経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

またもやマイナス成長? : 1-3月期

2024-05-11 07:21:12 | 景気
◇ 個人消費の減り方に注目 = 内閣府は16日に、ことし1-3月期のGDP速報を発表する。それに先駆けて民間の調査機関が、続々と予測の結果を発表した。読売新聞によると、民間10社が予測した実質成長率は年率換算でマイナス1.0%~マイナス3.3%。全社がマイナスを予測し、その平均値はマイナス1.8%だった。NHKも11社について、ほぼ同様の内容を報道している。民間の事前予測は当たらないこともあるが、全社がマイナスを予測しているので、1-3月期はまたマイナス成長に陥る可能性がきわめて大きい。

23年10-12月期は、プラス0.4%の成長だった。それがマイナスに転落するのは、自動車メーカーによる認証不正が一因。操業停止で生産が減少、販売台数も落ち込んだ。ただ、これは一時的な現象。それよりも個人消費の減退が注目されている。物価高のために個人が節約志向を高めた結果だとみられており、もしそうなら今後もその傾向が継続する可能性が大きい。

仮に1-3月期の成長率が民間予測の平均値マイナス1.8%になるとすると、23年度の実質成長率はゼロ前後になる計算だ。最近、IMF(国際通貨基金)が「25年にはインドのGDPが日本を上回る」と推計して話題となったが、それにしても日本の成長率は低すぎる。岸田首相は物価高を上回る賃上げを実現し、経済を‟好循環”の波に乗せると公言した。しかし1-3月期がマイナス成長に陥るようでは、そんな夢も吹き飛んでしまうだろう。

政府はここ数年、予想をはるかに上回る財政を支出。日銀はゼロ金利を継続、まだ国債やETFの買い入れを続けている。にもかかわらず、GDPの増え方は非常に鈍い。それはやはり、現在の財政・金融政策が間違っているのではないか。政府や日銀の内部に、こんな疑問が湧かないのはなぜなのか。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +155.13円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】     

月とスッポン : 日米の金融政策 (下)

2024-05-10 07:29:12 | 金融
◇ 理屈に合わない日銀のアプローチ = FRBは急激な金融引き締め政策で、インフレを抑え付けようとした。しかし物価はまだ3%以上の上昇を続けている。これを2%の上昇にまで下げることが最終的な目標。だが、これ以上の引き締めは景気を悪化させる危険があるので難しい。このため政策金利をずっと5.25%に据え置いたまま、様子を見ているのが現状だ。それでも「物価2%」という目標は、満月のようにはっきりと見えている。

日銀も「物価2%」を、金融政策の最終目標に掲げている。日本の物価上昇率は現在ほぼ3%前後、政府の補助金を考慮に入れれば4%に近いかもしれない。それを2%にまで下げるというわけだ。アメリカと同じだが、アメリカは金融を引き締めている。しかし日本は金融を超緩和したままだ。物価を下げようというのに金融を緩和するのは、どう考えても理屈に合わない。やり方がアメリカと正反対なのである。

よく知られているように、現在の物価高は円安による輸入物価の上昇によるところが大きい。試算によると、生活用品の値上がりはその3割が円安によるという。円安は日米間の金利差が基本的な原因。だから理論的には、日銀が金利を引き上げれば円相場は上昇する。利上げと言っても、政策金利を3%とか5にしろと言うわけではない。おそらく0.25%、それも「検討する」と言うだけで、円相場は10円ぐらい上昇するに違いない。ところが日銀はそれすらも言わず、頑なに「ゼロ金利を守る」と言い続ける。なぜなのか。

どんな経済政策にも、必ずプラス面とマイナス面がある。いまや超金融緩和政策はプラス面よりマイナス面が大きいことは、日銀も判っているはずだ。にもかかわらずゼロ金利に固執するのは「日銀が利上げしたために、不況になった」と批判されるのが怖いからではないか。この保身のために日銀は動きがとれず、スッポンのようにゼロ金利に食いついたまま離れない?

        ≪9日の日経平均 = 下げ -128.39円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

月とスッポン : 日米の金融政策 (上)

2024-05-09 07:20:18 | 金融
◇ 中央銀行はそれぞれの難問を抱え込んだ = FRB(連邦準備理事会)はアメリカの中央銀行、日本銀行は言うまでもなく日本の中央銀行だ。この2つの中央銀行はいま、それぞれに大きな問題を抱え込んで苦しんでいる。中央銀行の使命の1つは、通貨価値の維持。同時に経済の健全な成長にも、目を配らなければならない。だが近年は、その目的をなかなか達成できない。金融政策の効力が低下してきたためである。

