どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム54 『海からのムラサキケマン』

2020-11-06 00:07:29 | ポエム

ニュルニュルと穴から顔を出すマテ貝のように

海藻とともに揺れるイソギンチャクのように

ムラサキケマンが咲きはじめる

 

この地球には空と海と陸があるが

空から降ってきた生命のタネを

海が育て陸にもおすそ分けしてきた

 

海の恩恵をうけた魚や貝や海藻たち

陸にあがって動物や植物に進化したものたちは

それぞれに親和した姿を見せるのだ

 

ムラサキケマンは貝の化身

マテ貝が殻を脱いだ裸身の輝きに

目を細めた木漏れ日が四月の風を贈る

 

ゆらゆらと海藻がそよぐ野原だから

ムラサキケマンの進化は静かに進行する

咲き乱れた後ではイソギンチャクの夢想さえ

 

海と陸と空がグーチョキパーで戯れる

この目に映る永遠は永遠に永遠だろうか

ムラサキケマンは宇宙の火花となるのだろうか

 

それとも宇宙の意識の中心に立って

華鬘の記憶をたどるのだろうか

  

 

 

 * 紫華鬘=仏殿に飾られる華鬘(けまん)に花の咲く姿が似ているとしてつけられた名前。

 

(『海からのムラサキケマン』2015/09/14より再掲)


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