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さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

ハマトンの「知的生活」と無知のヴェイル

2024年04月25日 | 北海道シリーズ


*スナックのママさんが「持って行って部屋で食べろ」とくれた筋子、タラコ、鮭、
そしてご飯の上に乗っているのが今が旬の行者にんにく。うーまーいー♪

3カ月に及ぶ北海道滞在にいろいろ本を持ってきましたが、その中の1冊がPhilip Gilbert HamertonのThe Intellectual Life (1873)です。大学生のときに買って拾い読みしましたが、今までほうっておいたので、この度改めて通読してみようかと思ったわけです。『知的生活』なんて、隠遁生活にはぴったりではないですか。

もう最初のほうで感動する一節がありました。

疑いなく、もっとも大事な徳というものは ”disinterestedness” だと私には思われるのです。
*これを辞書で引くと「無関心」「公平無私」「無欲」なんてのが出てきますが、ちと違う。「偏見、または、自分勝手な動機から解放されていること」というのがだいぶ近い。「禅味」というのがあったが、説明が足りないようで一番近い気がします。

このはっきりした答えのあとで、どうしてこの考えに至ったのかを言わせてもらいましょう。その他の重要な徳をひとつひとつ取り上げてみることから始めたのです ― 勤勉、根気、勇気、規律、謙遜、その他もろもろ、、、そして自問したのだ。どんなところにも、こういった徳をすでに持っていて、さらにそれらを培っているのに、それでも知的な自由に反する人がいるのだなあと。・・・そこに抜けているのは ”disinterestedness” だったです。

たしかに決して傲慢にならずに、ひたむきにしっかり頑張れる人だって、間違った方向に突っ走ってしまうことがある。「自分のために」「家族のために」「会社のために」「お国のために」では目が曇るのである。男の政治家には「男女平等」は進めにくいだろう。若いうちは天引きされる社会保障費を少なくしてほしいだろうし、年をとれば年金を増やせと思う。そういう「利」から自由であること、それは大事なんだろうけれど難しい。

ハマトンから100年経って、ジョン・ロールズという哲学者が「無知のヴェイル」ということを言っています。さて私は中年男で五体満足で酒と煙草が好きで豊かな日本のなかでも富裕層には属さない人間です。だから「女は慎ましいほうがよくて、健康だから社会保障費は少なくて、酒・煙草の税金は少なくて、金持ちからは税金をたくさん取って、いずれもらう年金は多いほどいい!」なんて思ってしまいそう。これが違う星の元に生まれていたら、「社会的弱者には手厚い補助を出してもらって、酒や煙草の税金は10倍でいい、年金なんてのは自助努力にして給料から天引きならん、女は控えめなんて価値観はふざけんじゃねーよ!」とか言うかもしれません。だから自分は男なんだか女なんだか、白人なんだか黒人なんだか、五体満足・不満足、日本人なんだかパレスチナ人なんだかわからない、「無知のヴェイル」を被った無自覚の人間、いわばどんなところにどんなふうに生まれるかわからない生前の状態になってみて、それでルールを考えてみようではないか。そこで初めてフェアなルールが考えられるってもんだぜ、という提案なのです。

これこそハマトンの言う ”disinterestedness” ではないですか。これは恵まれた環境にあるならば「譲れ」とか「思いやり」とかいう道徳的なものではありません。目を曇らせるヴェイルを取り払い、いわばクリアな「精神の自由」を獲得するようなものではないですか。