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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム66 『野萱草のつぶやき』

2014-10-27 00:19:53 | ポエム

 

    ノカンゾー

    (城跡ほっつき歩記)より

 

   

カンゾー先生 ちょっと往診お願いできませんか

草むらから ノカンゾーの花が声をかけた

このところ体調をくずして 何もしたくないの

もしかしたら 肝臓が悪いんじゃないかと思って

 

先生 わたしの顔をよく見てよ

なんとなく顔色が悪いでしょう

陽のあたる場所に置いてもらったのに

気持ちが晴れないのよ

 

そうかい よく眠れば元気になるさ

たしかに 一番厄介な病気は肝臓炎だが

きみの場合は 気迷い病かもしれんな 

愚にもつかないことで 悩んだりするのは良くないよ

 

先生 ほんとうはわたしのこと好きなんでしょ?

見習看護婦のソノ子が カンゾー先生に抱きつく

無償で体を与える相手は先生と決めた娘が

抑えきれない生命力を モンペからむき出しにする

 

往診のカンゾー先生は 野萱草を前に立ち往生する

夏のひかりは 時として肝臓色

きみの思い込みは 若さの早とちり

GPTもGOTも正常じゃ 草むらが似合う娘には関係ない

 

先生って酷い人

わたしの心は機能不全に陥っているのに

どうして肝臓病だと認めてくれないの

忘憂草などとからかって わたしを辱めないでください

 

七月下旬の昼下がり

ソノ子は鯨に誘われ海に染まる

銛一本をたずさえて カンゾー先生の心臓をねらう

寂寞に耐えかねて ひたむきな愛に歯ぎしりしつつ

 

カンゾー先生!

カンゾー先生・・・・

生きるのは切ないです

わたしの訴えを どうして聴いてくれないのですか

 

 

 

  * 『カンゾー先生』=(坂口安吾の小説・今村昌平監督による映画)

 

 


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4 コメント

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別名をベニカンゾウとも (塚越和夫)
2014-10-27 02:03:12
撮影場所は奥武蔵のハイキングコースである堂平山へと向かう林道の道端でした。
標高約400メートルほどの日当たりの良い南側斜面でしたが、元々ニッコウキスゲなどの高山植物ではないことから生育自体はこの辺りが限度のようです。
数株が夏草の中で小群落を形成し繁殖し、本来はある程度の湿り気を好むといわれていますが、この場所はほとんど湿り気を感じるような環境ではないことが影響しているのか、花の色合いはいくぶん薄めのオレンジ色をしておりました。
いわゆる「ベニカンゾウ」という種類に相当するのではないかと思われます。
このため夏草の茂るなかでも、あたかも「熱き血潮」を連想させるようなひときわ印象い存在でした。

いつもご紹介をいただき心より御礼を申しあげます。
返信する
「熱き血潮」を感じました (tadaox)
2014-10-27 14:55:51
(塚越和夫)様、いつも詳細に背景説明をしていただき、画像が一層魅力的に感じられます。
野の花には種を同じくしながら微妙に枝分かれするものが多く、なかなか厳密にこれと言い切れない例が多いことも知りました。

今回のノカンゾーにも「ベニカンゾー」という種類があるのですか。
いかにも「熱き血潮」にふさわしい色で、感銘を受けました。ありがとうございました。
返信する
スポットライト (aqua)
2014-10-29 10:16:47
tadaoxさま こんにちは

ノカンゾーと甘草は同じ植物で
甘草は漢方薬かな~程度しか知らず
ノカンゾーの花は山百合たと思ってました(^_^;)

知らないことが多すぎますね
もっとじっくり目を凝らして
野草に目を向けないといけませんね

カンゾ-先生
ソノ子の熱い情熱がヒシヒシと伝わってきます
ノカンジーもソノ子も
どちらも生きる力のすざましさに感じ入り
見落としがちな野の花々にも光りを当て
主人公にされるtadaoxさまの
感性と文章力は素晴らしいです






返信する
野草は難しい (tadaox)
2014-10-29 23:17:41
(aqua)様、こんばんは。
野草の名前はなかなか覚えられないし、似た種類の区別も全くわかりません。
ブログを見ていると、みなさんよく知っているので驚きです。

カンゾー先生は、いかにも今村昌平監督好みの人物で、仰有るとおり生きる力の素晴らしさに圧倒されます。
いつも励ましのコメントをいただきありがとうございます。
(中村のサヨナラ見事でした)
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