宿のば~ちゃんに、いい感じの居酒屋はどこかと聞いたら、「田舎家ね。お酒も郷土料理も
揃ってるわよ」と勧められた。「場所は市役所の前よ」ときたもんだ。
やはりな。。。 どこの街でも、いいモノを出す店(ちと高いということだ)は、必ず
役所のすぐ近くにあるものだ。地方でしっかり給料をもらえて潤っている職業、それは
公務員。都会では「まあね」という地位だが、田舎では数少ないエリート。地元の学校で
一番成績のいい奴が都会の偏差値の高い大学に行き、故郷に錦を飾って親孝行となる仕事、
それが役人。そいつらがちょっといい居酒屋に来ると、少し態度がデカかったりするので
ある。(ちなみに私の友人の公務員夫婦はとても人がいい。もちろん威張っている奴は
一部なんですけど)不愉快な思いをするのは、自分が偉いと勘違いしている奴らですw
しかしコロナ禍にあっては、役所もおそらくは「自粛令」が出ているのであろう。
店にはほとんどグループ系がいなかった。
しかし地酒のラインナップは流石に「役所前」!(この言葉、使えねーか?)
「写楽」は特に好きな酒。しかしレアものに行きたい。「会津娘」はあまり好きでは
ないが、純米の生は未経験だしなあ。
というわけで、「豊國」純米吟醸に。さらりと上品だが、きちんとふくよかさもある
ではな~い~かっ♪ 店のお嬢さん、「あっ!手が写っちゃいました?」と慌てる。
いいよねえ^^ 顔を入れちゃルール違反だけどさ。
やはりこのご時世、しばらくはひとり酒でした。なんかもったいないよなあ。
俺みたいにひとり静かに飲むのなら、別に感染症が広がるわけもなかろうに。
会津地方に来た最初の晩ですから、にしんの山椒漬(これが醤油と塩の二種類盛)と
馬刺しです。ヒレを注文しましたが、これが極上品で柔らかいこと!さすが役所前w
利き酒セットがありました。9種類のなかから3つ選べるのです。「弥右衛門」や
「奈良萬」といったちょっと有名系は我慢して、この3つをセレクト。「吉の川」は
今日食べたラーメン屋のすぐ近くにある小さい蔵。新潟の大きな蔵「吉乃川」とよく
間違えられます。そちらのほうは、むかしとある素敵な女性とよく飲んだ・・・(+_+)
それを思い出したので、かんけーないけど3つのうちの1つに入れてみた。まずい!
馬刺しのニンニク味噌を流すのに利用。
「蔵粋」は「クラシック」と読みます。これも通ったすぐ近くの蔵ですが、ここでは
酒を作っているときに、発酵途中の酒樽にモーツァルトを聞かせるのだとか?!
酒を寝かせているときに優雅な音楽を聞かせると、味がまろやかになったり深みが出たり
と信じて(?)、ワインづくりでそうやっているところもあるようだが。。。
しかし選曲はどうする?ディベルティメントなんかはいいだろうが、「フィガロの結婚序曲」
なんて流したら味がはじけるぞ? さて飲んでみたら、、、「きらきら星」なんだか、
「レクイエム」なんだか、、、わからんぞ?!
一番よかったのが「大和屋善内」。これは今回の旅でも一番の収穫。有名な写楽にも全く
劣らない完成度。俺の脳内「極上リスト」に加わったのでした^^
次は「風が吹く」純米吟醸生。好きなうすにごり。あまり濁ってなかったけど。これも
レベル高け~ぞ。やるな喜多方。住んでもいいぞ、喜多方♪
だんだん客が入ってくると、おねいさんは忙しくなり、酒を注いだあとに一升瓶を
置きっぱなし。暖まっちゃうと気になり、横の冷蔵庫にしまってやる。気付いた
おねいさんはとっても恐縮^^;
これ何だかわかりますか?スイーツみたいですよねえ。自家製こんにゃくなんです。
食感が素晴らしい。至福系なり。酒にぴったりだぞ!
