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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(91)

2009-02-19 01:17:01 | 音楽

     『死ね死ねブルース』を知っていますか

 2月15日(日曜日)たいへん残念なことがあった。
 毎週のように聴いていた『キンキンのサンデーラジオ』が、突然の終了宣言によってこの日限りで終わることになったからだ。

 番組冒頭、パーソナリティー・愛川欣也が涙声で、打ち切りに至った理由の説明をした。
 表向きは、景気低迷によってスポンサーが見つからず、3月一杯での終了を上部から通告されたため、キンキンとスタッフ相談のうえ今回の判断をしたのだということだった。
 月半ばで予告もなく終了という事態に、リスナーは衝撃を受けた。しかし、番組に携わってきたスタッフの困惑はより深刻だったにちがいない。

 半年ぐらい前から、ある種の予感はあった。
 一連の政治的混迷に対して、歯に衣着せぬキンキンの発言が目立っていたからである。
 もちろん、ゲストで登場する評論家や政治家の意見も、日頃政治に不満を抱いている庶民の鬱憤を代弁する形で発せられ、リスナーからは大いに支持されていた。
 しかし、テレビに比べ影響力は少ないとはいえ、スポンサーや権力中枢から煙たがれるだろうと危惧する思いはあった。その矢先の番組終了であった。

 正直、在京ラジオ局の中でも、文化放送のスタンスは立派であった。
 ウィークデーは、早朝の吉田照美、午後の大竹まこと、土曜日はみのもんた、そして日曜日の愛川欽也と、かなり自由に発言させていたから一目置いていた。
 だが、経済危機と政治混迷の渦中で、ついにキンキンに引導を渡さざるを得なかったのか。
 裏の出来事は分からないが、リスナーたちのほとんどは欽也の涙に無念さを感じ取り、理不尽な状況を推測したにちがいない。

 3月末まで、たらたらと<死に体>の放送を続けることを潔しとしなかったキンキンに拍手を送る。
 俳優でありながら、放送人として妥協をしなかった愛川欽也にサムライ魂をみる。汚れてしまった日本人の気骨が、ニュースキャスターや評論家でなく敗戦体験者によって甦ったことを大いに喜ぶ。
 小学生として終戦を迎えた硬骨漢は、飢えの記憶を<炭水化物友の会>なる同好グループを作って残そうとした。

 高校卒業後、俳優養成所に入り、民主主義の何たるかを教えられたという。
「日本国憲法は、アメリカによって作られたものだから見直そうなどと言うのは間違っている。いいものはいいのだ」とキンキンは力説していた。
 日本人の手によって作り直す危険を見事に言い当てている。
 恣意的な力を排除できない仕組みの下では、再び戦争に駆り立てられる虞のほうが強いことを、体験的に知っているのだ。

 兄貴、がんばってくれよ。たくさんのリスナーたちが再会を待っているぜ。
 話はちがうが、番組の最後に流された『死ね死ねブルース』にはブッタマゲタ。いつごろ吹き込んだのか分からないが、歌詞が面白いだけでなく、とにかく歌が巧い。
 リズムもいい、切れもいい、声も最高! 
 今まで知らなかったのが不思議なくらい。

 CDを探したが見当たらず、ネットで曲名を検索したら、ラジオ音源の『死ね死ねブルース』を聞くことができた。
 隠れた愛好者によって、提供してもらえるのがありがたい。
 ここしばらくは、暇さえあれば繰り返し聞くことになりそうだ。

 

 

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1 コメント

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悲鳴ですね (知恵熱おやじ)
2009-02-21 09:07:30

権力を持つものが自らに都合の悪い発言者や表現者を潰しにかかるのは世の倣いで、驚くにはあたりませんが、面白いことにやられた側がそれによって逆に力をつけさらに大きな存在になっていくことが珍しくありません。

理不尽な力にゴマメの歯軋り的なものにしろ歯を食いしばって抵抗するうちに、彼の中に潜んでいた魂の力が輝きだし人の共感を呼んでさらに力を強めていくのでしょう。

教えられた「死ね死ねブルース」を聞いてみました。
歌というより「魂の悲鳴」と受け止めました。
聴く者の肉体の基底層に直接響くような力を持つ悲鳴の波動です。この波動が人々に何をもたらすのか。
言葉を超え、生理に直接訴えるだけに想像もつきませんが、もしこの悲鳴が広く世に響き渡るようなことになったとしたら、何も起こらないとは考えにくい。

注意深く耳を傾けてみたいと・・・

よく教えてくださった。有難うございます。


知恵熱おやじ
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