前年比1.2%の増加となった。しかし物価が3.8%上昇したため、実質値は2.5%の減少。22年の1.0%減少よりもマイナス幅が拡大している。なお正社員の現金給与総額は43万6849円で前年比1.8%の増加、パートは10万4570円で2.4%の増加だった。人手不足を反映して、パートの伸び率が正社員よりも高くなった。

物価高を上回る賃上げ率を実現する。これによって勤労者の実質所得がプラスとなり、消費が拡大。企業の利益が増えて、また大幅な賃上げ--岸田首相が待望する“経済の好循環”である。こうした政府の呼びかけもあって、昨年の春闘による賃上げ率は3.60%にまで上昇した。しかし、これは大企業が対象の数字。中堅・中小企業まで含めると、毎勤統計のように1.2%の増加に低下してしまう。さらにパート労働者や年金受給者まで含めると、所得の増加率はどんどん低くなる。

総務省が同日発表した家計調査によると、2人以上世帯の23年の消費支出は月平均24万7322円。前年比では名目で1.3%の増加、実質で2.4%の減少だった。物価の上昇で名目値は増加せざるをえなかったが、実質値は下がって生活水準の低下を示している。これでは“経済の好循環”どころか“悪循環”だ。では24年の見通しは、どうだろうか。

                    (続きは明日)

        ≪7日の日経平均 = 下げ -40.74円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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