どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム141 『悲しみの千日紅』

2016-11-27 00:15:46 | ポエム

 

     千日紅

    (城跡ほっつき歩記)より

 

 

母が飛んだ

夕暮れの空へ飛んだ

団地の花壇には苺のような千日紅

ついばむ鳥が嘴から突っ込んだ

 

娘は電気もつけずに泣いた

頼りの父は半年前にツガイの相手を変えた

今どこのねぐらに籠っているのやら

見捨てた団地の窓をテレビは写すだろうか

 

娘は泣き疲れたまま眠り込んだ

目ざめると闇のなかで囁く声がした

おまえは一人ぼっちになった

もう世の中とつながる手立てを失った

 

学校を追われ友だちも遠ざかる

3DKの部屋もやがて明け渡しを迫られる

おまえの約束の地は寒ざむとした施設

それが嫌なら男が提供する一夜の宿めぐり

 

青むらさきの朝が明けていく

娘は体をぶるぶるっと震わせた

一人ぼっちだというのなら独りでいい

世の中とつながれないなら繋がらなくていい

 

娘は代わりに言葉を友だちにした

街をさまよい吐き捨てた恨みが跳ね返るとき

それでも言葉はやさしく音色を奏でる

母が啄んだ千日紅の滴りさえ受けとめて

 

夜よ二度と来るな

強そうに見えても闇の重みは心を押しつぶす

朝も再びめぐってこなくていい

ことばが夢の中で逃げまどうのなら・・・・

 

  


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