冬の季語を用いた芭蕉の俳句は比較的少ないが、この回は
「あら何ともなや昨日が過ぎて河豚汁」
の登場となった。
河豚汁は〈ふくと汁〉と読ませるようで、意味は<昨日河豚汁を食べたが一日過ぎてもなんともない。ああ、よかった・・>安堵している様子がほほえましい。
初五の字余り〈八音〉は「あら何ともなや」と状況を示しながら安堵の気持ちを表現したわけで無理に五七五にしなかった感覚は後世の自由律俳句をも先取りしている。
河豚の調理については、現在では国による免許制度があるが芭蕉が食した延宝年間には経験豊富な調理人の腕を信用するしかなかった。
河豚の内臓を傷つけることでフグ毒が身に回り、それを食べて死亡する例が江戸時代には少なくなかった。
明治時代の政府高官や有名作家なども恐る恐る口にしたことを書き残している。
「河豚は食いたし、命は惜しし」という諺通りみんな緊張している様が正直だから面白いし芭蕉の名句として紹介させてもらった。
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