(↑ハチがせっせと蜜を集めてます。これを見たらもう少しこのビオラも植えておこうかなと思いますね)
先日読了した『ロストケア』は
現代の老人介護の問題に絡めたミステリー。
これは、
全選考委員が絶賛した日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作です。
概要では、
「現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、
圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る!」
と書かれていて、まさにその通りと思います。
小説としてのレベルは高いです。
数十人の老人を殺した殺人鬼の、
あまりに突拍子もない話ではあっても、
そこに横たわる問題はかなりのリアリティなので、
大きな十字架を背負わされた感じもします。
「介護の問題」、
我が家だったら、
今はまーさんとわたしたち夫婦の問題だけれど、
そこに止まらない。
いずれわたしたち夫婦の問題となり、
息子も絡んだ問題となっていく。
これは家族のつながりがある限り、
誰にとっても無関係ではいられないこと。
だからといって
全くカタルシスも感じず、
ただただ解決が難しい問題に向き合わされた感じ。
ストレスがすごく溜まって終わった。
最後には作者なりのまとめ方にはなっているけれど。
解説部分で、近藤史恵さんという作家が
「社会派本格ミステリは、どこか『鬼子』のような存在である」
と言っているように、
心引き裂かれるものなんだろうと思います。
介護現場の現実、
介護者、被介護者、家族、施設のヘルパーさんたち、
介護ビジネスに関わる人たち、
それぞれの誠意、思惑、苦労などなどが絡み合って、
何とかしたいという思いに突き動かされるけれど、
何もできず、
何も変わらないことを思い知らされ、
ただただ暗澹たる思いに心が支配されてしまうのです。
正直に落ち込みました。
今自分はそこまでの介護地獄にいるわけではないのだけれど、
主人公の検事・大友に突きつけられる
「蚊帳の外に自分を置いてる」という指摘が
自分にも向かってくるからです。
こういう、
読書をして凹んでしまうようなわたしは、
こんな本格社会派ミステリ小説は読むべきものではないのかも。
しっかり受け止められる人が読むべきものなのかもですね。
最近では『蟻の棲み家』というミステリーも同様かな。
今のわたしには荷が重すぎます。
本の中だけでも
現実を逃避したり、
夢を見たり、
ありえない結末でまとまったりでもいいかなあ。
ちょっとそう思ったりもして。
ま、
いろんなジャンルの小説があるわけで、
読む側が、その心持ちで選んでいけばいいのですものね。
ただ言えることは、
こういった問題が現実にあり、
「それにしっかり向き合うことも生きることだ」
と言われているのは確かです。
また一方で、
上京した弟から色々聞いたことも衝撃でした。
今の故郷の現実を知ることとなったのです。
田舎もずいぶん様変わりしてきたこと、
わたしたち世代が最後の砦で、
それより下の人たちは街にますます出て行くようになって、
農業をする若い人たちがいなくなり、
田んぼの維持がなかなか難しくなってきていたり、
実家の後を継ぐ人がおらず、
空き家になって、
墓仕舞いも増えてきていたり、
古家が外から来られた方々に買い取られ、
地縁のない他人が住むようになっていったり。
町村の経済的な課題も大変大きいことも話題に。
故郷なんて変わらずにあるものだと
勝手に決めつけていたわたしには
こちらもショック。
昔に比べて交通の便も良くなり、
ネットや宅配便もあるために、
街とそんなに変わらなくなってきているように思い、
若い人たちにとっても住みやすくなってるのではと
これも勝手に思ってました。
わたしは結婚後、
故郷を離れ、
街の人間関係も緩やかで、
地域としては特に何の問題もない
場所に住み続けてきたので、
そういうさまざまな問題が見えてなかったのですね。
時々帰省する故郷の抱えてる問題の
深いところまではあまり知ろうとしなかった・・・。
実家の田んぼや屋敷、山林を維持している弟の苦労を
改めて知らされて、
ただただ「ありがとう」というしかないかな。
だからと言って
もちろん弟が文句たらたら言ってるわけでもない。
淡々と今の現実を語っただけで、
弟は弟で自分の今をしっかり受け止めている。
介護の問題、故郷の問題、老後の問題などなど、
この1週間は
いろんな面で社会の現実を
もう一度思い知らされた週となりました。
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