ニュルニュルと穴から顔を出すマテ貝のように
海藻とともに揺れるイソギンチャクのように
ムラサキケマンが咲きはじめる
この地球には空と海と陸があるが
空から降ってきた生命のタネを
海が育て陸にもおすそ分けしてきた
海の恩恵をうけた魚や貝や海藻たち
陸にあがって動物や植物に進化したものたちは
それぞれに親和した姿を見せるのだ
ムラサキケマンは貝の化身
マテ貝が殻を脱いだ裸身の輝きに
目を細めた木漏れ日が四月の風を贈る
ゆらゆらと海藻がそよぐ野原だから
ムラサキケマンの進化は静かに進行する
咲き乱れた後ではイソギンチャクの夢想さえ
海と陸と空がグーチョキパーで戯れる
この目に映る永遠は永遠に永遠だろうか
ムラサキケマンは宇宙の火花となるのだろうか
それとも宇宙の意識の中心に立って
華鬘の記憶をたどるのだろうか
* 紫華鬘=仏殿に飾られる華鬘(けまん)に花の咲く姿が似ているとしてつけられた名前。
(『海からのムラサキケマン』2015/09/14より再掲)
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