どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

瞼の秘密

2007-09-01 01:43:18 | 短編小説
 志保は仁吉の帰りを待って針仕事に精を出していた。  夕食の時刻はとうに過ぎていたが、吉井駅近くの一杯飲み屋で小一時間は息抜きしてくるのが常だから、亭主の好きなおでんの鍋を火に掛けて、ごとごとという音を聴きながら頼まれものの訪問着を仕立て直しにかかっていた。  亭主は富岡製糸場の技師で、志保とは職場で上司と部下の関係だったが、三年前に結婚して吉井町で借家住まいをしていた。 「空っ風がきついわね・・ . . . 本文を読む
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