タム・ソーヤに誘導されながらもハックがぶつぶつ呟いている。
「ムロって冬場に樹木や野菜をかこうものだろう? 真夏にムロなんてあるわけないだろう」
実はタム・ソーヤも自分の間違いに気づき始めていた。しかし、言い出した手前引っ込みがつかない。
「ほら、夏でもちゃんとムロがあるじゃないか」
たしかに4人の前方に屋根のついた小屋があった。
だが、よく見ると戸が閉まっていて小屋全体に鎖ロープが巻かれている。
「あれ、これってムロじゃなくて無人の野菜直売所じゃないかな?」
ビルが言った。
「そうか、それじゃ引き返して今夜は野宿だな」
タム・ソーヤの方針転換に皆一斉に「ええーっ」と不満を漏らした。
しかし、現状は変えようがない。
幸い月明りがあったので多摩川の堤までもどった。
誰一人通らない道にレジャーシートを広げ、拾い集めた小枝や枯草で焚火をした。
飯盒でペットボトルの水を沸かし皆でのどを潤した。
食パンをそのままちぎってムシャムシャ食べ、それぞれ大学生にごちそうになった中華そばの味を思い出している。
「俺も仕送りしてくれる親が欲しいよ・・」
タム・ソーヤのボヤキがそれぞれの胸に染みた。
突然サイレンの音が近づき、強力なサーチライトに照らされた。
「君たちそこで何をしてるんだ」
4人とも大慌てしたが逃げ隠れする余裕もない。
「はい、実は僕の家で夏休みの宿題を勉強していたんですが、夏の夜空にかかる星座を発見するという項目がありまして月が早く地平線に隠れるのを待っていたんです」
「本当か、家へ連絡するけどいいか?」
「はい、電話番号は〇〇番です。住所はむさしの市です」
「とりあえず、この場所での焚火はだめだよ。また119番通報があると緊急出動しなきゃならんからな。家へは後で連絡することになるからその旨家族の方に知らせておきなさい」
消防車は帰っていったがすぐにパトカーがやってきて、中学生の非行を疑われた。
その時もタム・ソーヤが宿題の話をうまいこと繰り返し、星座が見られるまで堤防の上で時間をつぶしていたのだと説明した。
消防との連携でタム・ソーヤの電話番号や住所が確認できたので焚火さえしなければ朝方までその場にいてもいいことになった。
みんなは改めてタム・ソーヤのリーダーとしての非凡さを認めたのだった。
参考=夏の大三角・画像
なかなか出来ないのが現状です。
さそり座がイイですね。。。(^∇^)
夏の星座も綺麗ですね。
トム・ソーヤの機知にとんだいたずらにはかないませんが、日本版タム・ソーヤはピンチをくぐり抜ける才能が有ります。
そんな子供が周りにいますよね。
行き当たりばったりなのですが、次の展開がうまく回っていくという・・
夏の星座も昔はよく見えたのですが、最近は街の明かりが夜空をなくしてしまいました。
大人になってからも、似た傾向の映画「スタンドバイミー」がF大好きでした。
アインシュタインの「地球に降り注いだ隕石のうちルリ色の隕石には宇宙の原型が封じ込められている」という予言はロマンがありますね。
この主人公の消防車とパトカーへの臨機応変の対応力には感心します。
「トム・ソ^ヤの冒険」と「スタンドバイミー」はぼくも大好きです。
それだけにタム・ソーヤの設定には勇気がいりました。
マーク・トウェインの足元にも及ばないことを意識しながら、無謀にもスタートしてしまいました。
ルリ色の隕石探しに端を発したアインシュタインの宇宙の原理」説をデタラメと言わずにロマンと表現していただき感謝に堪えません。
タム・ソーヤには言い逃れのリーダーシップで先へ進んでもらいます。