「飛露喜」も見たことのない純米無濾過生原酒。こーれーもー、うーまーいーwww
もう一回、最初から全種類!とか思う。こういうところは素敵な女性と来るとまずいな。
飲むことばっかりに気がいって放置しちゃったり、へべれけになって嫌がられたり
しちゃうじゃないか。ま、そういう人いないから心配いらないけどw
ううむ、2泊だから明日も来るか?しかし他の店も開拓しないとなあ。
2軒目はどうしようかと彷徨うが、住宅地に入り込んでしまい、しまいには
やや緊急事態が発生し、早々に宿に帰ることになったのでした。はしごは明日にw
さて前回の甲府・伊那に続いて、何度も行っている酒場巡りに会津若松を訪れることに
しました。顔がわかれば、さすがに「一見さんお断り」となることはないだろう。
新幹線からは山が見えてきました。ん?新幹線? そうです。普段なら各駅停車に
乗って宇都宮で「ギターラ」に寄ったりしそうなものですが、今回は4泊なので、
喜多方と会津若松にそれぞれ2泊ずつ。仕事の会議はオンラインでホテルから参加。
リモートの仕事が増えて、こんなことも可能になりました。不幸中の幸いってか?
福島に入り、遠くに磐梯山が見えてきました。雪が深ければ、花粉も少ないだろう。
私はいま、花粉症で目は痒いし鼻は詰まるしでうんざりなんだよ!
郡山で新幹線を降りて、磐越西線に乗り換え。やっぱり新幹線は早いな。昼には
喜多方に到着予定なのです。昼にラーメン食べないと。そのために特急料金を払うと
いうのもなんだが。。。いや、そもそも居酒屋に行くために会津くんだりまで来てる
わけで(^益^;
お~雪だ。もう20度を越したりする東京とはさすがに別世界。ラーメン、酒場だけじゃ
ねえ。こういう景色を見て山の空気を吸って、心のリフレッシュなのです。
磐梯山。素晴らしい景色。
会津が近づいてくると、その向こうには飯豊山地(いいでさんち)が見えてくる。
あの山を越えればもう新潟なのです。
お~、会津の街が見えてきた。
ここで乗り換えて、まず喜多方へ。
いつもは会津若松に連泊して、喜多方には日帰り散策に行くのだが、今回初めて
喜多方に宿泊するのです。やっぱり少し新鮮味をつけないとね^^
平日だし、さすがに観光客は全然いない。駅の観光案内所で「ラーメンマップ」を
もらう。するとひとりの若者が係員のおばちゃんに、「一番旨いラーメン屋さんは
どこですか?」と聞いた。「そりゃわかりませんよー」と苦笑い。「じゃあ有名な
坂内かな。いま空いてますか?」と聞く。「大丈夫だと思いますけど」とふたたび
苦笑い。もう13時を過ぎているので、どこも行列はないだろう~^^;
前回食べられなかった「こうへい」の「漆黒ラーメン」を食べに、街のず~っと北の
はずれまでズンチャカ歩いた。荷物を持って、汗までかいたよ!するとこれだ!
今回は定休日を確認してきたのに。まあいい。2泊するんだから、明日来ようw
前回と全く同じで、ちょっと戻って「あべ食堂」に。人気店でいつも行列があるの
だが、さすがにもう14時近いし観光客もいないので、すぐに入れた^^
ここのは旨い!はるばる東京から来て到着したところだし、えらく急いで歩いたので
とってもビールが飲みたかったのだが、こういう人気店だけに置いてないwww
14時で昼の営業が終わるので、俺ひとりになりました。おばちゃんは「暖簾はしまい
ますが、ゆっくり食べて下さいね」とやさしいひと言。ううむ、どうやら福島県は
「東京から来た人、お断り」という排他的雰囲気はなさそうだ。
こういう店もよさそうだな。
さて旅館のチェックインタイムまで小一時間あるので、コーシーでも飲んで、できれば
一服でもしたいところなのだが、喫茶店はほとんどない。ひとつふたつあっても、
みんな閉まっている。なーにーよー。名古屋人が来たら怒るよ?