アメリカの場合。FRBはコロナ不況に対処するため、20年3月から22年6月にかけて金融を緩和した。具体的には政策金利をゼロにまで引き下げ、市場から国債などを無制限に買い入れた。この結果、景気は持ち直したが物価が上昇。FRBは22年6月、金融政策を引き締めに転換した。しかし物価はなかなか下がらない。いまはいつ引き締めを解除できるか、その見極めに苦慮している。

日本の場合。日銀は16年1月からマイナス金利を導入した。同時に市場から国債などを大量に購入し始めた。いわゆる“異次元の金融緩和政策”である。ことし3月になってマイナス金利をやっと解除したが、まだ政策金利はゼロ。このため円相場が異常に下落、物価を押し上げている。利上げを期待する声も強いが、日銀は引き締め政策に転換することに踏み切れない。

このようにFRBと日銀は、ともに大きな問題を抱え込んでいる。だが何を金融政策の目標にしているか。その鮮明度は、全く異なっていると言っていい。FRBの目標は、満月のようにきわめて鮮明。これに対して日銀の政策目標は、きわめて曖昧。不透明な目標を掲げてゼロ金利に固執する様は、あたかも食いついたら放さないスッポンのようにみえる。

                      (続きは明日)

        ≪8日の日経平均 = 下げ -632.73円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2024-05-07 07:06:54 | 株価
◇ 日経平均、4月は1964円の大幅安 = ダウ平均は先週436ドルの値上がり。終り値は3万8600ドル台にまで戻している。FRBが金融政策の現状維持を決めたことは、完全に織り込み済み。市場では「一つの儀式が終了した」という感じ。また週末に発表された雇用統計は予想を下回り、インフレ抑制への期待が高まった。さらに1-3月期の企業業績も堅調で、中東情勢に落ち着きが見えれば、株価はまだ上げそうな気配をみせている。

日経平均は先週301円の値上がり。政府・日銀の介入もあって円相場は大幅に上昇したが、株式市場はこれを好感。1-3月期の企業決算も堅調、7割の企業が予想よりいい結果を発表している。このため日経平均は2週連騰となったが、戻りは遅い。このまま円高が進行するとは考えられず、「円安⇒輸入物価の上昇」という悪いパターンの解消は難しいという心配が消え去らないようだ。

日経平均は4月中、1964円の大幅な下落だった。月間の下げ幅としては、22年9月以来1年7か月ぶりの大きさ。アメリカでインフレ圧力が弱まらずFRBによる利下げが遠のいたことで、IT関連株が下落。その影響で東京市場でも、半導体関連銘柄が売られた。また行き過ぎた円安を警戒、輸出関連銘柄も売られたことは初めての現象だった。5月はその分を取り戻せるのかどうか。中東情勢が好転すれば、チャンスはありそうだが・・・。

今週は9日に、3月の毎月勤労統計、景気動向指数。10日に、3月の家計調査、4月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは10日に、5月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が9日に、4月の貿易統計を発表する。

        ≪7日の日経平均 = 上げ +599.03円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

人手不足は これから : 労働力調査

2024-05-05 07:42:35 | 人手不足
◇ 23年度は就業者が28万人増加した = 総務省が発表した23年度の労働力調査をみて、ちょっと驚いた。世の中は人手不足で騒がしいが、この調査をみる限り人手がひどく不足するような原因は見当たらない。たとえば完全失業率は2.6%、失業者数は平均178万人で、ともに前年度と変わりなかった。また就業者数は6756万人で、前年度より28万人増えている。増え方は大幅とは言えないが、それでも働く人はそこそこ増えている。それなのに、どうして人手不足になるのだろう。

もちろん経済成長率が3-5%に達する好景気が続けば、この程度の就業者数の増加では足りないに違いない。しかし現実はゼロ成長に近い状態がずっと続いている。働く日数や時間が短い非正規労働者が増えたために、人手が足りなくなったのか。しかし正規労働者は3622万人で、前年度比25万人の増加。非正規労働者は2130万人で、19万人の増加だった。ともに人手不足の大きな理由にはならない。

少子高齢化ガ進み、生産に携われる年齢の人口が減る。だから人手が不足するという。たしかに生産年齢人口は年々、減り続けている。しかし23年度は、働く人が増えている。その理由は、これまで働きに出なかった女性や高齢者が、新しく職に就いたからだ。23年度の労働力調査でみると、就業率は61.4%で、前年度を0.4ポイント上回った。

この4月からトラック・バス・タクシー運転手と建設業労働者、医師に対する残業規制が実施された。またインバウンドの回復で、宿泊・飲食業の人手不足は激しくなる。さらに専門家によると、就業率は天井に近付いているという。したがって本当に大変な人手不足は、これからやってくる。24年度は就業者数が何人増えるのだろうか。

Zenback

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