昭和〇〇年の夏休みに、田村一郎の提案で遊び友達総勢4人がルリ色の石を探すことになった。
ガキ大将の田村一郎は関西出身の大柄な中学一年生で、何かにつけ「そうや」と返事をするのでタム・ソーヤのあだ名をつけられていた。
そうなると当然、ほかの三人も八田はハック、蛭田はビル、おとなしい舟木はジミーと愛称で呼ばれることになった。
「俺たちは今夜家を抜けだしルリ色の石を見つけるまで帰らない。家族が心配すると厄介だから田村の家で宿題をやると書き置きしてきてくれ。それと一週間分の食料、飯盒、マッチ、レジャーシート、毛布などを忘れないように。」
「ところでルリ色の石ってどんなものなの?」ビルが聞いた。
「お前らもアインシュタイン博士は知ってるだろ。おれの読んだ本によれば地球に降り注いだ隕石のうちルリ色の隕石には宇宙の原型が封じ込められていると予言したらしい。拾ったら大発見になるじゃないか」
「アイ~ンしたいんだったら志村けんが知ってるんじゃないか」ハックが混ぜ返す。
「バカにしてろ。そういうやつにはルリ色の石は見つかりっこないぞ」
「案外、多摩湖から出てくるかもしれないじゃないですか」あくまでもハックはタム・ソーヤと対等の友人だった。
タム・ソーヤたちの住まいはむさしの市にあったから、とりあえず多摩川の中州にある芦原を目指すことにした。
そこなら新しい葦が繁茂していて誰にも見つからない隠れ家になるはずだ。
4人はひとまずその芦原の中で一夜を過ごした。
寝床を作るのも忘れてレジャーシートの上に座り込んで興奮のうちにおしゃべりをして夜を明かしたのだ。
翌朝、二人ずつ背中合わせに寄りかかりうつらうつらしながらタム・ソーヤが「腹減ったなあ」と声を上げた。
「ほんとだ、もう11時だぞ」ハックが同調した。
「よし、ブランチを作ろう」ビルがリュックを開けて食パンとアルコールランプを取り出した。
飯ごうの蓋をプレート代わりにして次々とトーストする。
普段は母親が作ってくれる食事を何気なく食べていたが、いざ調理してみると食べるまでにこぎつけるのは大変だと思い知った。
4人がブランチを取り終わったとき、芦原の外からいきなり声をかけられた。
「おーい、君たちそこでなにしているの?」
一瞬4人ともビクッとしたが、声をかけた相手を透かし見た後タム・ソーヤが落ち着いて反応した。
「そういうお兄さんこそ、何しているんですか」
「ああ、これは失礼。まず名を名乗れ・・か。ぼくは近くの薬科大学の学生で、ツツガムシの調査をしているんです。君たちも枯れた蘆の上にいつまで座っているとツツガムシ病にかかる恐れがあるから早くそこを離れたほうがいいよ」
ヒエーっと驚いて4人は芦原を飛び出した。
出たところで大学生が笑っている。
「脅かしすぎたかなあ。でも、いつ再発しないとも限らないから、僕たちが調査していることを覚えといてね」
タム・ソーヤたちは大学生に頭を下げそそくさと多摩川の土手に這い上がった。
〈つづく〉
「トムソーヤの冒険」は面白かったですね。
夏休みの宿題にかこつけて夜家を抜け出したものの一週間も持たずに引き返す羽目になりそうです。
子供のころの夢想を実行した結果がどんなものになるでしょうか。
難しそうですね。
一週間分の食料、飯盒、マッチ、レジャーシート。。。
大掛かりな冒険になりそうです。。。(笑)
「トムソーヤの冒険」のようです。