どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

煙火茫々(4) 最終回

2008-09-19 00:06:52 | 短編小説
 芳夫には、庄さんのほかにもう一人気になる存在があった。  前年の秋、集会所の空き地に小屋掛けしたサオリヨウコ一座の開演を待っていたとき、村人の注視を浴びた中年女のことである。  芳夫がそれと気づいたのは、筵を敷き詰めた客席の後方で早々と集まり始めていた村人たちがざわめきだしたからである。  ふと視線を向けたダンダラ幕の切れ目に、女は白っぽい浴衣をはだけて茫と立ちすくんでいた。 「あれは、お志麻じ . . . 本文を読む
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