ニューカッスルは北国。緯度で言えばモスクワと同じくらいに位置します。日本からみれば、稚内どころかロシアの縦に長~いサハリンも通り過ぎ、オホーツク海に出てしまうほど北です。
というわけで、冬はものすごく夜が長い。朝の8時ではまだ深夜のように真っ暗。午後3時には日没です。さらに空はいつでも雨雲に覆われ、ずっと雨が降っています。暗~~いところなんです。
道路が乾くことはありません。ずっと濡れています。太陽は滅多に見ることができません。お昼頃に長く真っ直ぐな通りを横切るとき、地平線付近まで見えるようなところにたまたま太陽があると、おお!と再会することがあります。正午でも低~~い位置にあるので、ほとんど真横からの光線です。それくらい「実質夜」の生活が続くのです。
長い冬の季節、鬱病になる人も多いそうです。しかし私はもともと夜行性だし、部屋にこもって本を読んでいられる生活だったので(長年憧れていたパターン)、まさか自分が「太陽の光がほしいよ冬の憂鬱症候群」(これほんとにあるの)にかかるとは思いませんでした。
時期は年末も近い頃、喉に違和感を感じたのでした。食道に何か固まりでもある感じ。さらに胸も痛い。さすがに不安になったので、しかたなく病院へ行く。異国で死にたかねーよなぁ~w 胸の痛みを訴えたせいか、しきりに心臓病の心配をされる。うげげ。最後に薬の話になり、「アールジーはあるか」と聞かれる。
“algae? ”(海草???)
なんでこんなところで「海草」が出てくるんじゃ?
ちなみに英国暮らしが始まってから、私はずうっとまずい英国の食べ物に耐えていた。最初はそれもいいかな、と思ったのです。あるとき日本の友人が、魚沼産のコシヒカリ2合と浅草の老舗「海老屋」で買った昆布の佃煮、インスタント味噌汁のセットを送ってくれた。これが泣けてくるほどうまかったのだ。
英国人はめずらしそうに「これは何だ」と聞いてくる。昆布を指させば「海草だよ」と答え、ワカメの味噌汁を指させば「海草だよ」と答えるしかない。英国人は海草を食べない。浜辺に落ちている気持ち悪いゴミとしか見ないので、旨そうに食っている俺を変な顔で見たりするわけだ。わからんでエエ!わかってたまるかいっ!
しかし心臓病の心配をしている医者が、俺が先日海草を食ったことを知っているわけもない。しかたなくその場で辞書を出してみた。すると~~w
“allergy”(アレルギー)だったか・・・。同じ発音なんだよ。。。w(゜゜)w
さて薬を飲んでも、胸の痛みはしばらく続いた。しかし突然その原因がわかったのだ。あるとき向かいの部屋で、普段からうるさいモーリシャス女がいつもの喚き声を発したとき、胸がキュキュキュと痛み出したのである。
そおかぁー!これはストレスだったんだっ!!!
まさかこの俺様が精神的に追い詰められているとは思いもよらなかったのである。考えて見れば、好きなこととはいえ読まねばならぬ本は山ほどで、書かねばならぬものは果てしなき道のり。2~3ヶ月太陽を見ない生活が続いて、私の精神は徐々に蝕まれていたのだ。太陽エネルギーが切れかかり、カラータイマーが点滅していたのだ。というわけで、しばし北国を離れ、太陽を見に南国へ飛び立つ決心をしたのであった。