どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

脳に沁みた『孤独のグルメ』

2021-08-22 12:02:33 | コラム

土曜日の午後、何気なくテレビのチャンネルを回していたら、気になる俳優の一人である松重豊が出ていた。

どうやら、街中の食堂で席に着き、メニュー片手にこれから何を食べようかと思案する場面だった。

(おっ、これは、あれか?)

画面の隅に表示されているタイトルを確かめると、やはり『孤独のグルメ』と書いてある。

これを観ようと思ってみたことは一度もないが、深夜スポーツ総集編みたいのが終わった後、街をほっつき歩きながら食堂の看板を見上げる松重豊の姿に何度か出会っていた。

何気なく見ていると、いつの間にか引き込まれている。

(そう、そう、彼はセールスマンで、商談が済んだ後、その街の旨そうな食堂を捜して、がっつり食べるというストーリーだった。)

いつも、そうだ。

最初にこの番組を観たのは、たしか群馬県の下仁田の食堂で食する松重豊の姿だった。

下仁田の埃っぽい風景と、スーツ姿の松重豊がてくてく歩くシーンのギャップが妙に印象に残っている。

彼が何を食べたのかは覚えていないが、食堂の親父があまりにも田舎いなかしていたので、しばらくの間ドキュメンタリー風の単発番組かと思って見ていた。

ただ、下仁田は贔屓の町なので、この地が登場したことに「何ごとぞ!」という興味を抱いた。

それ以降、2か月に1回ぐらいの頻度で、この番組(テレビ東京での放映だから、大多数の方はそんなの知らん?)に遭遇する。

面白さの第一は、まず松重豊の表情。

毎回、店内に貼ってあるメニューを眺めながら、あれにしようか、これにしようかと悩む様子がリアルなのだ。

時々、すでに食べている客の手元を窺ったり、今まさに出来立ての料理を運んでくる女将のトレーの上に目をやったり、落ち着かない。

あとから来た常連客が先に注文しても、まだ迷っている。

カップルが、二人とも同じメニューを注文したりすると、

(おお、これが、この店の人気メニューか・・・・)ということで、つられたように手を挙げる。

「お決まりですか」の声で、これとこれ、と注文が終わっても、まだ、これも食べてみたい・・・・と独白が字幕で流れる。

そう、役者の表情と同時に、独白を表示する字幕が面白いのだ。

昨日観たのは「シーズン6」の再放送なのだが、食材に対する店主のこだわりや、主人公の思い入れが限りなく盛り込まれていて、飽きさせない。

どういうゲリラ的な企画なんだろう。

「シーズン5」では、原作者が実際の店を訪れて、ああだこうだと蘊蓄を傾ける。

松重豊とは全く違うタイプの原作者は、久住昌之という名前らしい。

いかにも、食べることに美学を持つ中年男の顔だ。

遅ればせながら、松重豊が演じる主人公は、井之頭五郎という風変わりな名前である。

原作者登場の際に再確認できた・・・・ということは、どうやらかなり前に吉祥寺のお店を舞台にした回を観ていたのかもしれない。

井之頭→吉祥寺。

もしかしたら、あの店だったかも・・・・。

けっこう、見ちゃったなあ。

『孤独のグルメ』というタイトルを意識して、ここまでじっくり見たのは初めてだ。

馴染みのない方には、無理やりお付き合いさせてしまったかもしれない。

きのう最後に登場したシチューの画を思い浮かべながら、同じように遠くを見る目つきをしてみる。

 

    (おわり)

 

 

 

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