しかたないので、まだ少々早いが旅館に来てしまった。すごいでしょ。前に通ったとき、
こんなところに泊まってみたいと思っていたのです。純和風。
宿主のおばちゃんが、「あ~2泊する人ですね。もう部屋に入っていいですよ。
お風呂は3時から入れます♪」と入れてくれました。そもそも宿泊客がいないところに
連泊なので、入っただけでわかってくれたのでした^^
というわけで、もう夜の酒までのんびり本でも読む。3時には風呂にゆっくり入ったし。
これでいいのだ♪
旧林家、一番奥には洋館があります。明治時代の建物には、このように西洋風の離れを
作ることがよくありました。
洋館といっても、このように素晴らしい寄木細工が施されていたりします。
100年も経つと、天井の鮮やかな金唐革紙もこのようにすっかり黒ずんでしまいました。
よおく見て、そして明るい色の装飾を想像してみてください^^
日が当たってポカポカするので、案内の方としばらくお話。映画の『野麦峠』や
『女工哀史』などで当時の女工たちがひどい目にあっている姿が有名になっていますが、
そんな虐待が続いていたわけではないし、熟練した女工の賃金は、学校の校長先生よりも
高かったと語っていました。
たしかにこの間、富岡製糸場で見た資料によれば、5年任期の年収は毎年必ず上がる
ようになっていて、地元に帰れば家が一軒建つような収入だったし、ここの工場が
一日に12時間労働だったとしても、地方の貧農では夜明けから夜遅くまで、もっと
労働時間は長かったから、きちんとした設備の工場で働いて暮らせるのであれば、むしろ
少女たちは喜んでいたとか?
「岡谷には何もないんですよ。だから工場を誘致したんです。製糸工場がなくなったら、
いまは精密機械の工場で頑張っているんです。そうするしかないんですよ」と自嘲めいた
自慢のような?そういえば伊那の「きりん」で飲んだ常連さんたちも精密機械の話を
していたなあ。。。
洋館を見たあとは、渡り廊下を歩いて正門のほうに戻ります。
蔵の上のほうに、珍しく窓があるでしょう?繭は乾燥させなければならないので、
このように風通しをよくした蔵にしなければならないそうです。
台所の床にあるのは「何かわかりますか?」と聞かれました。 わかりますぅ~^^
板を開ければ、下は貯蔵庫。むかしは冷蔵庫なんてなかったし、地下室みたいになって
いる土の中は、夏はひんやり、冬は少し暖かい物置になるのです。田舎のおば~ちゃんち
にありましたからね。
というわけで、「広いので40分はかかります」と言われた見物、あっという間に
1時間以上が経ってしまいました。とても楽しく見物とお話をさせて頂き、感謝の
言葉で挨拶すると、逆に「喜んでもらえると嬉しいです」というお言葉を頂きました。
というわけで3館共通入館券を無事コンプリート。
駅前で最後の一服。
ム? 美しいが 生まれるまち 岡谷?
美しいけれど~、生まれるって何よ、子供? 岡谷~???
あー、「美しいが」の「が」は、「けれどもさ~」という意味じゃないのか。
「美しい何かが、生まれるところなんだよ、岡谷」ってことなの?
左上の説明を見てわかったよ。
変な日本語使うなってのw
甲府を通過するときに、富士山が見えました。またあっちにも行きたいな。
さて伊那から岡谷へ立ち寄って、旧林家住宅を見に行こう。
日本の産業の近代化を支えた製糸業ですが、世界中に輸出したそのシルクを生み出した
町のひとつがここ岡谷。富岡の工場は、シルクがナイロンに変わって衰退しても残して
あったので世界遺産となりましたが、ここ岡谷の工場は全部なくなってしまいました。
残っているのは林製糸家のお屋敷です。
案内をしてくれたのは、眉毛の立派な御老人。マイルドな口調で丁寧に説明をして
くれました。
この欄間。一枚の板から作った彫刻です。
鶴の足とかくちばしや羽根、完成に近づいてポキっといっちゃったらどうするの?!
