〇 ほろほろと山吹散るか滝の音
この句は『笈の小文』〈おいのこぶみ〉に収録された名句である。
笈の小文=芭蕉が貞享4年(1687年)10月に江戸を出発し、東海道を下り、尾張・伊賀・吉野・和歌の浦などを経て、須磨・明石を遊覧した際の道中に詠んだ俳句を交えて記録した紀行文である。
山吹の花は風もないのにほろほろと散る。
吉野川の支流の岩間からは滝が流れ落ちていてあたかも滝の音が山吹の花びらを散らしているように見える。
吉野地方は桜とともに山吹の花が有名で芭蕉がこの地の名勝を訪れた際目にしたものだろう。
山吹と滝の音が響き合う情景を芭蕉は自らの旅の無常観と重ね合わせているのだろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます