田中将大の、日本球界への復帰会見を見て、立派な男になって帰ってきたなという驚きがあった。
明確なビジョン、正直で誠実な受け答えに、経験豊かなビジネスマンを前にしたような、頼もしさを感じた。
ヤンキースで、6年連続二けた勝利の実績を持つ男が、復帰に際していくつかの懸念を口にした。
一つ目は、8年前に24勝0敗という驚異的な記録でリーグ優勝と日本一をもぎ取った男への、期待の大きさについて。
「皆さんの記憶は、2013年で止まっていると思うんですよ」
確かにプレッシャーを感じるのは無理もない。
しかし、やるからには再び全力で日本一を目指す決意を口にした。
彼が気にかけていた懸念の二つ目は、楽天との2年契約が「腰かけ」と思われるのではないかということであった。
「ぼくには、アメリカでやり残したことがある。・・・・日本での契約が終わったら、再度アメリカで野球をやりたいと思っている」
その含みを残した2年契約だったのだ。
決して腰掛けでなく、本気で日本一になりたいと心から思っての決断だと、生半可な気持ちではないことを強調した。
「アメリカに残るか、悩みに悩んだ」ともいう。
正直じゃないか。
ぼくは、田中将大が日本に帰ると聞いた時、「そりゃ早すぎる」と思った一人である。
だが、彼の発言を聞いて、たちまち納得した。
やり残したこと・・・・とは、やはりワールドシリーズに優勝し、チャンピオンリングを手にすることだ。
彼がアメリカに渡った時からの、悲願ともいえる。
最初の思いを諦めず、いまも明確なビジョンを維持していることに感心したのだ。
男は、いつの間にか成長する。
やはり、アメリカの球界で揉まれた厳しさが、言葉や態度にも自ずと現れたのだと思う。
楽天時代の、抜きん出てはいたが、野球という括りの中での田中将大が、今回は人間的な幅と奥行きの深さを備えたジェントルマンとして日本に帰ってきたのだ。
外部からは、日米の公式球のサイズや登板間隔、それにストライクゾーンの違いを指摘する意見があるが、それらはいずれも彼がすでに克服してきた課題だ。
楽天でもヤンキースでも活躍できたという事実は、田中将大という男がいかにクレバーかということでもある。
とりあえず2年契約にした彼の思いは、コロナ禍が収まった後の日米の野球発展に、きっといい形で実を結ぶだろうと期待している。
(おわり)
プロ野球界には、いそうでなかなかいない故郷想いの誠実なタイプです。
米で6年連続二けた勝利ですから、向こうで続けたかったでしょうにね。
そうそう、日本での24勝0敗で日本一だった年の感動を思い出します。
野村監督の「マー君 神の子 不思議の子」、言い得て妙です。
田中将大の会見よかったですね。
そう、いそうでいない誠実な男だと思います。
本当は大リーグで頑張りたかったのに、コロナ禍でやむを得ない帰郷でした。
でも、楽天でも最高のプレーを見せてくれるでしょう。
ソフトバンク1強のプロ野球が、これで面白くなりそうです。