『アイソン彗星崩壊』の暗示するもの
NASAなどの太陽観測衛星がとらえたアイソン彗星(中央下から左上に向かってのびる線)。
中央部の太陽に近づくにつれてぼやけている(NASA提供)
まさかまさかの展開だった。
「世紀の彗星」になると注目を集めたアイソン彗星が、2013年11月29日の未明に太陽の熱によってバラバラに崩壊し蒸発したらしいのだ。
米航空宇宙局(NASA)などが発表したのだから、残念ながら認めざるを得ない。
うまく太陽の近日点を回りきれば、12月上旬には肉眼でアイソン彗星の長い尾が見えるのではないかと期待されていたが、もう地上から見ることは叶わなくなったようだ。
当欄(168)『アイソン彗星と宇野千代と』では、専門家の解説で消滅の可能性にも触れておいたが、まさか本当に崩壊するとは考えてもいなかった。
実は多くの專門家も予想していなかった事態なのである。
さて、今回のテーマは、ここ数週間世上を賑わしている「特定秘密保護法案」と「猪瀬都知事の借リ入れ金問題」。
連日テレビ・新聞で取り上げられているから、いまさら個々の問題について言及する気はないが、大筋、国民の大多数は安倍政権の審議の進め方に不安を抱いている。
また、猪瀬都知事の5000万円という巨額の借リ入れ金の真相にも疑念を抱いている。
政治や法律が万人に平等だとは思っていないが、あまりにも権力を与えてしまうと好き勝手が始まる。
後の祭りで、恣意的に捻じ曲げられていることに気づいても抵抗のしようがない。
端的にいえば、国民が泣こうが喚こうが為政者の思いのまま、楯を突くヤツには罰を与えて檻の中に閉じ込めてしまおうという発想が湧いて出たのだ。
だから国会前デモで廃案を訴えようが、ノーベル賞受賞者らがこぞって反対しようが、日本ペンクラブが声明を出そうが、いっさい聞く耳持たず。
ひたすら短距離走者のごとく急ぎまくる。
ゴール地点に何が用意されているのか、秘密にされているので我々には皆目わからない。
いや、薄々分かってはいるが断定はできない。
本来、味方になって命懸けのキャンペーンを張ってくれるはずのメディアも、ほとんど力を持たない。
それもこれも、先の選挙で巨大与党に力を与え過ぎてしまったからだ。
ある意味、チェック機能を用意できなかった良識層の不甲斐なさに臍を噛んでいるものだから、暴走する権力を非難する声にも力が入らない。
今となっては「決められない政治」の方が余程よかったと、馬鹿な選択を悔やむ声があたりに満ちているのだが・・・・。
猪瀬都知事の問題は、まだ進行中でどのように結論づけられるのか読めない部分が多い。
誰が見ても「怪しい」と疑われる金銭授受で、誰やらの政治資金報告書虚偽記載事件と照らし合わせてみれば、グレーどころかもっとブラックに近いのではないかという人もいる。
検察の動き、都議会の動き、何より「時の動き」が加味するから予測がつかない。
イスタンブールをこき下ろした際の迂闊さと、その後の運の良さから、今回の失態もオリンピックという免罪符に助けられていっとき逃げ切れそうな気配もある。
もちろん運だけではダメで、いくつかの「妖しい」味方に恵まれることが条件だが。
国政にせよ都政にせよ、権力は短距離走者のごとく急ぐことで何かを隠蔽し、自分たちの思いをギリギリ成し遂げてしまうのではないか。
存分に素早く物事を決められる環境を与えてやれば、きっと国民の望む形で成果を出してくれると錯覚した支援者を置き去りにして、足早にバーチャル画面を通り過ぎるのだ。
日本には「走狗」という言葉がある。
誰かのために自ら企んで使いっぱしりの役をすることだ。
眩いばかりの報奨に喜び、あまりにも急ぎすぎると、その時は上手くいったように見えても、かならず後に落とし穴に嵌る。
何を思い、誰のために、何をしたのか、そうした経緯をいっさい明らかにしないで済む法律づくりは、そのための煙幕だろうか。
ツベコベ言いそうな国民の目を塞ぎたいという意図が丸見えの法律を、大忙しで間に合わせようとしている。
残念ながら、彼らの思惑通りにことは運びつつあるが、「天網恢恢疎にして漏らさず」という真理が厳然と横たわっている。
「傍受」で揺れたアメリカ合衆国でさえ、自国民にこれほど不自然なマヤカシを強要していない。
いつの日か、思い知らされるときが来る。
今回のアイソン彗星の崩壊を目の当たりにして、宇宙運行の正義の前では人の浅知恵などたちまち瓦解するに違いないと思った。
夜空があんなに美しいのは、情緒ではなく摂理に覆われているからだ・・・・。
大日如来、あるいは太陽神ラーの前では、小惑星の氷の塊を抱えて飛んできたアイソン彗星が崩壊するのは当然だったのかもしれない。
目先の理(利)にこだわる人間に、何がしかの啓示を与えた天体ショーであった。
(おわり)
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