ニコヤカクモ
(ナショナル・ジオグラフィック)より
世の中には 想像もつかないものがあるものだ
ニコヤカグモと名づけられた けったいな蜘蛛のことだ
蜘蛛族には風変わりな連中が多いが
こいつを見たときは思わず手を拍った
大手をひろげ 大口あけて笑うヤツ
ちっちゃな目と 麻呂のような眉
思いっきり間延びしているから
ヨシモト一の お笑い芸人のよう
世界中の蜘蛛のうち 99.9パーセントが肉食系
だけど一種類 木の芽を好む草食系がいるのを知ってるかい
他に 小川を跨いで大網を張るアフリカ系のスパイダー
投げ縄を投げるカウボーイや 体長の5倍も飛ぶ忍者もいる
どいつもこいつも 基本は尻から出す魔法の糸
ほとんど神頼みのような技術だが 実にそいつが神業なんだ
だけど ニコヤカグモには負けるね
こいつを前にしたら 受験を失敗したあとでも笑えると思うよ
神様は なんという珍妙なものを造ったのだろう
腕に引っ掛けた花籠には 真綿にくるんだ生命の種子
成層圏の内側に 笑いのタネを蒔こうというのか
両手両足おもいきり広げて チアガールのように飛び跳ねるか
世界中の観客の目を引きつけ ニコヤカグモはただいま絶好調
カエルを捕食するウオツリハシリグモも
コウモリを捕らえるコガネグモの仲間も顔色なし
地球一のコメディアンは 今日もこの世を笑いで満たすのだ
愉快な蜘蛛ですねぇ。
その〈説明文〉もまた、傑作。
地球上には、実にさまざまな生き物が存在することを改めて知らされますが、ヨシモト系の芸人に匹敵するのは、まさにニコヤカグモでしょうか。
昔、「ナショナル ジオグラフィック」という書物に目を奪われた記憶がありますが、そこからこんな詩作を生み出す人なんて、まれでしょう。
手品のようなものですね。
また次なる傑にも期待いたします。
幼い子供たちが先入観なしに目を輝かせるのも、やっぱり昆虫が作り出す「御伽の国」かと思います。
丑さんもナショナル・ジオグラフィックに興味をもった時期があったそうですが、科学的なアプローチの中にも「夢」があったのではないでしょうか。
ボクも3年分ぐらいの雑誌を保存していたのですが、それ以降は購読をやめました。
コメントありがとうございました。