どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム195 『カタバミと蝶と女の子の話』

2018-05-13 01:00:17 | ポエム

 

     三角カタバミ

    (城跡ほっつき歩記)より

 

 

 

  六月は家庭に何かが起こる月

  エミちゃんは父さんに子犬を捨てられた

  マンションのクローゼットに隠しておいたのに

  父さんの出勤前に見つかってしまった

 

  母さんには内緒にするように頼んでおいた

  ちょっとの間だけよと見逃してもらったが

  シロがクンクン鳴いたので

  父さんが気づいてしまったのだ

 

  ここでは犬も猫も飼えない

  契約違反をしたらお家から出ていくしかないよ

  だから捨てるとは言わなかったが

  シロを入れたダンボール箱ごと車に積み込んだ

 

  母さんのとりなしも無駄だった

  エミちゃんは泣きながら公園に走った

  お父さんのバカ マンションなんて大嫌い

  道端の小石を拾って思いきり投げた

 

  石は意志を持ったようにまっすぐ飛んだ

  虞れが叫びとともにゴム紐のように伸びた

  草むらにはムラサキシジミ蝶がひそんでいる

  エミちゃんの心は後悔で引き裂かれた

 

  一年前に公園でシジミ蝶に追いかけられた

  カタバミから飛び立った蝶が礫のように迫ってきた

  あの時以来エミちゃんは蝶と目を合わせられない

  今はお父さんに石を投げたようで飛び立つ蝶が怖い

 

  虞れが伸びきったところからパチンと戻ってくる

  飼えないとわかっているのに拾ってきた自分が悪い

  お父さんだって困っていたに違いない

  シロにもシジミ蝶にもわたしは悪い子だった

 

  六月は今年も何かを運んできた

  生きものにとって厄介な季節なのだろうか

  それでもみんな運命を受け入れている

  シロもどこがで優しい飼い主にめぐりあっているはずだ

 

 

 

 

 

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4 コメント

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子犬 (塚越和夫)
2018-05-13 21:49:23
こんばんは。

ふと思い出したことがあります。
ある日のこと、生まれて間もない子犬がに段ボールに入れられ自宅玄関脇に置かれておりました。
ところが、その当時は大の犬嫌いの母親が健在。
早速どこかほかに置いてくるようにと、自分に命令が下りました。

その後半年もたたないうちに、また同じようなことが・・・
2匹目の子犬はとても人懐こく、近所の雑木林から懸命に走って戻ってきました。
止むを得ず今度は少し離れた雑木林まで・・・

自分としては飼えるものなら飼っても良いと思ったのですが、子どもの時に犬にかまれた経験のある母親には全く通じません。

もう半世紀以上も前のできごとですが、未だに苦い記憶として残っております。
そんな動物嫌いの母親でしたが、晩年には人柄も変わり娘の拾ってきた雌猫や生まれた子ネコには愛情を示すようになっていました。

この画像は2年前の6月に横浜市郊外の道路脇の花壇のような場所にて撮影したものです。
気温の変化には滅法強い多年草で、元々は園芸用に輸入されたもののようです。
ただし加湿と虫害には弱く、三角形をした多肉質の葉はよく虫食いとなっているのを目にしますが枯れるようなことは稀です。

ポエムの趣からはだいぶ外れてしまいましたが、ふとこうした記憶が甦りました。
有難うございました。
返信する
瓜二つのお話 (tadaox)
2018-05-14 12:07:35
(塚越和夫)様、瓜二つの状況があるんですねえ。
子供にとって、生き物との接し方は人生の難問ですから。

親の気持ちもわかるし、子供も悩むんですよ。
貴重な経験をお話いただき、ありがとうございました。

三角カタバミ、この画像では綺麗に写っていますが、虫に食われることが多いんですか。
今回もいろいろご教示いただきました。感謝。
返信する
優しかった弟の思い出 (ウォーク更家)
2018-06-05 13:35:11
この詩を読んでいて、ふと、幼くして亡くなった弟のことを思い出して胸が痛くなりました。

それが六月だったか否かは覚えていませんが、弟が学校帰りに、捨て犬を拾って来ました。

父母が犬を飼うのはダメだと叱ったら、気の優しい弟は、その捨て犬と一緒に家出してしまいました。

父母も仕方なく、その捨て犬を我が家で飼うことを許可しました・・・
返信する
こどもの心 (tadaox)
2018-06-06 00:42:45
(ウォーク更家)様、こんばんは。
捨て犬と優しい弟さんの家出・・・・こどもが遭遇する普遍的な試練ですが、こちらも胸が痛みます。

まもなく梅雨入りの予報が出ています。
ウォ^ーキングにとってはどのような受け止めなのでしょうか。
近いうちに、あじさい寺に行ってみようと思っています。
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