そんな話をしたら、こっちの手に届くところにあるものは、「子供が部屋で遊んだりして
羊の角なんか折れちゃっているんですよ」と笑いながら話してくれました。ううう、
俺ってそんな子供だったからなあ。。。
こちらは枠から葉っぱがはみ出しているのがしゃれています。繁栄を暗示しているとか。
廊下に出て、「何かお気づきですか?」と質問をされるので、「ガラスが手作りなので
微妙に歪んでいますよね」と答えると正解!いまは手に入らないような代物なのです。
思えば日本中の古い建物を見てきたから、だいぶいろいろと詳しくなっていて、
「専門家ですか?」とまで言われてしまいました(^益^)b
仏間。覗き込むと仏壇の内部、天井に彫刻や凝った装飾があったり。唐破風の曲線が
繊細な造りですよね。そこは寄木になっていました。左右の箪笥が非対称になっている
のも素敵ですよねー。木材もヴァリエーションをつけて、なんとまあオサレなのー。
ご先祖様の霊を拝むところなのに、「すげー!」なんてジロジロ見ちゃって^^;
廊下を歩いて別棟に。
ここでの見ものは、この「金唐革紙」。これは西洋建築の壁紙を真似て、和紙に金箔、
銀箔、錫箔といった金属の箔を貼って、円筒形の版木に当てて叩いて凹凸の模様をつけ、
彩色を施したものです。ここ岡谷ではこの技術が研ぎ澄まされ、1873年のウィーン万国
博覧会に出品されてから有名になり、ヨーロッパにだいぶ輸出され、バッキンガム宮殿
の壁も飾ったとか。
その版木もほとんど残存せず、ボロボロになったものがここに残っていたとか。
奥の蔵では、その金唐革紙で飾られた部屋が残っています。蔵ですからあまり光や
すきま風が入らないので、なんとか残っているとか。しかし彩色はすっかり黒ずんで
しまっていますね。外国から商談にやってきた客をもてなすのに使った部屋だそうです。
2日目の夜も「きりん」からスタート。この日も18時頃に入ったらぎっしり満席。
それでも「入れ入れ」と詰めて入れてもらう。L字のカウンターに、きつきつ。
まもなく80近いマスターはひとりだけに忙しい。焼き鳥も「刺してらんないよ」と
オーダーを受け付けず。看板にあるローメンも、名物料理「山賊焼き」も注文できなく
なってしまっている。ちと残念だが、このご時世で忙しすぎるというのも悪くはないか。
この日は誰かが「おでん」を注文したら、最後の余りを「これサービスで食べて」と
俺にくれました。隣に2人注文した人(料金に入る人)がいるのに申し訳ありませんー。
というわけで、2日連続で何も注文しないでタダ食い^^;
あとから来た人は、たまに来るらしく、座るなり「ここはいい所だよ~。俺は最近できた
きれいなところは行きたくねえんだ。きれいなところはダメなんだよー!」と連発。
そこでマスターは「ここがきたねえっつ~のかよ」と苦笑い。「キタナイ」は誉め言葉
なんですよね♪ととりなす^^;
キタナイといえば、いつものへべれけジーサン、鼻がゆるんでいるせいか、水ッパナが
たれてきて、目の前にある台拭きをとって鼻を拭く。それでテーブル拭くんだからwww
その手で目の前にある殻付きピーナッツを手に取り、ご丁寧にそれを剥いて俺に「食べて
食べて」と勧めるのである。しかたなく食べると、いくつも剥いちゃうのである。ヤメテ―
ぎっしりくっついて座ってみんな酔っ払うと、これはもう完全にカオスである。そうなると
いつものことだが、それぞれが話したいことをがなり立て、誰も他人の言うことを全く
聞かずにしゃべり続ける。なんつーの、ノーガードの殴り合い?いや相手に当たってねーしw
しかし、誰かが「女子のプロスポーツって、強い奴はみんなブス!」と言ったら、次々に
2人3人と名前を出して、みんなして「そうだそうだ、すごいブスばっかりなんだよー!」
と大騒ぎ。こんときゃ突然、混乱状態がひとつの話題に収束し、奇跡の一体感が生まれたの
でした。俺の「でも池江リカコちゃんとかカワイイじゃないですか」って意見は暴風雨の
中で吹き飛ばされてしまうしw
「アドニス」もやってないし、少し彷徨って静かなバーを発見。こういうところは
ドアからオーラが出ているのだ。楽しい大混乱のあとは、ちょっと落ち着きたいから
なあ~^^ 駒ケ根蒸留所が近いので、好きなマルスウィスキーがありました。
「岩井」は飲んだことがあるけれど、「ワインカスク」は記憶がないので注文。
ウム、ワインを入れていた樽でのフィニッシュで、たしかにいい香りがするぞ。
2杯目はいつもスコッチのスモーキーなハイランドを頂くことが多いのだが、こんときゃ
ローランドのマイルドな「オーヘントッシャン」に。
ここのマスター、まだ30前後? 若いけれど落ち着いていて、しっかりバーを切り盛り
しています。それなりに地元の常連さんたちに支持されているようです。
3杯目は少し迷い、やはりチェリー・ヒーリングにしました。
「甘いのがお好きなんですか?」と、マスターはちょっと意外そう。
「ちょっと思い入れのある酒でね♪」